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第二章

48話

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 夕飯は豆のサラダに芋のポタージュ、貝を香草で焼いたものと焼き立てのパンだった。他にも厨房にあった鶏肉を野菜と串に刺して焼いたものなども食卓に並んでおり、用意されていた食材で簡単に作ったと言うメリー殿の手際の良さが伺えた。

 食器も良いものなのだろう、メリー殿はその扱いもきちんと判っているようだし、侍女としての技術と知識は相当なものだと思う。
 サヴィト殿といい、メリー殿といい、優秀な人材な事は間違いない。

 アルトレスト伯爵は俺たちのように死んだ命を食べても栄養にならないとのことで、食事になったタイミングで自室へ去っていった。その時には十分すぎるほどクリスティア姫とも仲良くなっており、それはそれでなんだか俺は複雑な気分になった。
 だがそんな気分もメリー殿の美味しい食事と、視界から脅威が消えたことで晴れていく。自分のことだけど本当に単純な思考回路をしていると思う。

 食後の片付けは準備を手伝わなかったサヴィト殿とラッツェがメリー殿と行い、他の者は食堂からサロンに移動した
 俺はサテンドラに「話がある」と言われたので、ネストにクリスティア姫に部屋割りを説明しておくよう頼んだ。

「話ってなんだ? 明日のこととか?」

 俺たちは姫たちから少し離れた場所に座る。
 俺の疑問にサテンドラは左手を差し出してきた。おまじないの時と同じ動作だが差し出す手が違うし今おまじないをしてもらう理由がない。

 つまり内密の話の合図だ。

 黒板に書いての筆談は誰かに見られる可能性もがある。だから人に聞かれたくない話は俺の手のひらに書くというのが昔からの暗黙のルールなのだ。
 手に手を乗せれば、俺の手の平に「メリーとネストに気を付けて」と書きサテンドラは手を放した。

「? どういう事だ?」

 俺が聞くとサテンドラは今度は黒板に「気を付けてあげてください。他はあのアホ伯爵含めて問題ないはずです」と書いて、俺が読んだのを確認すればすぐに黒板を消した。
 それはアホと書いた事を知られない為なのか、我が王への害意のある者が居るという事を知られない為なのか。

 そう、オルトゥス王への害意のある者の話なのだろうか、これは。

 俺は挙がった名前にその判断が出来ず、首をかしげる。いや、誰の名前が挙がったら納得できるのかと言われれば誰でも出来ないと思うんだけど。

「もう少し詳しく話して貰えないと、俺もどうしたらいいかわからない。なぜ、そんなことをサテンドラが判断できるのかとか」

 俺はじっとサテンドラを見つめる。俺の視線を受けてサテンドラは紫の瞳をそらして考えるように少し伏せた。
 サテンドラは父さんとこの屋敷を何度も使っている。王城へ行くときに同行しているからだ。だからアルトレスト伯爵と顔見知りだったし、色々な事を知っているんだろう。

 二人を警戒するように言うのも、サテンドラなりに根拠があるはずだ。
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