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本編
(20)主従
しおりを挟む翌日、皆に今後の進路の変更と、俺が眠れない状態であることを伝えた。
宿屋の一階の食堂に俺とエールック、冒険者三人はあつまり、なぜかホルフの隣に妖精族の子が大人しく座っている。
「できればレーヴンが一緒に寝てくれると助かる」
「!!! なぜそいつなのですか!」
俺の目の前に座るエールックが立ち上がり声を荒げる。その顔は怒りで真っ赤だ。
エールックはこの前からどうも感情の起伏が大きい気がする。俺が心配をさせてしまっているからだろうか。俺は感情を乗せないように努めて冷ややかに答える。
「実績があるからだ。レーヴンには獣人狩りの時も救出してもらったし、俺も無自覚だが信頼しているんだろう。とにかくよく眠れる」
「王子様の無自覚ひどいもんねぇ。まー、いいよ。二人が一緒に休めるように見張り回せばいいだけだし」
「そうですね」
レーヴンはただ苦笑していただけだったが、グリムラフもホルフも異論はないようだ。
エールックはその様子を見れば、ぐっと言葉を飲み込み、俺を睨むように見下ろすとそのまま食堂を出て行った。
「あれはまた面倒だね、昨日も扉の外から騒いで王子様起こしそうだったから、部屋に行かないようにするの大変だったんだよね」
「そうなのか?」
エールックの出て行った扉を見ていたが、グリムラフの言葉に彼を見る。
「んー王子様のこと、自分が把握できてないの嫌なんじゃない? 判んないけどさー。仕方ないからオレが見てくるよ」
盛大なため息を着きながらグリムラフが億劫そうに立ち上がるのを、俺は手で制した。
「俺が話してくる。ここのところ余裕がなかったから、エールックとあまり話をしていないし」
それに、エールックをこのまま連れて行くとして、竜の加護を受けられず王子でないことが判っても、俺に従ってもらえるのか確認しなくてはならない。
もしそれが無理そうなら、どうにかして彼を置いていくしかない。その方法も考えないといけないだろう。
そのためにもエールックがどういう思いで俺に着いてきているのか、きちんと確認する必要があった。
「ヴェル王子、村からは出ないように気を付けてくれ。あと何かあっても困るから、人がいないような物陰にもいかないでくれ。エールックが一緒でもだ」
扉に向かおうとした俺にレーヴンが心配げに声をかけて来る。いくら安全と言えどもここは魔族の国だ、村の中でも人通りのないところは危険なのだろう。
「わかった。そんなに心配しなくても勝手な事はしない」
俺は思わず苦笑してそう返せば、エールックを追った。
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