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最終話【そして未来へ】
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それから一年、クロイスは約束どおりに村を造り上げてくれた。
元々、領内の治安維持に何か対処しなければと考えてはいたらしく、反対意見は殆んど出なかったらしい。
女神様の件は表には出さずに僕達と領主との中だけに留めておくことになった。
僕も女神様の代行者とか言われたら面倒な事になるだろうからありがたく了承させてもらった。
「それではセーラお嬢様をお預かり致します」
「ああ、村には娘が住む家と身の回りの世話をする使用人を先に送っているから心配する事はない。
しっかりと勉強をして立派な筆頭魔術師となるようにな」
「はい、お父様。私はお兄ちゃんの元で勉強に励むようにします」
「必要なものはあらかた準備しているはずだが足りないものがあれば連絡をするように。
警備も衛兵をつけてはいるがくれぐれもセーラの事は頼むぞ」
「もちろんです。
怪我や病気はさせませんし、万が一の時も必ず治しますので安心してください。
では出発します」
そう言って僕達を乗せた馬車は新しい村へ向かった。
村を造るにあたってクロイスが周辺の治安を徹底的に安定させたので当然ながら盗賊はおろか獣とも遭遇せずに村に着いた。
「お待ちしておりました。皆さんの住む家はこちらになります」
村に着くと門兵が村の管理者を呼びに走ってくれた。
僕は講師として学校運営をするつもりだったので村の長はクロイスにお願いして管理者を派遣してもらった。
「ようこそおいでくださいました。
村の管理を任されましたハーツと申します。
オルト様には学校関係の全ての権利をお渡しするように領主様から伺っております」
ハーツは一礼をして鍵束を僕に差し出した。学校に付随する建物やドアの鍵束であった。
「ありがとうございます。
村の運営に関してはそちらに一任となりますが弟子達の研修の場としていろいろとお願いすることがあると思います。
その時はよろしく頼みます」
村にたどり着いた僕達は村長に挨拶をすませて村の中央に建っている学校と併設されている住居兼寮に行き、開校の準備を進めた。
「しかし、中の設備は本当に要らなかったのでしょうか?基本的な机や棚しか準備しておりませんでしたが……」
学校では運営に関しての事務手続きを請け負ってくれるクロバスという男が領主より派遣されていた。
「ええ、クロイス様にはそのように伝えてありましたので問題ありません。
これからひとつずつ必要な魔道具を造っていきますから。
それに、来週くらいには呼び寄せていた助っ人が到着するでしょうからそうしたら本格的に始動するようにしますよ」
「わかりました。ではそのように領主様にお伝えして生徒の移動をしてもらいます。当初は『治癒士』『鍛冶士』『薬師』『料理人』『商人』の5種類の職業見習いを2名ずつ受け入れる予定になっております。
それとセーラお嬢様が『魔術師』ですね」
書類を確認しながらクロバスがテキパキと手配をこなしていた。
(良い人材をまわしてくれたようだな。
まあ、自治区のプラスになることだし、女神様がらみだからだろうけど正直ありがたい、事務や手配までやるとかなり面倒だからな)
* * *
次の週ーーー。
予定していたメンバーが次々と村に集まってきた。
あれだけの生徒を僕がひとりでみる訳にはいかないので呼んだ助っ人達だ。
「オルトさん、お久しぶりです。
まあ、先月お会いしましたのでそれほど前ではないですけど会いたかったです」
そこにはクーレリアが笑顔で立っていた。
「やあ、よく来てくれたね。工房の方は大丈夫かい?」
「はい。相変わらず父が元気に仕事をしているので特に問題はありません。
予約分でまだの物はこちらで時間があるときに作りますので大丈夫だと思います。
それにやっぱりオルトさんの近くに居たいですから……」
少し照れながらも答えるクーレリアの後ろから元気な声が聞こえてきた。
「あー!くーちゃんズルいですよ!
