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本編

23話

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 そう、これは実験だ。もくもくと湧いて心を占めた欲望にそんな言い訳をしつつ、ユーグリッドは優しく微笑む。

「レオンはおかしくなってないよ。発情期じゃない時にするから驚いたんだね、ゆっくり慣れていこう」

 にこりと安心させるように微笑めばレオンも落ち着いたようにほわりと微笑み真っ赤な顔で小さく頷く。

 可愛い。
 本当に可愛い。

 発情期の妖艶な姿とはまた全く違うのに、ユーグリッドの欲望をかきたてる。早急にことを進めたくなるがぐっと堪えた。

 ユーグリッドはベッドにレオンを静かに押し倒せば、耳元で低く囁く。

「愛してるよレオン。……オレを見て」
「……――~~っ!!!!!!! な、な、なんで???!」
 
 ユーグリッドの囁きにレオンの身体は反応した。囁きだけでレオンは吐精したのだ。

「お、俺??! やっぱりおかしくなっちゃった……??」
「そんなことないさ。レオンは物覚えがいいだけだよ。オレと気持ちよくなっていた時のことを思い出しただけだ」
「……ユーグリッドさまと、気持ちよく……?」
「ああ、だから他にもどんなことで反応してしまうのか確認しておこうか。しばらくは一緒に寝た方がいいかもしれない。研究室に泊まらずに毎日帰っておいで」
「は、はい」

 まさか今までのすれ違い夫婦生活でレオンがこんな状態になるとは思っていなかったが、これはこれで物凄く可愛いなとユーグリッドは心の中でほくそ笑む。
 毎日帰ってきてナニをするのかレオンは気付いていないのだろう。
 素直に応じる姿に少し不安を感じるがユーグリッドはもうレオンに遠慮をするつもりは無かった。

 この後毎日抱きつぶす、まではいかないがかなり濃密に夜を過ごした。発情期の大胆なレオンとは全く異なり、一挙一動に驚き反応する姿は愛らしくてユーグリッドを夢中にさせた。
 もともとレオンの愛らしさは見た目ではない。思考の仕方や仕草など、その動きがとても可愛らしく庇護欲や征服欲を掻き立てるのだ。

 託児所や学校でレオンに話しかけていた者達はすべてレオンの気を引こうとしていたのをユーグリッドは知っている。「可愛くない」とレオンを傷つけてから「でも俺は気にしないよ」と、自分の好感度を上げるのは気を引くための常套句だったのだ。
 βであるナタリアだってレオンに気があった。だから必要以上に「暗い髪」を好きになる様に言っていたのだ。他にも数え上げればきりがない。レオンの両親の溺愛だってそうだ。彼らほど優秀なら平民であろうと使用人くらい雇えたのだ。それをせずに自分たちの目の届くところにレオンをおいた。

 今までの嫉妬心を上手く消化できていないユーグリッドはレオンをそれはもう、判りやすく溺愛した。研究所でも時間があればレオンの顔を見に来るほどだ。

 レオンはそんなユーグリッドの過保護が嬉しくて、それに応えたいと必死だった。しかし毎晩の営みは研究で引きこもっていて、運動と言えば通勤で歩くだけのレオンには中々重労働となった。
 そのためレオンは気怠そうに仕事をする日が増え、そんな時は夜に泣かされていることが多く目も腫れていることが多かった。

「レオン泣かせたらぶっ殺すって、ぼく言ったよね?」

 セルトレインがそんな物騒な言葉と共に、ユーグリッドの屋敷にコデルリヒトと一緒に乗り込むまで、レオンとユーグリッドの濃厚すぎる遅い蜜月は続いたのだった。
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