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翔颯会開催!!
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ついに翔颯会当日。
うちの高校はお祭りムードだった。
俺とマル男はいつも通りの時間に登校すると校庭では大会に出ない生徒が屋台を開いて集客にしていたり、門の前で来客やこれから登校する生徒にも翔颯会のチラシを配ってる人がいたり、学校の紋章がペットボトルのラベルにプリントされた水を配っている人もいる。
皆、いつもより早く学校に来て今日の翔颯会を盛り上げるためになにやら活動しているらしい。
「速峰コウさんですよね」
門の前で水を配っている数名の中にいた、おかっぱ頭で丸いメガネをしたいかにも優等生という見た目をしている奴が話しかけてきた。そいつは、背が低く身長150cmちょっとのマル男と同じくらいの背丈だろうか。
「どうして俺のことを知ってるんです? ってか、あんた誰?」と俺はその人からペットボトルに入った水を受け取って、俺は頭一つ分くらい低い身長のおかっぱメガネを見下ろした。
すると、その男は、はっとして慌てて挨拶を始めた。
「これはいけない。申し遅れました。私、バスと申します。2年生ですよ」
俺は「はあ」とだけ返事するとバスと名乗った男はまるで俺が心を許した友であるかのように急に態度を変えて話を続けた。
「いやあ、この前の体育の授業で行われた選考会見てましたよ。あの時から速峰さんの大ファンになりまして、あの時の選考会では今大会優勝候補のロベルトさんの記録を抜いて一年生にして学校記録を塗り替えたそうですね…」
一度口を開いたら止まらないタイプなのかまだバスは喋り続けている。あまりにもペラペラと喋るものでそこから先は何を言っていたかはよく聞き取れなかった。
バスは見た目は冷静そうであまり感情的にならなそうな雰囲気なのに、今の話をしている時はちょっと興奮気味に身振り手振りに大袈裟にアクションをしながらどうにかこうにか気持ちを伝えようとしているのが俺にも伝わってきて、まあなんかファンが一人増えたみたいで嬉しくもある。
バスと挨拶を交わして俺たちは教室へ向かう。
「コウはうちの学校じゃもう有名人なんだから自覚しろよ」
隣で水には手をつけずマル男が登校途中で購入した途中まで残っている炭酸飲料水を一気に飲み干してからそう言った。
「そっか」
俺はポツリと返事をする。
そういえば教室まで向かう道中でやたら視線を感じていたと思ったらそういうことか。
俺はバスからもらった水を口に含んで飲み込んだ。喉の奥を滑り込んでいく水が体全体に染み渡っていくのが心地よい。
喉乾いてたんだな。思っていたよりも緊張していたらしい。でも、これから行われる翔颯会でまた思いっきりあの大空を飛ぶことを想像するとワクワクしてくる。
無限に広がる青い空に白い煙が上り大きな破裂音を立ててその煙は風に靡いていく。翔颯会開始の花火だ。
全校生徒が校庭に出て校庭の真ん中には、体育の授業に行われた選考会でタイムが良かった1年、2年、3年の各学年で生徒5名ずつが選出され校庭の中心に集められて俺含めて15名の鳥人が学年ごとに一列で並んでおり、この15名を囲むようにそのほかの生徒は立っていたり飛んでいたり、出走コースを塞がないように見物している。
「レディースアンド、ジェントルメン! アンドボーイズンガール!!」
カタコトできっと発音も正しくないであろう陽気な大会の司会のお決まりのフレーズがマイクを通して学校の校庭内に響き渡る。
「第一走者1年生対決! Aコースなり物入りの新人速峰コウ!」
自分の名前がコールされた時、会場全体がまるで揺れているようにどっと沸いた。空気感だけでも肌が痺れるような、そんな圧を感じた。皆、選考会で記録したタイムのことを知っているんだ。
続いてBコースの走者が紹介されている。同じ1年だ。面識はないけど立派な翼を持っている。きっと、速いのだろう。でも、俺の方が絶対速い!