私だって早くオルトさんに会いたかったんですから!」
そう叫びながら僕に飛びついてくるエスカを押さえながらも迎えた。
「エスカもよく来てくれたね。診療所の方は目処が立ったのかい?」
「相変わらず忙しいけれど、この一年で代わりを育ててきたから大丈夫よ。
それに領主様から直接依頼があったら現場も納得するしかないでしょ?」
(そうなんだ。今回集まってもらったメンバーには領主様から直接依頼をしてもらって集まってもらったんだ。
僕が個人的に呼び掛けても現場が手放さないだろうからね)
「ふたりとも研修の現場確認はしっかりしておいてね。
必要なものがあればすぐにクロバスさんに頼むようにね」
「「はい」」
そこにシミリが入ってきて皆に言った。
「はいはい!さっさと準備に入って!
ふたりは自分の泊まる部屋に荷物を運び込んでから玄関に集まって!
村の人達に挨拶しに行きますよ。あっオルト君も一緒に行くからね」
あれから結局ふたりとも僕と婚姻を結んだ。
そうしないと周りの有力者達から取り込もうとする動きが止められなかったからだ。
シミリが少しだけやきもちをやいたが、ふたりが一歩下がってシミリをたてるように振る舞ったために納得してくれた。
自分の幸せの為に人を幸せに導く仕事。前世で悪かった運命もそのおかげで今がある。
僕を理解してくれる嫁達とおかしなスキルを使う僕を温かく迎え入れてくれる村人達に囲まれてこれからもチートな弟子を量産していく事だろう。
「本当に転生して良かった。この世界に来れて良かった」
「ん?何か言った?」
シミリが微笑みながら聞いてきた。
「いや、シミリに出会えて本当に良かったなと。ありがとう、そしてこらからもよろしくね」
「え?どうしたの急に?」
僕の言葉に顔を赤くしてこっちを見つめるシミリに軽くキスをして手を握って玄関から空を見上げた。
「あー!シミリだけずるーい!私も手をつなぎたーい!」
「待ってくださーい!おいてかないでよぉ!」
後ろからエスカとクレリの声が響き、僕とシミリは笑いながら駆け出した。
空は今の僕の心のように高く澄みわたっていた。
ー 完 ー
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
元々、領内の治安維持に何か対処しなければと考えてはいたらしく、反対意見は殆んど出なかったらしい。
女神様の件は表には出さずに僕達と領主との中だけに留めておくことになった。
僕も女神様の代行者とか言われたら面倒な事になるだろうからありがたく了承させてもらった。
「それではセーラお嬢様をお預かり致します」
「ああ、村には娘が住む家と身の回りの世話をする使用人を先に送っているから心配する事はない。
しっかりと勉強をして立派な筆頭魔術師となるようにな」
「はい、お父様。私はお兄ちゃんの元で勉強に励むようにします」
「必要なものはあらかた準備しているはずだが足りないものがあれば連絡をするように。
警備も衛兵をつけてはいるがくれぐれもセーラの事は頼むぞ」
「もちろんです。
怪我や病気はさせませんし、万が一の時も必ず治しますので安心してください。
では出発します」
そう言って僕達を乗せた馬車は新しい村へ向かった。
村を造るにあたってクロイスが周辺の治安を徹底的に安定させたので当然ながら盗賊はおろか獣とも遭遇せずに村に着いた。
「お待ちしておりました。皆さんの住む家はこちらになります」
村に着くと門兵が村の管理者を呼びに走ってくれた。
僕は講師として学校運営をするつもりだったので村の長はクロイスにお願いして管理者を派遣してもらった。
「ようこそおいでくださいました。
村の管理を任されましたハーツと申します。
オルト様には学校関係の全ての権利をお渡しするように領主様から伺っております」
ハーツは一礼をして鍵束を僕に差し出した。学校に付随する建物やドアの鍵束であった。
「ありがとうございます。
村の運営に関してはそちらに一任となりますが弟子達の研修の場としていろいろとお願いすることがあると思います。
その時はよろしく頼みます」
村にたどり着いた僕達は村長に挨拶をすませて村の中央に建っている学校と併設されている住居兼寮に行き、開校の準備を進めた。
