上 下
3 / 4

3.約束ですよ?

しおりを挟む

抱きしめながら頭の上から降ってくるリカルド先生の優しい声が、いつもとは違って少し緊張していて、それに胸がきゅんと音を立てる。

「医者を諦めようと思っていた時に、小さな体で一生懸命病気と闘っているアーシャと出会って、僕は貴女を守りたいと、そう思いました。」

初めて会った時はまだ医者見習いだったリカルド先生は、そんなふうに思っていてくれたのだと、嬉しい思いが込み上げる。


「どんどん成長していくアーシャを、兄のような気持ちで見守っていたのですが…、大人の女性になっていく貴方にいつしか惹かれて、傍で守りたいだなんて、医者としてあるまじき想いを持ってしまいました。この想いをどうにか封印しようとしていたのですが…」


抱きしめられていた身体が離れ、真っ直ぐな瞳で見つめられる。


「アーシャが僕を好いていてくれるのなら、どうか僕と結婚してくれませんか?」


!!!
あまりの衝撃に意識が飛びそうになってしまった。
え…私、リカルド先生に…求婚されてるの…?


「貴方が誰かに抱かれたり、誰かのものになるなんて…耐え切れないと思いました。どうか一生、傍でアーシャを守らせてください」

「は…はい。よろしくお願いします」

どうにか絞り出せた言葉に、リカルド先生は嬉しそうに微笑んだ。
リカルド先生の顔が近づき、唇が重なった。

まさか…幼い頃から思い続けてきたリカルド先生と、こんなに近い距離になれるなんて…

嬉しくて涙が零れ落ちた。


「好きです。リカルド先生…」

「ああ、本当、夢じゃないよね?」


二人で目を合わせ、ふっと笑ってしまった。
どうやら私達は両想いで、これから…夫婦になるみたいです。


口付けよりも先に…一番大事なところを見られてしまったけれど。
そう思い至ると、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。


「アーシャに診察を依頼されたときは、本当心臓が止まるかと思いました。」

「!!」


「もう、僕以外にアーシャの身体を見せないようにしてくださいね。約束ですよ?」

「はっ!はい!!」


いつもの穏やかな微笑みが少し怖く思えたのは気のせいだろうか…

もう一度ちゅっと口付けをされ、抱きしめられた。
この温かい胸で抱きしめて貰えるのが私で、本当に良かったと、心から幸せを噛みしめるのだった。



◆◆◆



「あら、アーシャ、この前は大丈夫だった?随分酔いつぶれたみたいだったけど」


お針子仕事に行くと、同僚のサリーが心配そうに聞いてくる。

「どうもこうも、朝方気が付いたら知らない宿で、吃驚したのよ」

「あんた凄い酔いつぶれてたから、心配して皆で宿に運んであげたのよ。感謝しなさいよ」

そうだったのか…
家まで帰れそうもない私を同僚みんなで介抱してくれていたらしい。

「吐くし、暴れるしで大変だったのよ。服も洗濯してあげたんだから、本当感謝しなさいよ」

「げ、そこまで…!本当感謝の気持ちしかないわ!」

だから全裸だったのね。
全ての謎が解けて、ほっと一息つくのであった。

それに…このことが無ければ、リカルド先生とはきっと医者と患者のままだったろうから…感謝してもしきれない。

「そうだ、サリー、私結婚することになったから」

そう照れながら言った私にサリーの吃驚した声が響き渡り、その日は1日中リカルド先生とのことを追及されるはめになったのでした。




「それは大変でしたね」

「そうなんですよ。サリーったらしつこくて。根掘り葉掘り聞こうとするものだから…」

「ふふ、僕も根掘り葉掘り聞きたいな。貴方が僕を好きな理由とか、どこを好いていてくれてるのかとか」

「も!もう。わかりました。一からお話してあげます」


リカルド先生から後ろから抱きしめられて誰も居ない診療所の応接室のソファに座っている。
耳元で話されるとくすぐったくて身をよじってしまう。


「僕も沢山話してあげるね。アーシャの好きな所とか、可愛いところとか」


ひとつひとつ、お互いを知っていければいいなと思う。
これから先、ずっと一緒に過ごすのだから──




後日…私はリカルド先生に溺愛され、リカルド先生の重すぎる愛を知るのだけれども

それはまた、別のお話──…




END



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!? 「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」 (こんなの・・・初めてっ・・!) ぐずぐずに溶かされる夜。 焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。 「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」 「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」 何度登りつめても終わらない。 終わるのは・・・私が気を失う時だった。 ーーーーーーーーーー 「・・・赤ちゃん・・?」 「堕ろすよな?」 「私は産みたい。」 「医者として許可はできない・・!」 食い違う想い。    「でも・・・」 ※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。 ※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 それでは、お楽しみください。 【初回完結日2020.05.25】 【修正開始2023.05.08】

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

処理中です...