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 集められたのは国の大事を話し合う時に使われる会議室だ。
 この部屋の壁は三重構造で、話す内容が絶対に漏れない作りになっている。
 サリーは初めて入ったこの部屋の雰囲気に飲まれそうになった。
 部屋に入るとイースが駆け寄ってきて体を支えてくれた。
 出席者全員が起立でサリーを迎える。
 最初に口を開いたのは国王だった。

「サリー、具合はどうだ? 見るだけでも痛々しいが」

 サリーはゆっくりとお辞儀をした。

「ご心配をお掛けして申し訳ございません。体の方はもう大丈夫です。腫れが引かないのと色が変わっていることで、痛そうに見えるとは思いますが、見た目ほどではありません」

「そうか、それなら一安心だが」

 王妃が続けた。

「サリー、身を挺してシューンを守ってくれたこと、心から感謝します。本当にありがとう」

「恐れ入ります」

 再び屈もうとしたサリーの肩をイースがキープした。

「無理をするな。さあ、座るんだ」

 サリーはイースの横に座らされた。
 その横には当然のようにシューンが座る。
 出席者が口々にサリーを労ってくれた。
 眼球を一つ失ったサムでさえ、自分のことよりサリーの怪我を心配している。

「それでは始めよう。シューン、ウサキチを中央に」

「はい、父上」

 シューンは黄色いうさ耳幼稚園帽子を脱いで、会議机に載せた。
 マーカスが手を伸ばして中央に進める。

「揃っているようだな」

 ウサキチの声が響く。
 続いて王が口を開いた。

「襲撃事件のことか?」

「王宮の中にも入り込んでいたとはな」

「ここ数年で採用した者では無く、シューンが生まれる前から勤めていた者もいた。最後に入信した者は調べようがない。盲点を突かれたよ」

 イースが発言する。

「生かした者たちへの尋問結果をサムから報告させます」

 全員がサムの顔を見た。

「結論から申しますと、アジトはわかりませんでした。男と女を別々に尋問して、言い分に食い違いが無いかも調べたのですが、奴らが吐いた場所はもぬけの殻でした。引き続き捜索はしておりますが、見た目での判断が難しく苦戦しております」

 暫し全員が口を噤んだ。
 ふとトーマスが声を出す。

「信者たちはどのようにして連絡を取り合っているのだろう。これほどの時間と労力をかけて先鋭たちが動いても掴めないということが不思議でならない」

 ウサキチが話し始めた。

「恐らくだが、何らかの通信手段を持っているのだろう。例えば……前に私の布を皆に渡しただろう? あれを持っていれば脳内会話ができるやつだ。それと同等の何か……」

 サムがふと顔を上げた。

「奴らの共通点は信者である証の痣だけですね。持ち物に共通点はありませんでした」

「うん、それかもしれないな。以前にも言ったが、その刻印を授かると同時に魂を半分明渡すんだ。言い換えるとその信者の魂の半分は邪教側が持っているということだ」

「なるほど、魂で会話するということか……」

 ロバートの声に、ふと顔をあげたサリー。

「ねえ、ロバート。ライラに協力して貰えないかしら」

「ライラに?」

「ええ、彼女の両親は信者だったでしょう? 彼女から接触してもらって情報を引き出せないかと思って」

「サリー……」

「酷いことを言っているのはわかってる。いくら怨んでくれても良いわ。絶交すると言うなら受け入れる……でも所在のわかっている信者はライラの親しかいないのよ……お願い……助けてちょうだい」

 ロバートはグッと拳を握った。

「ライラは今……妊娠しているんだ。巻き込みたくない」

「……ロバート」

 サリーは頭を抱えてテーブルに両肘をついた。
 トーマスが話し始めた。

「ロバート、君の意見は正しいよ。ライラには危ない橋を渡らせたくないよな。うん、わかる。でもサリーの気持ちも考えてやってくれないか?」

 ロバートが唇を嚙みしめた。

「理解はできます。しかしライラは、親に裏切られてものすごく傷ついているのです。これ以上彼女に負荷をかけるのは……許してやってください」

「そうか……」

 サムが顔を上げた。

「ライラを巻き込まず、両親を監視するだけなら良いだろうか」

「それはもちろんです」

 サムが深く頷いた。
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