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そして翌日、大臣たちは招集に応じ、国王はワンダリアから贈られた見たこともない生地を手に、離宮で側妃に膝枕をさせていた。
「私は決意した。父王には引退していただき、私が国王となる。そして速やかに戦争を終結させ、疲弊した国内の立て直しに注力したい」
宰相を除く全員が立ち上がり賛同の意を示した。
「お待ちください! 戦争終結と言われましても、このまま何の戦利品も得られなければ、戦死した者たちへの補償もままならないのですよ! 国が始めた戦争の犠牲者とその遺族たちに何と言うおつもりですか? このままでは暴動が起きてしまいます!」
表面だけを捉えると、宰相の言うことは正しいともいえる。
「しかし! このまま無駄に戦争を続けることの方が遥かにリスキーだ。勝てなかったらどうなる? 戦勝国への賠償まで被ることになるのだぞ。それこそ遺族への補償など夢のまた夢ではないか!」
宰相の発言に、王太子に従うと意思表示をした財務大臣が声を荒げた。
「勝てばいいのだ。そうさ、勝つまで戦えばいい。勝てないまでもあちらが疲弊して音を上げるのを……」
「何を無責任なことをぬかすか!」
他の大臣たちも一斉に宰相を非難した。
「なあ、カード宰相。ここらが引き時だ。今なら互いに傷も浅くて済むし、何より和睦するという道が残されている。そうは思わんか?」
孤立無援の状態に、苦虫を嚙みつぶしたような顔で黙る宰相。
彼の後ろには騎士達が並び、万が一の事態に備えていた。
「わ……わかりました。同意……いたします」
「そうか、わかってくれたか」
宰相が王太子と目を合わせた。
「それで、いつ実行なさる予定でしょうか」
王太子がニヤッと笑った。
「今からだ。全員で国王陛下の元に向かう。抵抗するようであれば抗戦もやむなしだ。私と共に立ち上がれ!」
「オーッ!」
全員の顔を見回した後、王太子がカーチスに目配せをした。
頷いたカーチスがカード宰相に近づく。
「宰相閣下、我がワンダー王国は全面的に王太子殿下を支持致します。つきましては、今後の取り決めなどを話し合う場を設けておりますので、そちらへ移動しましょう」
「あ……いや、私も皆と一緒に行動せねば……」
王太子が間髪入れずに言い放った。
「こちらの人手は十分だ。君には為さねばならぬことがあるのだろう?」
その言葉で宰相はすべてが露見していることを悟った。
王太子が大臣たちを引き連れて、国王が過ごしている離宮へと向かう。
その後ろには近衛兵が続いていた。
「軍部はすでに動いている。今頃は離宮を取り囲んでいるはずだ。一気に終わらせるぞ!」
王太子の鼓舞に全員の意気が上がる。
「さあ、あなたはこちらへ。わが国で貴方の息子さんが待っていますよ」
「息子……そこまで調べていたか」
「大丈夫です。死んではいませんよ。ただ、本人は死にたいと思っているかもですけどね」
カード宰相はがっくりと肩を落とし、のろのろと立ち上がった。
二人が向かったのは宰相の執務室だ。
「お待ちしておりましたよ。西の国のスパイさん」
ソファーに座り優雅にお茶を飲んでいたのは、アレン・ラングレーその人だった。
ワンダリアから連れてきた精鋭たちが取り囲む中、カード宰相はすべてを諦めたようにぽつぽつと話し始める。
概ねアラバス達の予想通りだったが、唯一違ったのはラランジェのことだった。
「え? 西の国の王子がラランジェに懸想してる? マジか……」
「そもそもはそれが発端ですよ。私がまだ若い頃にこの国に送られてきたのは、ご想像の通りです。これは代々続いていたことで、今回は侯爵家の三男である私が選ばれたということですね。有力貴族家に婿養子として入り込み、この国の情報を流すのが主目的ですが、あわよくば機を見て内戦を誘導するのが役目でした」
「お前が前宰相と自分の妻を殺したのか?」
「私じゃありませんよ。妻は本当に病死でしたが、義父は殺されたのです。政治的なものではありません。愛人と同衾していたところへ、義母が乗り込んで刺したのですよ。義母は騎士の家系でしたからね、情け容赦なく二つ重ねで串刺しです。もちろんもみ消しました」
「なんとまあ……小説にすると売れそうな話じゃないか?」
「本当は目立つつもりはなかった。しかし、義父が死んでどうしようもなかったのです。私は妻を愛していました。仕事として誑し込んだようなものですが、あの両親から生まれたとは思えないほど純真で、可愛らしい女でしたよ」
「それなら子供も可愛かったんじゃないのかい? なぜ巻き込んだのだ?」
「娘を……娘を人質に取られたからです。それを知った次男が自ら行くと……本当は行かせたくなかった! こんなはずじゃなかったんだ!」
アレンとカーチスが顔を見合わせた。
「まああなたの事情は分かったが、それと西の国の王子がラランジェに懸想するのと、どうつながるのだ?」
「正式なルートで婚姻の打診が来ましたが、シラーズのバカ王は独断で断りました。まだ幼いラランジェを他国へ行かせるわけにはいかないといってね。西の国の王は、我が息子がけんもほろろに断られたっことを怒り、私にラランジェ誘拐を指示してきました」
「なんと! そこまでする?」
「私は王太子に進言し、ラランジェ王女を留学させることにしました。あの国王は変態です。きっとラランジェ王女を壊して殺してしまうでしょう。彼女を幼少期から知っている私としては、彼女を逃がしてやりたかったのです」
「まあ、普通はそう思うよね」
「なぜ急に留学するのかと問う彼女に、本当のことを言うわけにはいきません。ですからワンダリアの王子と……」
「ああ、それかぁ。お陰でエライことになったんだぜ? なんであれほど自信たっぷりにぐいぐい来るのかと思ったら、そういうことね……ホント迷惑」
「何があったのです?」
アレンとカーチスは、色々な経緯やレイラとの事件まで話して聞かせた。
当然だがマリアが幼児退行していることは伏せている。
「え……そんなことが……」
「でもなんでマリアを狙ったの?」
「何のことです?」
「え?」
「え?」
どうやらまだ分かっていないことがありそうだ。
「私は決意した。父王には引退していただき、私が国王となる。そして速やかに戦争を終結させ、疲弊した国内の立て直しに注力したい」
宰相を除く全員が立ち上がり賛同の意を示した。
「お待ちください! 戦争終結と言われましても、このまま何の戦利品も得られなければ、戦死した者たちへの補償もままならないのですよ! 国が始めた戦争の犠牲者とその遺族たちに何と言うおつもりですか? このままでは暴動が起きてしまいます!」
表面だけを捉えると、宰相の言うことは正しいともいえる。
「しかし! このまま無駄に戦争を続けることの方が遥かにリスキーだ。勝てなかったらどうなる? 戦勝国への賠償まで被ることになるのだぞ。それこそ遺族への補償など夢のまた夢ではないか!」
宰相の発言に、王太子に従うと意思表示をした財務大臣が声を荒げた。
「勝てばいいのだ。そうさ、勝つまで戦えばいい。勝てないまでもあちらが疲弊して音を上げるのを……」
「何を無責任なことをぬかすか!」
他の大臣たちも一斉に宰相を非難した。
「なあ、カード宰相。ここらが引き時だ。今なら互いに傷も浅くて済むし、何より和睦するという道が残されている。そうは思わんか?」
孤立無援の状態に、苦虫を嚙みつぶしたような顔で黙る宰相。
彼の後ろには騎士達が並び、万が一の事態に備えていた。
「わ……わかりました。同意……いたします」
「そうか、わかってくれたか」
宰相が王太子と目を合わせた。
「それで、いつ実行なさる予定でしょうか」
王太子がニヤッと笑った。
「今からだ。全員で国王陛下の元に向かう。抵抗するようであれば抗戦もやむなしだ。私と共に立ち上がれ!」
「オーッ!」
全員の顔を見回した後、王太子がカーチスに目配せをした。
頷いたカーチスがカード宰相に近づく。
「宰相閣下、我がワンダー王国は全面的に王太子殿下を支持致します。つきましては、今後の取り決めなどを話し合う場を設けておりますので、そちらへ移動しましょう」