「しかし、中の設備は本当に要らなかったのでしょうか?基本的な机や棚しか準備しておりませんでしたが……」
学校では運営に関しての事務手続きを請け負ってくれるクロバスという男が領主より派遣されていた。
「ええ、クロイス様にはそのように伝えてありましたので問題ありません。
これからひとつずつ必要な魔道具を造っていきますから。
それに、来週くらいには呼び寄せていた助っ人が到着するでしょうからそうしたら本格的に始動するようにしますよ」
「わかりました。ではそのように領主様にお伝えして生徒の移動をしてもらいます。当初は『治癒士』『鍛冶士』『薬師』『料理人』『商人』の5種類の職業見習いを2名ずつ受け入れる予定になっております。
それとセーラお嬢様が『魔術師』ですね」
書類を確認しながらクロバスがテキパキと手配をこなしていた。
(良い人材をまわしてくれたようだな。
まあ、自治区のプラスになることだし、女神様がらみだからだろうけど正直ありがたい、事務や手配までやるとかなり面倒だからな)
* * *
次の週ーーー。
予定していたメンバーが次々と村に集まってきた。
あれだけの生徒を僕がひとりでみる訳にはいかないので呼んだ助っ人達だ。
「オルトさん、お久しぶりです。
まあ、先月お会いしましたのでそれほど前ではないですけど会いたかったです」
そこにはクーレリアが笑顔で立っていた。
「やあ、よく来てくれたね。工房の方は大丈夫かい?」
「はい。相変わらず父が元気に仕事をしているので特に問題はありません。
予約分でまだの物はこちらで時間があるときに作りますので大丈夫だと思います。
それにやっぱりオルトさんの近くに居たいですから……」
少し照れながらも答えるクーレリアの後ろから元気な声が聞こえてきた。
「あー!くーちゃんズルいですよ!
私だって早くオルトさんに会いたかったんですから!」
そう叫びながら僕に飛びついてくるエスカを押さえながらも迎えた。
「エスカもよく来てくれたね。診療所の方は目処が立ったのかい?」
「相変わらず忙しいけれど、この一年で代わりを育ててきたから大丈夫よ。
それに領主様から直接依頼があったら現場も納得するしかないでしょ?」
(そうなんだ。今回集まってもらったメンバーには領主様から直接依頼をしてもらって集まってもらったんだ。
僕が個人的に呼び掛けても現場が手放さないだろうからね)
「ふたりとも研修の現場確認はしっかりしておいてね。
必要なものがあればすぐにクロバスさんに頼むようにね」
「「はい」」
そこにシミリが入ってきて皆に言った。
「はいはい!さっさと準備に入って!
ふたりは自分の泊まる部屋に荷物を運び込んでから玄関に集まって!
村の人達に挨拶しに行きますよ。あっオルト君も一緒に行くからね」
あれから結局ふたりとも僕と婚姻を結んだ。
そうしないと周りの有力者達から取り込もうとする動きが止められなかったからだ。
シミリが少しだけやきもちをやいたが、ふたりが一歩下がってシミリをたてるように振る舞ったために納得してくれた。
自分の幸せの為に人を幸せに導く仕事。前世で悪かった運命もそのおかげで今がある。
僕を理解してくれる嫁達とおかしなスキルを使う僕を温かく迎え入れてくれる村人達に囲まれてこれからもチートな弟子を量産していく事だろう。
「本当に転生して良かった。この世界に来れて良かった」
「ん?何か言った?」
シミリが微笑みながら聞いてきた。
「いや、シミリに出会えて本当に良かったなと。ありがとう、そしてこらからもよろしくね」
「え?どうしたの急に?」
僕の言葉に顔を赤くしてこっちを見つめるシミリに軽くキスをして手を握って玄関から空を見上げた。
「あー!シミリだけずるーい!私も手をつなぎたーい!」
「待ってくださーい!おいてかないでよぉ!」
後ろからエスカとクレリの声が響き、僕とシミリは笑いながら駆け出した。
空は今の僕の心のように高く澄みわたっていた。
ー 完 ー
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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