DUEL [デュエル]

ケイ・ナック

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ポリスの時間

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ポリスの駐車場で、新しいパトカーが並んでいた。

ピカピカに輝いた、最新型の高級セダンだった。

パトカーのまわりには、たくさんのポリスマンがいて、垂涎すいぜんの思いで見ていた。

「うひょー、すげえぜ!」
ひとりの若いポリスマンが叫んだ。

「こりゃあ、たまらねえ。ポリスマンになって、本当に良かったぜ!」
横にいた、中年のポリスマンも感嘆かんたんの言葉をいた。

なぜ、最新型の高級セダンがパトカーになるのかといえば、有力企業と政府が癒着しているからである。


二階の窓から、ポリスマンのトップが顔をのぞかせた。
「お前ら! 明日から、この車でパトロールしていいぞ! そして、どんどん取り締まるんだ!」

「おぉー!」
まわりのポリスマンたちが一斉いっせい雄叫おたけびを上げるのだった。



二階からポリスマンたちに号令をかけたポリスのトップは、重厚な椅子に深々と座り、電子タバコを口にくわえた。

そして横にひかえて立っている女性秘書に話しかけた。

「来月、自動車企業が開催するパーティーがあるんだったな?」

「はい。政府のトップも参加する予定です」
と中年の美人秘書はメガネを外しながら答えた。

「そうか。ならばわたしも参加しないわけにはいかないな。パーティー会場の近くで、一流ホテルのスイートを予約しておけ」
と口元をゆがめてそう言った。

「了解しました」
秘書は電子手帳に入力した。

「その日はお前も一緒に泊まるんだぞ、いいな」
ポリスのトップは卑猥ひわいな笑みを秘書に投げかけて言った。

「承知しております」
美人秘書は表情をくずさずに答えた。





次の日、若いポリスマンが最新型のパトカーを運転していた。

「こりゃあ、すごいですぜ先輩! これなら毎日乗っていたいですよ!」

助手席に座った中年ポリスマンは、
「あははは、馬鹿野郎! これくらいで興奮するんじゃねえよ」
と、出っ張った腹をさすりながら答えた。

「今までこんな高級車に乗ったことがないので、自分がちょっとえらくなったような気がしますよ!」
と若いポリスマンは言った。

「まぁ、しかしなんだな。いつも危険ととなり合わせの仕事なんだから、これくらいは当然と言えば当然だけどな、あははは!」

最新型のパトカーは、静かに都会の夜を流していた。


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