「あ……いや、私も皆と一緒に行動せねば……」
王太子が間髪入れずに言い放った。
「こちらの人手は十分だ。君には為さねばならぬことがあるのだろう?」
その言葉で宰相はすべてが露見していることを悟った。
王太子が大臣たちを引き連れて、国王が過ごしている離宮へと向かう。
その後ろには近衛兵が続いていた。
「軍部はすでに動いている。今頃は離宮を取り囲んでいるはずだ。一気に終わらせるぞ!」
王太子の鼓舞に全員の意気が上がる。
「さあ、あなたはこちらへ。わが国で貴方の息子さんが待っていますよ」
「息子……そこまで調べていたか」
「大丈夫です。死んではいませんよ。ただ、本人は死にたいと思っているかもですけどね」
カード宰相はがっくりと肩を落とし、のろのろと立ち上がった。
二人が向かったのは宰相の執務室だ。
「お待ちしておりましたよ。西の国のスパイさん」
ソファーに座り優雅にお茶を飲んでいたのは、アレン・ラングレーその人だった。
ワンダリアから連れてきた精鋭たちが取り囲む中、カード宰相はすべてを諦めたようにぽつぽつと話し始める。
概ねアラバス達の予想通りだったが、唯一違ったのはラランジェのことだった。
「え? 西の国の王子がラランジェに懸想してる? マジか……」
「そもそもはそれが発端ですよ。私がまだ若い頃にこの国に送られてきたのは、ご想像の通りです。これは代々続いていたことで、今回は侯爵家の三男である私が選ばれたということですね。有力貴族家に婿養子として入り込み、この国の情報を流すのが主目的ですが、あわよくば機を見て内戦を誘導するのが役目でした」
「お前が前宰相と自分の妻を殺したのか?」
「私じゃありませんよ。妻は本当に病死でしたが、義父は殺されたのです。政治的なものではありません。愛人と同衾していたところへ、義母が乗り込んで刺したのですよ。義母は騎士の家系でしたからね、情け容赦なく二つ重ねで串刺しです。もちろんもみ消しました」
「なんとまあ……小説にすると売れそうな話じゃないか?」
「本当は目立つつもりはなかった。しかし、義父が死んでどうしようもなかったのです。私は妻を愛していました。仕事として誑し込んだようなものですが、あの両親から生まれたとは思えないほど純真で、可愛らしい女でしたよ」
「それなら子供も可愛かったんじゃないのかい? なぜ巻き込んだのだ?」
「娘を……娘を人質に取られたからです。それを知った次男が自ら行くと……本当は行かせたくなかった! こんなはずじゃなかったんだ!」
アレンとカーチスが顔を見合わせた。
「まああなたの事情は分かったが、それと西の国の王子がラランジェに懸想するのと、どうつながるのだ?」
「正式なルートで婚姻の打診が来ましたが、シラーズのバカ王は独断で断りました。まだ幼いラランジェを他国へ行かせるわけにはいかないといってね。西の国の王は、我が息子がけんもほろろに断られたっことを怒り、私にラランジェ誘拐を指示してきました」
「なんと! そこまでする?」
「私は王太子に進言し、ラランジェ王女を留学させることにしました。あの国王は変態です。きっとラランジェ王女を壊して殺してしまうでしょう。彼女を幼少期から知っている私としては、彼女を逃がしてやりたかったのです」
「まあ、普通はそう思うよね」
「なぜ急に留学するのかと問う彼女に、本当のことを言うわけにはいきません。ですからワンダリアの王子と……」
「ああ、それかぁ。お陰でエライことになったんだぜ? なんであれほど自信たっぷりにぐいぐい来るのかと思ったら、そういうことね……ホント迷惑」
「何があったのです?」
アレンとカーチスは、色々な経緯やレイラとの事件まで話して聞かせた。
当然だがマリアが幼児退行していることは伏せている。
「え……そんなことが……」
「でもなんでマリアを狙ったの?」
「何のことです?」
「え?」
「え?」
どうやらまだ分かっていないことがありそうだ。
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