魔王の花嫁の護衛の俺が何故か花嫁代理になった経緯について

和泉臨音

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第二章

33話

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 部屋は最上階にクリスティア姫とメリー殿の部屋、俺とネストの部屋。その下層に3室用意したとのことだった。
 ちなみに部屋分けは2名定員だというので、ミードミーが女性なので1室、他二人で1室、残りの一人で1室という計算だったんだが、サテンドラが一人部屋がいいと言ったことと、ラッツェとミードミーがサヴィト殿と一緒は嫌だと主張したので、ラッツェたち双子で1室、他の二人がバラバラの部屋を使うことになった。

 一番豪華なのはクリスティア姫たちの部屋だが、俺とネストの部屋もかなりのもので、寝室の他に10人くらいはくつろげそうな応接室もある。

「……ウェスペルの宿ってこんなすごいんだな。ヘルデにこんなとこあったっけ?」
「ないな、まー偉いヒトはうちの屋敷に泊まるから、ふつーの奴が泊まる宿しかないんだろ」

 夕飯時まで自由行動にしたので、俺はネストと共に部屋に行き荷物を置いてベッドに飛び乗る。
 ふかふかスプリングを楽しんでいたらネストに「子どもじゃないんだからやめろ」と白い目を向けられてしまった。このふかふかの誘惑にネストは勝てるのか……。

 仕方がないので俺はベッドから降りると、他の場所を確認する事にした。いや、これはあれだ。探検してるとかじゃなくて何かあった時の為に確認をしてるんだ。
 自分に言い聞かせて部屋をウロウロしていたら、これまたネストに「尻尾が揺れてる。遊びじゃないんだぞ」とたしなめられた。うう、今日のネストちょっと厳しくないか?

 そうこうしていたらメリー殿とクリスティア姫が俺たちの部屋にやってきた。メリー殿が買い物をしたいので街に出たいのだと言う。

「そんなに大量に買うつもりはないのですが、明日の夕飯のために買い物をしたくて。新鮮なものの方が美味しいですし」
「確かに……わかりました。悪いけど買い物に行ってる間のクリスティア姫の護衛をネストに頼んでもいいか?」

 メリー殿の話を聞き、とりあえず近くの市場へ行けば今日捕れたものが並んでいるかな、と行先をそれとなく思案する。

「頼まれてもいいけど、お前、街を探索したいだけだろ」
「まあ、そうですの。カデル様ずるいですわ」
「いや、そんなことはないけど……」
「また尻尾が盛大にゆれてっぞ」
「ぐっ!」

 俺は自分の素直すぎる尻尾を握る。
 うん、お前はもう少し大人しくできないか? いや大人しくさせるのは俺の意志だけど! 俺の意志が弱いだけだけど!

「ヘルデと違ってここの治安まあまあ悪いって噂だから姫様はおれと留守番な。アーニャちゃん、カデルのお目付け役にミードミー連れてってくれ」
「お目付け役って、お前な……」
「あー確かミードミー達、ヘルデの前はウェスペル住んでたって言ってただろ。少しは店とか知ってんじゃないか?」

 そういえばラッツェからそんな事を聞いた事があるような。そもそも二人ともヘルデには10年以上住んでるから、居たとしてもだいぶ小さい頃だろうと思うんだけど。

「承知いたしました。我儘を聞いていただきありがとうございます。あの、ネスト様、私が居ない間、クリスティア姫のお傍にジークロード様が同席してもよろしいでしょうか?」
「そりゃもちろん、おれと姫様二人ってのはやばいだろ」
「じゃ、下の階にいってサヴィト殿たちに声をかけてくる。あ、もしラッツェも護衛したいって言ったら来てもいいよな?」

 一応、サヴィト殿は絶対に来て貰うとして、ラッツェも来てもいいかネストに聞く。サテンドラは父さんの用事で街に着いてから出かけているからラッツェだけ手持無沙汰になるのだ。
 俺の問いかけに答えたのはネストじゃなくてクリスティア姫だった。

「もちろんですわ。わたくしラッツェ様とももっとお話ししてみたいです。よろしいですわよねネスト様」
「……と姫様が言ってるから、ラッツェが来たいって言ったら来ていいぞ」

 サヴィト殿とラッツェが揃った時の険悪な雰囲気を想像したのかネストが微妙な表情を浮かべたが、クリスティア姫の笑顔の前には成す術もなし、と言ったところか。ネストはとことん面倒見がいいから問題ないだろう。

 そしてメリー殿の要望を叶えるべく、俺はミードミーと共にウェスペルの街に出かけることになった。
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