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第113話【カイザックへの旅支度】
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「今日は商人ギルドに顔を出してからビガントさんの工房に行くよ」
僕はシミリにそう言うと商人ギルドに向かった。
ーーーちりちりん。
商人ギルドのドアベルの音がロビーに響いた。
僕達はまず依頼掲示板でカイザックからの依頼が無いかを確認し、受付に向かった。
「今のところ儲かりそうな依頼はなさそうだな。
強いて言えば鉱物の輸送だが馬車一台しか持たない僕達には割が合わないよな。
まあ、収納鞄を使えば出来るけど目立ちたくないからやめておくか」
「そうですね。冒険者ギルドの依頼も確認して行きますか?」
「そうだなぁ。
何となくだけど面倒な事になりそうな気がするからそっちはやめておこう。
せっかくシミリとの旅だからゆっくり戻るとしよう。
ああ、ビガントさんの工房で武器・防具の仕入れはして行くよ。
空の馬車で帰るなんて商人としてもだけど逆に怪しまれるだろうしね」
「そうですね。
まあ、私もそれなりに仕入れをしてますから空の馬車とはならないですけどね」
僕達はそう話ながらビガントの工房へ馬車を進めた。
「すみませーん。ビガントさん居ますか?」
カイザックに戻るにあたっていろいろな商品を仕入れた僕達だったが、やはりリボルテで一番仕入れないといけないのは鉱物加工品だった。
「ああ、オルト君。
珍しく馬車を連れて仕入れかい?クレリにじゃなくて私を指名とは珍しいね」
「ああ、クーレリアさんにも用事はあるんですけど今日はビガントさんにもお願いがあって来たんです」
「私に?なんだい?」
「先日クーレリアさんには伝えたんですけど僕達、カイザックギルド依頼の完了報告がまだ済んでいないので一度カイザックへ戻らないといけないんです。
まあ、こちらのギルドには報告してますのでカイザックのギルドへも情報は行ってるから焦ってはいないですけどね」
「ああ、その事はクレリから聞いてるよ。
近いうちに一度カイザックに戻る必要があるとね」
「で、妻シミリは商人ですのでカイザックに戻るのに手ぶらで帰るなんてあってはならないんですよ。
それでビガントさんの武器を幾つか仕入れたいと思いまして相談にきました。
もちろんクーレリアさんには包丁や農具はお願い済みですけど」
「なるほど、そう言うことでしたか。
それはもちろん大丈夫ですよ。
どれでも必要なだけ持っていってください。クレリがお世話になっていますから、お代は材料代だけで結構ですよ」
ビガントは質の良い武器・防具をテーブルに並べて僕に選ぶようにすすめた。
「さすがに良いものがそろってますね。
ではここからここまで仕入れたいと思います。
でも、お代は正規の金額を受け取ってください。
これは商売の仕入れですので正規の金額で仕入れた商品を利益の出るように売りさばくのが商人の腕の見せ所なんです。
妻シミリの商人としての経験にもなりますので安易に安く譲るのは無しにしましょう」
「わかりました。ありがとうございます。
では、私の作品達をどうぞよろしくお願いします」
「はい。しっかりと売らせてもらいますよ」
僕はビガントと握手をすると商品を馬車の荷台に積み込んだ。
「あ、オルトさんにシミリさん。
約束の品は準備できてますよ。
本当ならばハンマーのお礼に無料でもいいんだけど、シミリさんに怒られてしまいますので前金で材料費だけ頂いて委託販売でお願いします。
いくらで売っても構いませんので、売れて儲かった金額の三割ほど次にリボルテへ来られた時にくださいね」
「クーレリアさん。三割は少なすぎます。
せめて半分は受け取ってもらいますよ。
私も商人ですので正当な利益の配分には口を出させてもらいますからね」
話を横で聞いていたシミリがクーレリアに意見した。
「はい、わかりました。
ではそのようにお願いしますね。で、次はいつ頃こちらに来られるのですか?
