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第四章
120話
しおりを挟むクリスティア姫の屋敷に戻った俺を待っていたのは、質問攻めとお祝いの言葉だった。
ちなみに、オルトゥス王もサテンドラの姿で一緒に戻った。
「本当に本当に、ほんとうに! 自分の意志でオルトゥス王と関係を持ったんだな?? 無理やりとか何か弱みを握られてとか、そういうのじゃないんだな?」
まずはネストに問いただされたが、俺はサテンドラと顔を見合わせ首を傾げる。
俺たちの疑問に答えてくれたのはクリスティア姫だった。
「ティス様から王とカデル様が一夜を共にしたと伺いましたの。あの方、信用できませんのでセルドレット様にも確認しましたら、事実であるとのことでしたので皆様にお話しいたしましたわ」
にこりと可愛らしく微笑む姫は今日も愛らしく、左右の色の違う瞳の輝きは綺麗だった。
しかも姫は王のもとに泊まったという事だけでなく、ネストの妹たちが好きそうな恋物語まで付け足して皆に報告していた。
――… オルトゥス王は王城で会った幼い俺を見初めてその成長を見守っていた。強引にことを進めてもいいがエスカータの花嫁のこともある。しかしクリスティア姫にも他に想う人がいた。なので王と姫はお互いの為に一策を講じることにした。
エスカータの姫の護衛に俺を任命し、俺が王をどのように思っているか姫が探って、脈があるなら王から直々に俺に求愛をする、といったものだった。
「カデルが王城に着いた時あんなにやつれていたのは、馬車の中でオルトゥス王への報われない思いについてクリスティア姫に相談していたからだなんて……姫からあまりに苦しそうで、王の気持ちを伝えてしまいそうになって大変だったと……。私はてっきりカデルは色恋などまだ知らないとばかり思っていました」
「ほんとっすよね。クリスティア姫とオルトゥス王の揃ってる姿見て体調崩すとか、そんな繊細な心もってるとは思ってなかったっすよ」
「ええっと……」
戸惑う俺にクリスティア姫はキラキラの笑顔を向けてくる。今となってはこの笑顔が可愛いだけでないのだと知ってしまった。
……うん、だいぶ色々脚色されてるけどクリスティア姫の好意にのっかっておこう。うん。それで丸く収まる気がする。
「で、どうなんだ? 無理やりじゃないんだな??」
ネストがすごい剣幕で聞いてくるけど、無理やりもなにも何もないわけだが……いや、なくはないか。
俺はうっかりいっぱいキスした時のことを思い出して、顔に熱が集まる。
うう、思い出すと物凄くあれ、恥ずかしい。
「ネスト、顔見ればわかるじゃないっすか、野暮な質問っすよ?」
「ぐっ……」
「えっと、なんかごめんな?」
「いやいい、カデルが自分で選んだ幸せなら、いい」
元気のなくなったネストに声をかけようとしたらサテンドラに袖を引かれた。サテンドラの紫の瞳が俺をじっと見つめる。
う、なんだろう。なんだかプレッシャーを感じるけど。
「あはは、サテンドラも娘を嫁に出す親の気持ちなんじゃないすか? ま、そういうしんみりしたのはおいておいて、今日はカデルの初恋成就祝いをするっすよ!」
「まあ、それはいいですわね」
ラッツェの提案にクリスティア姫が楽しそうに同意する。
「は?? なんで、初恋って知ってんだよ…」
いやその通りではあるんだけど。
思わずこぼれ出た俺のつぶやきに、サテンドラが吹き出し肩を震わせ笑う。
俺は真っ赤になりながら爆笑しているサテンドラを睨みつけた。……ほんと、お前笑い過ぎだからな!
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