12 / 16
番外編(レオ視点)
3
しおりを挟む―― はらませるハラマセル孕ませる。
確かに俺たち【苗床の乙女】は【花の騎士】の子種で力を増し【聖女】になる。シャルロたち【花の騎士】に特別な体質があってもおかしくはない。
だがしかしだ。
ジャックの言う通りだとしても男同士の俺達では子どもをつくれない。全く意味がない。
ある意味聖女候補の俺を虜にすると言う点で役に立ってはいるが、俺が惚れたのはシャルロの身体ではなく性格と顔だ。
ヤリまくりたいわけじゃない。
今までみたいに一緒に食事をしたり出かけたりして、あわよくば手を繋いだりして照れたり焦ったりするシャルロを堪能したいのだ。
しかし今手を繋げば抱きしめてキスして突っ込んで喘がせてしまう。そして精根尽きたシャルロは数日寝込む。
あまりにも欲望が止まらないから、自分の拗らせた恋心以外にも原因があるのではと疑い、ジャックを訪ねたと言うのに。シャルロの健やかな日々を守るためには俺が自制するしかない。
「なんの解決にもならねぇ……」
シャルロの為に耐えられるという気合はあるが、気合だけでは乗り切れないこともある。
世界を滅ぼすと言う邪神に対抗できる花の騎士の魔力に、聖女になっていない俺が勝てるとは思えないし、実際負けっぱなしだ。
憂鬱な気分で廊下を歩いていれば人目を集める場所があった。
カフェテリアのテラス席。
そこで食事をしている生徒達の中で一際目立つ二人組。
花の騎士エドウィンと聖女候補のエミリアだ。
楽しそうな二人の雰囲気を周りの生徒たちもうっとり見つめている。
理想の【苗床の乙女】と【花の騎士】のカップルだ。周りが羨望の眼差しを向けるのもわかる。
そういえばあの二人の場合はどうなんだろう?
気にはなるがさすがに友人たちの性事情を聞くのも憚られる。
悩んで二人を見ていたのは数十秒なかったのに、目ざとくエドウィンに見つかり手招きされた。
なんとなくお似合いの二人の邪魔に入るようで気が引けるが、無視するのも後々面倒なので呼ばれるままに二人のテーブルについた。
「レオ君、いつもより色気が三割増しでさっきから女子の視線集めてるよ」
エミリアが笑顔で冗談を言いつつ、生ハムたっぷりのサンドイッチとコーヒーを俺の前におく。
「色気というより百面相だったけどな。エミリアの手料理は美味いぞ」
「えへへ、エド君と食べようと思って作って来たんだけど多すぎちゃって。レオ君も食べて」
確かにテーブルの上には男が3、4人が食べても満足できそうな量のサンドイッチや卵焼き、フィッシュフライなどがある。
そういえば俺、最後に食事したのいつだっけ?
「……助かる。誘われなかったら昼飯食べ損ねるとこだった。ありがと」
俺は二人に礼を言ってからサンドイッチに食らいつく。俺が食べるのを見守ってから二人も食事を再開した。
「レオ、お前最近顔色悪くないか?」
「……自分じゃ気付かないけど」
「わたしもそれ思った。なんだか少しやつれた気がするよ? それにシャルロさまも最近お見かけしない日が多いし、もしかして何かあったの?」
エミリアの言葉に俺はサンドイッチを噛み締めつつ、視線を彷徨わせる。
「レオ君?」
「……。…………。シャルロは……ヤリ過ぎて寝てる」
「それこの間も言ってなかったか?」
「……。」
俺は視線を外したままもぐもぐ口を動かす。
俺のせいでシャルロが寝込むのは既に五回目である。どうにか事に及ばずに、と思うのに気付けば押し倒しているし、シャルロが気絶しない程度に、と思うのに気付けば自分も気を失うまでヤッている。
「やっぱり聖女にならないと花の騎士の魔力には抗えないのかな……」
そうなると今のところ解決策がなくて手詰まりである。
「……え、もしかしてレオ君【聖女】になって、ないの?」
カシャン…とテーブルにフォークが落ちた音が響く。
視線を上げれば、フォークを落としたエミリアが蒼白な顔でこちらを見ている。
エミリアはエドウィンから話を聞いていると思っていたが、エドウィンを見れば「さすがに親友の繊細な事情を勝手に吹聴しない」と顔を横に振った。
こういう口の堅い部分は花の騎士達の中で随一だ。さすがエドウィン。自分で説明するのは微妙だがこれは仕方ない。
「【聖女】にはなってない。シャルロの未来視で俺が聖女になると良くないことが起こるって視えたらしくって、だから……俺がシャルロを……まあそういうことだ」
みなまで言わなくても通じるだろう。
照れくささもあって歯切れの悪い俺の言葉にエミリアの顔色がさらに悪くなる。
「どうしよう……このままじゃレオ君が死んじゃうかも」
顔面蒼白のエミリアの言葉に、俺とエドウィンの顔色が悪くなったのも言うまでもない。
44
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。
うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!!
高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。
ムーン様にも投稿してます。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
自分の気持ちを素直に伝えたかったのに相手の心の声を聞いてしまう事になった話
よしゆき
BL
素直になれない受けが自分の気持ちを素直に伝えようとして「心を曝け出す薬」を飲んだら攻めの心の声が聞こえるようになった話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる