DUEL [デュエル]

ケイ・ナック

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赤い車

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「すごい車ね。これからどこへ行くの?」

「ただドライブするだけよ。どうする?バーバラ」

「ええ、いいわ。面白そうじゃない」

「じゃ、決まりね」


赤い車の助手席に乗り込んだバーバラは、四点式ハーネスの勝手がわからず、キャシーに目でたずねた。

キャシーは自分のハーネスを見せてうなずいた。

カチ!っと音がして、バーバラのハーネスがめられ、車は発進した。



「ビリーは元気にしてるの? あなたの家にはもう馴染なじんだのかしら?」
と、ハンドルをにぎり、ぐ前方を見ながらキャシーは聞いた。

「あの子は大丈夫よ。持ち前の明るさで元気にやっているわ。わたしの方が助かっているくらいよ」
とバーバラは答えた。

「ふふふ、すっかり保護者になっているわね」

「ええ、そうよ。主人がいなくなった今、わたしの生き甲斐がいになりつつあるの」
バーバラは遠くを見るような面持おももちで言った。


「ただ、わたしはビリーを巻き込んでいいのか不安なの。あの子は復讐の意味がわかっているのかしら」
とバーバラは言った。

「そうね。でもビリーは男の子だからね。今はまだ幼いけど、いつか自分の立場を理解する時が来るでしょう。 それに、いずれ男の本性が表れてくるんじゃないかしら。 だから、自然にまかせればいいと思うのよ」


赤い車は住宅街を疾走しっそうする。

窓から入ってくる風が気持ちいい。

風になびいて、キャシーの髪が赤くきらきら光っていた。


「それに、マリーという可愛いお姉さんもできたことだし」
キャシーはそう言うと、口元をほころばせた。

それを聞いたバーバラは、
「ほんと、あの子たちは仲がいいわ。出会ってすぐにお友達になったらしいの」
と笑顔で言った。


窓からの風に、少し草木の香りがじってきた。

住宅街から離れつつあった。


赤い車は、ゆるやかに流れる川に近づき、頑丈な鉄でできた、大きな橋を渡り始めた。

キャシーは軽快なハンドルさばきで橋を越え、
「この先、二十キロのところにカフェがあるわ。とりあえずそこまで行ってみましょう。途中で何かあれば、アクションの始まりよ」
と言った。

「そうね、カフェに行ってみたいわ。でも本心を言うと、アクションの方を期待していると思うの。 わたしって、残酷な女かしら?」

「いいえ、ちっとも。アクションを楽しみましょう。わたしたちは自分をめちゃいけないと思うのよ」

「そうよね。  キャシー、ありがとう。あなたといると気持ちが安らぐわ」
バーバラは、ほっとした表情で言った。


住宅街を離れ、山の稜線りょうせんが見えた頃、キャシーはハンドルをつかむ手に力を入れた。
「バーバラ、しっかりつかまっていてね」

キャシーははるか前方に獲物えものを見つけたようであった。


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