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本編
(36)夢
しおりを挟むエールックが言っていた罠のことをみんなに伝えられたのは、レーヴンに抱えられ家に戻ってからだった。
本当はもっと早く伝えるべきだったが、俺は帰り道ずっと泣いていて頭が回っていなかった。
罠が発動する前に伝えられて良かったと思ったが、実は既に罠の一つは発動されていた。そのせいでレーヴン達は俺がエールックと出掛けたことに気付けなかったのだそうだ。
罠についてはホルフが中心となり、ルハルグ様のお力も借りて迅速に確認することになった。
俺も探すのを手伝うと言ったが「そんな事よりも怪我の治療をしてくれ」とレーヴンに強く言われてしまった。
確かにこの時もまだ上手く歩くこともできなかったので、邪魔にならないよう俺はみんなの好意に甘えることにした。
なので俺はみんなが罠を探している間、グリムラフに身体を綺麗にしてもらっていた。
湯浴み場がないので寝室にお湯を運び、濡れた布で拭いてもらう。
これも全部グリムラフが準備してくれた。擦り傷には薬も塗ってくれたし、自分では見られない箇所も確認して怪我の有無を教えてくれた。
密輸団の時もそうだったが、されたことを口に出さないで済むのはとてもありがたいと思った。
それから罠の回収も終わり、安全が確認されたのは明け方で、俺はロアとホルフと同じ部屋で寝ることになった。
グリムラフは笑って「また一人で抜けだされても困るもんねー」と言ったが、「人がいない方がいいのでは?」とレーヴンは気を使ってくれた。
俺はどちらかといえば一人で寝る方が怖かったので、それを素直に伝えて、ホルフ達と同室にしてもらった。
その夜、無事に眠ることは出来たが、逃げたくても身体が動かないという夢を見た。
怖くて怖くて、レーヴンに助けを求めた。そうしたら指を絡めて手を握って「ここに居る」と優しい声が聞こえて、唇に柔らかくて暖かい感触が触れた。
レーヴンが居てくれるのが嬉しくて、俺も手を握り返す。助けてもらえた、とその温かさに俺は安心したところで目が覚めた。
目が覚めればロアが隣のベッドで絵本を読んでいた。
誰か俺が寝てる間に来たか聞いたが、ロアは首を横に振っただけだった。
それならばさっきのは間違いなく夢なのだろう。
夢の中までも助けてもらってすまない、と俺はこの場に居ないレーヴンに謝罪した。
この日、父上の代わりにセダー兄上がこちらに赴き、状況を確認する事になったとレーヴンが苦笑しつつ教えてくれた。
レーヴンがルハルグ様から竜の加護を受けたことは、王である父上にルハルグ様から報告がされたのだそうだ。
父上は自分以外の加護者がどれだけいるのか知っておく必要があるのだと、ルハルグ様は仰ったらしい。
そして、父上とルハルグ様は距離が離れていても会話が出来るのだとも。だからレーヴンのことも、エールックのこともルハルグ様は父上に話したとのことだった。
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