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たぶん「好き」だと気付いてる

9.「前も言ったけど、おれ、あんたと付き合ってると思ってるんだけど?」

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「荷物運んでくれてありがとう」
「ん、別に。おれの分の土産だし」

 まあ確かにそうだけど、うちにあるって事は俺が半分は飲むんだけどね。

「上がっていって。夕飯なんでもよければうちにあるもの適当に食べるか、どこか食べにいく?」

 各務くんが運んでくれた荷物も受け取れば、靴を脱いで家に上がり持っていた荷物を部屋に置く。

「……なぁ」

 各務くんも上がった気配を感じたところで、後ろから声かけられた。

「なに?」

 俺がキッチン兼玄関から続く廊下に戻ったところで、顔の横に手が伸びるのが見えた。
 そのままその手は壁に伸ばされる。

 うん、先日もここで同じ体勢になったな。
 壁ドンである。

「えっと……どうかした?」

 今日は俺、失言してないよね?
 俺の顔を固定するように壁に両手を着き、正面に立つ各務くんに問いかける。

 しかし答えはなく、肘まで壁につくようにして各務くんが俺に覆いかぶさるように近づくと、顔が近づいてきた。
 唇と唇が触れた。

 これは、もしかして、キスされて……る?!?!

 状況の急展開に着いていけずに硬直していると、真面目な顔が目の前にあった。

「あんたさ、なんで付き合ってる奴と温泉旅行して飯食って温泉入るだけとか思うの? しかも同じ部屋とかなくねぇ?」
「え……あ、え……その、え? そりゃ確かに、各務くんが女の子だったら同じ部屋にはしなかったよ。でも男同士だし」

 心臓がドキドキして声が震えてしまう。
 別々の部屋っていうのはなんかつまらないっていうか、なんというか。本当は温泉も一緒に入りたかったなんて……とても言えない。

「前も言ったけど、おれ、あんたと付き合ってると思ってるんだけど?」
「う、うん……俺も、そう、思ってるけ、ど」

 吐息のかかる程の至近距離で言われて、視線を彷徨わせつつ俺も答える。

「えっと、もしかして夜とか……なにか期待させ、ちゃった……かな?」
「……ァア??」

 腹の底から出されたような物凄く低い声と共に、殺気をはらんだような目で睨まれる。
 これで各務くんの顔が真っ赤でなかったら俺は震えあがっていた。
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