上 下
51 / 120

第51話【曖昧に作った薬の効果は?】

しおりを挟む
「で、シミリは具体的にどのくらいの大きさにしたいんだ?
 それが分からないと完璧な薬は作れないぞ」

「オルト君、それはセクハラよ。
 と言いたいけれど確かに具体的な数値がないと分からないわよね。
 これはご婦人方に要望を聞く時には同性の私が聞き取りをしないといけないですね。
 いくらなんでもオルト君が直接聞くと絶対に問題になるよね」

(でも、私はオルト君に言わないといけないのよね。
 そんなの恥ずかしすぎてとても言えないから、試しに「大きく」と曖昧な指示で作ったらどうなるかをお願いするしかないかな)

 シミリはこの計画の最大の弱点を早くも実感していた。
 コンプレックスを持つ女性が異性の薬師に状況を詳しく話さなくてはいけないなどハードルが高すぎるのだ。
 仮に同性のシミリが聞き取りをしたとしても結局はオルトに伝えるしかないので依頼女性はなんとも微妙な雰囲気になること間違いなしである。

「オルト君。
 サイズを言うのはちょっと、いえ、かなり恥ずかしいから今より大きくして欲しいとかじゃ駄目かな?」

「ん?駄目じゃないけど曖昧だとどのくらいになるか僕にも見当がつかないぞ。
 大体、今のシミリのサイズを知らないからそれより大きくとか言われても僕の感覚でやるしかないよ。
 それでも良いならリセット付きのお試し薬を使ってみるかい?
 それならもし気に入らなかったら定着薬を飲まなければ一晩寝たら元に戻るから、だだ一度リセットしたら二回目は効かなくなるのが難点だけどね」

「へぇー。一度だけどやり直せるのね。
 じゃあそれでお願いしてみようかな」

「了解。それじゃあ早速作るから夜の食事後に飲んで寝て起きたら変化があるはずだよ」

「分かったわ。期待しておくわね」

 僕はシミリの要求は大体把握していたが、彼女があまり他人の目を引く体型になっても色々と不都合が出るからシミリには悪いけど諦めてもらう方向で調薬させてもらった。明日起きたらびっくりするだろう。



 ーーーそして翌朝。



「なっなっ何よこの胸の大きさは!?」

 朝一番、予想どおりシミリの叫び声で始まった。

「どうした!?シミリ!何があった!!」

 自分でやっておきながらとぼけた台詞をはいてシミリの胸を確認する為に仕切りを開けた僕にシミリは慌てて胸を隠しながら叫んだ。

「ちょっとオルト君!あっち向いてて!!」

 そこで僕が見たのは大きくなった胸を隠しながら慌てるシミリの姿であった。

「どうだい?理想通りの結果だったかい?
 やっぱり曖昧なイメージだと上手くいかなかったから宿のおかみさんくらいの大きさをイメージして調薬してみたんだ。
 どうやら成功したみたいだね」

 その時シミリが僕に向かって叫んだ。

「いくらなんでも大きすぎます!!って言うかあっち向いてって言ったでしょ!」

 予想どおりの展開に満足した僕は部屋から出て厨房にいたおかみさんに声をかけてシミリの様子を見に行ってもらった。

 ーーーその後、宿のおかみさんに事情を話したシミリはとりあえず着れる服を準備して貰った。
 おかみさんはびっくりしていたけど成長薬のテストをしていたと説明したら意外とあっさり納得してくれた。
 服を借りて着替えを済ましたシミリはほっと一息ついて改めて自分の体を見ていたら、おかみさんがサイズを計ってみようと言い出した。
 正確なサイズが分からないと下着や服を選べないからだそうだ。
 納得したシミリはおかみさんに手伝ってもらってサイズを計ったらしいが当然僕は外に出されていたのでそれを見ることはなかった。

(落ち着いて見るとやっぱり凄い大きさね。おかみさんに計ってもらったら“G”だと言われたのよね。
 今までがギリ“B”だったから5階級特進って話よね。
 ちょっと大きすぎる気もするけどせっかくだから今日一日これで過ごしてみてからどうするか決めようかな)

 少々大きすぎたが念願のサイズアップにシミリは浮かれていていつもの冷静さを失っていた。

「オルト君。
 私今から服を買いに行ってくるね。
 下着も買うからオルト君は待っていてね」

(女の子にそう言われたら男は黙って頷くしかないよな。
 一緒に店に入るのも、店の前で待つのも怪しい人になってしまうのが辛いところだな)

「分かったよ。
 じゃあ僕は他にどんな物が出来るかを検証して待ってるよ。
 昼食までには戻ってくるんだよ」

「分かってるわよ。
 可愛い服を見つけてくるからね。
 楽しみにしていてね」

 シミリはそう言うと嬉しそうに買い物に出かけていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

むらゆう―村人を目指す英雄―

瀬口恭介
ファンタジー
約850年前、神裂雄人は異世界に転生した。その13年後、魔王を倒すことに成功する。しかし、次の魔王を倒すべく、別の世界に転移させられてしまう。850年間魔王を倒し続けたユウトはついにその作業から解放された。 その後様々なことに巻き込まれながらも休息を得たユウトだったが、なんと、その世界にかつてのクラスメイトが転移してきて…… ——これは、英雄ユウトが世界を平和にするために仲間と生きていく物語。 ※この作品は小説家になろう、マグネットにも搭載しております。

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

【R18】ショタが無表情オートマタに結婚強要逆レイプされてお婿さんになっちゃう話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...