あまり遅いと私、誰かのものになっちゃうかもしれませんよ?」
「まあ、良い縁があって本人が納得するのであれば僕は祝福させてもらうよ。次に来るのはちょっとまだ分からないけど必ず連絡は入れるようにするよ」
「ヤキモチも焼いて貰えないんですね。
でも約束ですよ?シミリさんが大切なのは分かりますけど私の事も忘れないでくださいね」
クーレリアは名残惜しそうに視線を送ってくるがシミリが横にいる状態ではせいぜいが握手をかわすくらいしか出来なかった。
「それじゃあそろそろ出発しましょうか。
カイザックまで約10日の道程は行きも帰りも変わらないんだから」
「それでは、ふたりともお元気で。またお会いしましょう」
「ええ、オルトさんもシミリさんも道中気をつけてくださいね」
挨拶を終えた僕達はカイザックへ戻るためにリボルテの門を商人カードと冒険者カードで通過した。
護衛の件も心配されたが行きで盗賊を捕まえた僕を知っていた門兵は「気をつけて」と言うに留めて送り出してくれた。
「それじゃあ、これからの事を話ながらゆっくりと向かおうか」
僕達は晴れた空を見上げながらカイザックに向けて馬車を進めた。
僕はシミリにそう言うと商人ギルドに向かった。
ーーーちりちりん。
商人ギルドのドアベルの音がロビーに響いた。
僕達はまず依頼掲示板でカイザックからの依頼が無いかを確認し、受付に向かった。
「今のところ儲かりそうな依頼はなさそうだな。
強いて言えば鉱物の輸送だが馬車一台しか持たない僕達には割が合わないよな。
まあ、収納鞄を使えば出来るけど目立ちたくないからやめておくか」
「そうですね。冒険者ギルドの依頼も確認して行きますか?」
「そうだなぁ。
何となくだけど面倒な事になりそうな気がするからそっちはやめておこう。
せっかくシミリとの旅だからゆっくり戻るとしよう。
ああ、ビガントさんの工房で武器・防具の仕入れはして行くよ。
空の馬車で帰るなんて商人としてもだけど逆に怪しまれるだろうしね」
「そうですね。
まあ、私もそれなりに仕入れをしてますから空の馬車とはならないですけどね」
僕達はそう話ながらビガントの工房へ馬車を進めた。
「すみませーん。ビガントさん居ますか?」
カイザックに戻るにあたっていろいろな商品を仕入れた僕達だったが、やはりリボルテで一番仕入れないといけないのは鉱物加工品だった。
「ああ、オルト君。
珍しく馬車を連れて仕入れかい?クレリにじゃなくて私を指名とは珍しいね」
「ああ、クーレリアさんにも用事はあるんですけど今日はビガントさんにもお願いがあって来たんです」
「私に?なんだい?」
「先日クーレリアさんには伝えたんですけど僕達、カイザックギルド依頼の完了報告がまだ済んでいないので一度カイザックへ戻らないといけないんです。
まあ、こちらのギルドには報告してますのでカイザックのギルドへも情報は行ってるから焦ってはいないですけどね」
「ああ、その事はクレリから聞いてるよ。
近いうちに一度カイザックに戻る必要があるとね」
「で、妻シミリは商人ですのでカイザックに戻るのに手ぶらで帰るなんてあってはならないんですよ。
それでビガントさんの武器を幾つか仕入れたいと思いまして相談にきました。
もちろんクーレリアさんには包丁や農具はお願い済みですけど」
「なるほど、そう言うことでしたか。
それはもちろん大丈夫ですよ。
どれでも必要なだけ持っていってください。クレリがお世話になっていますから、お代は材料代だけで結構ですよ」
ビガントは質の良い武器・防具をテーブルに並べて僕に選ぶようにすすめた。
「さすがに良いものがそろってますね。
ではここからここまで仕入れたいと思います。
でも、お代は正規の金額を受け取ってください。
これは商売の仕入れですので正規の金額で仕入れた商品を利益の出るように売りさばくのが商人の腕の見せ所なんです。
妻シミリの商人としての経験にもなりますので安易に安く譲るのは無しにしましょう」
「わかりました。ありがとうございます。
では、私の作品達をどうぞよろしくお願いします」
「はい。しっかりと売らせてもらいますよ」
僕はビガントと握手をすると商品を馬車の荷台に積み込んだ。
「あ、オルトさんにシミリさん。
約束の品は準備できてますよ。
本当ならばハンマーのお礼に無料でもいいんだけど、シミリさんに怒られてしまいますので前金で材料費だけ頂いて委託販売でお願いします。
いくらで売っても構いませんので、売れて儲かった金額の三割ほど次にリボルテへ来られた時にくださいね」
「クーレリアさん。三割は少なすぎます。
せめて半分は受け取ってもらいますよ。
私も商人ですので正当な利益の配分には口を出させてもらいますからね」
話を横で聞いていたシミリがクーレリアに意見した。
「はい、わかりました。
ではそのようにお願いしますね。で、次はいつ頃こちらに来られるのですか?
あまり遅いと私、誰かのものになっちゃうかもしれませんよ?」
「まあ、良い縁があって本人が納得するのであれば僕は祝福させてもらうよ。次に来るのはちょっとまだ分からないけど必ず連絡は入れるようにするよ」
「ヤキモチも焼いて貰えないんですね。
でも約束ですよ?シミリさんが大切なのは分かりますけど私の事も忘れないでくださいね」
クーレリアは名残惜しそうに視線を送ってくるがシミリが横にいる状態ではせいぜいが握手をかわすくらいしか出来なかった。
「それじゃあそろそろ出発しましょうか。
カイザックまで約10日の道程は行きも帰りも変わらないんだから」
「それでは、ふたりともお元気で。またお会いしましょう」
「ええ、オルトさんもシミリさんも道中気をつけてくださいね」
挨拶を終えた僕達はカイザックへ戻るためにリボルテの門を商人カードと冒険者カードで通過した。
護衛の件も心配されたが行きで盗賊を捕まえた僕を知っていた門兵は「気をつけて」と言うに留めて送り出してくれた。
「それじゃあ、これからの事を話ながらゆっくりと向かおうか」
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