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番外編(レオ視点)

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 この国には世界を救う【聖女】が降臨する。

 その聖女候補に、男の俺が選ばれるなど想像できるわけがない。
 だけど、一人だけ想像した……いや、正確にはそうなる未来を視た奴がいた。

 王族に多い銀髪にしては淡い髪色に雪のように色白の肌、赤い瞳は咲き誇る椿のように瑞々しくて、子どもらしいぷっくりした頬はほんのり赤い。

 ―― 黙っていれば作り物めいた絶世の美少年。シャルロ第三王子。

 涼やかな見た目に反して、にひゃりと笑った顔は義父辺境伯から聞いていた「神聖で尊いお方」「未来を予言する聖なる存在」にはとても見えなかった。

「レオ、レオだよね? うひゃあ、小さいなぁ、あっ、おれはシャルロだよ、よろしくね!!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねて自己紹介する姿がウサギみたいで異様に可愛かった。可愛すぎて他にも何人か挨拶したのにシャルロのことしか記憶に残っていない。
 今思えば一国の王子の挨拶としてはいかがなものかと思うが、当時貴族になったばかりの俺に合せてくれたのだろう。

 それから13年。俺はシャルロと出会った時の衝撃を忘れることが出来ない。
 一目惚れだった。
 幼い俺はシャルロに気に入られようと努力し、猛アピールをして隣の席を常に勝ち取ってきた。

「なぁレオ、また痩せてない? くまも凄いよ?」

 眉を寄せ、心配顔をするシャルロも絵画のように美しい。

 大人になったシャルロはますます麗しくなり、見た目だけで形容するならば格好いいとか、美人とかが適切だろう。着やせするが王宮勤めの騎士として鍛えている身体はなかなかの肉体美を誇っている。

 現れた邪神はあっさりエミリアたちに倒され、学園を卒業後、俺とシャルロは障害なく結婚をした。
 甘い新婚生活は夢のようで、手を伸ばせば抱き寄せられる位置にシャルロがいることに安堵する。

「昨日寝てないからな……やっと研究が完成したんだ」
「え!そうなの??おめでとう!」

 俺の言葉にシャルロが両手をあげて大喜びする。
 すましていれば涼やかな美人なのに、動きがいちいち小動物みたいで可愛い。

「明日から休みだから遠乗りに出ようかと思ったけど、それならゆっくり休んだ方がいいかもな」

 シャルロの綺麗な指が俺の前髪をさらさらと撫でる。
 視線があえば幼子にするように手を伸ばして、にこにこ笑顔で俺の頭を撫でた。

 いつものようにソファーに並び寛いでいるだけなのにシャルロからは甘いいい匂いがして、この瞬間にも押し倒してしまいそうな欲求を俺は何とか押しとどめる。

 ―― あの日、エミリアに花の騎士の体質について聞いた後、シャルロにも伝えるべきだろうとエドウィンは言った。

 だが、俺は反対した。

 また以前のように逃げられるのが怖かった。

 それに自分のせいで誰かが危険にあってるなんて知れば、シャルロは責任を感じるだろう。
 これ以上、俺のせいでシャルロを悲しませたくなかった。

 俺の我儘ではあったが最終的にエドウィンも納得し、シャルロには秘密のまま対策を進めた。 

 といっても既に八方塞がりな俺達は多少躊躇はしたものの、解決策を探すためジャックの力を借りることにした。
 ジャックは俺達の話を聞くと好奇心が刺激されたのか目を輝かせて「ボクの利害も一致するからいいよ~」と快く協力をしてくれた。

 ―― そしてやっと昨晩、ジャックと共に組み上げた魔術式が完成したのだ。

 色々な問題がからむ魔法だから国にも内容を伝え国王からの言葉も直々にもらい、国家事業として進めてきたがそんな申請よりも緊張するのは、シャルロに伝えるこの瞬間だ。

 シャルロの手をとり両手で包みこむように握る。

「どうしたんだよレオ。改まった顔をして」

 シャルロが不思議そうな顔で見つめてくる。その唇が赤く濡れていてとても美味しそう……じゃなかった。

 同意を得るなら、俺がこのままだと精神が持たなくなることを伝えるのが確実だ。そうしたら優しいシャルロは絶対に断れない。

 だが、シャルロの優しさにいつまでもつけ込むのは嫌だ。

「っ……俺と子どもをつくってくれないか?」

 赤い瞳をしっかりと見つめ、声が震えないように気合いをいれながらシャルロに伝える。
 告白した時はシャルロも俺が好きだと言う勝算もあって大きく出られた。
 だが、今回は違う。

 俺はシャルロの返事を息を止めて待った。

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