翔颯会のルールは、1対1で決められたコースを飛行してタイムが速い方が勝ちで、トーナメント方式になっている。シード権はもちろん実績のある2年のロベルトだ。
「では! みなさんもうご存知かもしれませんが選手たちが飛ぶコースの紹介をさせていただこうかと思います!」
校庭にある巨大モニターに地図が映し出されて俺たちが飛ぶ経路が赤く線で引かれている。そして、画面が切り替わり今俺らの上空に浮かんでいるカメラが映し出した映像が流れる。
「まずは学校を飛び出しまっすぐ直線コース! それからの次に迎えるのは…」
次にモニターの画面が切り替わってモニターに表示されたのは全体が鉄柵で囲まれた大きな島だった。
「大樹の森! ここでは全長30mを超える大樹とここで育ったちょっと怖い動物や昆虫が解き放たれています。みなさん自慢の身体能力でこれらの障害を掻い潜ってください! なお、大樹の森を飛び越えられてはレースの意味がないので、森全体を鉄柵で覆いました。入る時は大樹の森『入口』と書かれた門を潜ってくださいね!」
モニターには大樹の森の映像が流れ森に住む野生生物が映し出された。それは大蛇であったり、人間の子供ぐらいの大きさの猛禽類などまるでジャングルだ。
「そして、大樹の森を抜けると次に待ち受けているのは鳥人が住むこの空で最も大きな都市アルティルスです」
また、モニターに巨大都市アルティルスの映像が映し出された。
アルティルス。空に浮かぶ鳥人の世界では最も大きな都市で島の大きさもここらへんの島の中では一番大きいかもしれない。ここは良くマル男と放課後遊びに行くから地理的には詳しい。
司会からレースの説明を受けて俺と対戦相手の1年は校庭のグランドの所定の位置に立つ。
「位置について!」
司会の鳥人が右手を高く上げる。
「よーい!」
大きなスターターピストルの破裂音と共に砂煙が上がる。
校庭を囲う生徒たちが俺らを見ている。
「スタート!」
最高速で空を駆ける二人を見送る視線を俺は背中で感じる。
ついに翔颯会1回戦が始まった。
うちの高校はお祭りムードだった。
俺とマル男はいつも通りの時間に登校すると校庭では大会に出ない生徒が屋台を開いて集客にしていたり、門の前で来客やこれから登校する生徒にも翔颯会のチラシを配ってる人がいたり、学校の紋章がペットボトルのラベルにプリントされた水を配っている人もいる。
皆、いつもより早く学校に来て今日の翔颯会を盛り上げるためになにやら活動しているらしい。
「速峰コウさんですよね」
門の前で水を配っている数名の中にいた、おかっぱ頭で丸いメガネをしたいかにも優等生という見た目をしている奴が話しかけてきた。そいつは、背が低く身長150cmちょっとのマル男と同じくらいの背丈だろうか。
「どうして俺のことを知ってるんです? ってか、あんた誰?」と俺はその人からペットボトルに入った水を受け取って、俺は頭一つ分くらい低い身長のおかっぱメガネを見下ろした。
すると、その男は、はっとして慌てて挨拶を始めた。
「これはいけない。申し遅れました。私、バスと申します。2年生ですよ」
俺は「はあ」とだけ返事するとバスと名乗った男はまるで俺が心を許した友であるかのように急に態度を変えて話を続けた。
「いやあ、この前の体育の授業で行われた選考会見てましたよ。あの時から速峰さんの大ファンになりまして、あの時の選考会では今大会優勝候補のロベルトさんの記録を抜いて一年生にして学校記録を塗り替えたそうですね…」
一度口を開いたら止まらないタイプなのかまだバスは喋り続けている。あまりにもペラペラと喋るものでそこから先は何を言っていたかはよく聞き取れなかった。
バスは見た目は冷静そうであまり感情的にならなそうな雰囲気なのに、今の話をしている時はちょっと興奮気味に身振り手振りに大袈裟にアクションをしながらどうにかこうにか気持ちを伝えようとしているのが俺にも伝わってきて、まあなんかファンが一人増えたみたいで嬉しくもある。
バスと挨拶を交わして俺たちは教室へ向かう。
「コウはうちの学校じゃもう有名人なんだから自覚しろよ」
隣で水には手をつけずマル男が登校途中で購入した途中まで残っている炭酸飲料水を一気に飲み干してからそう言った。
「そっか」
俺はポツリと返事をする。
そういえば教室まで向かう道中でやたら視線を感じていたと思ったらそういうことか。
俺はバスからもらった水を口に含んで飲み込んだ。喉の奥を滑り込んでいく水が体全体に染み渡っていくのが心地よい。
喉乾いてたんだな。思っていたよりも緊張していたらしい。でも、これから行われる翔颯会でまた思いっきりあの大空を飛ぶことを想像するとワクワクしてくる。
無限に広がる青い空に白い煙が上り大きな破裂音を立ててその煙は風に靡いていく。翔颯会開始の花火だ。
全校生徒が校庭に出て校庭の真ん中には、体育の授業に行われた選考会でタイムが良かった1年、2年、3年の各学年で生徒5名ずつが選出され校庭の中心に集められて俺含めて15名の鳥人が学年ごとに一列で並んでおり、この15名を囲むようにそのほかの生徒は立っていたり飛んでいたり、出走コースを塞がないように見物している。
「レディースアンド、ジェントルメン! アンドボーイズンガール!!」
カタコトできっと発音も正しくないであろう陽気な大会の司会のお決まりのフレーズがマイクを通して学校の校庭内に響き渡る。
「第一走者1年生対決! Aコースなり物入りの新人速峰コウ!」
自分の名前がコールされた時、会場全体がまるで揺れているようにどっと沸いた。空気感だけでも肌が痺れるような、そんな圧を感じた。皆、選考会で記録したタイムのことを知っているんだ。
続いてBコースの走者が紹介されている。同じ1年だ。面識はないけど立派な翼を持っている。きっと、速いのだろう。でも、俺の方が絶対速い!
翔颯会のルールは、1対1で決められたコースを飛行してタイムが速い方が勝ちで、トーナメント方式になっている。シード権はもちろん実績のある2年のロベルトだ。
「では! みなさんもうご存知かもしれませんが選手たちが飛ぶコースの紹介をさせていただこうかと思います!」
校庭にある巨大モニターに地図が映し出されて俺たちが飛ぶ経路が赤く線で引かれている。そして、画面が切り替わり今俺らの上空に浮かんでいるカメラが映し出した映像が流れる。
「まずは学校を飛び出しまっすぐ直線コース! それからの次に迎えるのは…」
次にモニターの画面が切り替わってモニターに表示されたのは全体が鉄柵で囲まれた大きな島だった。
「大樹の森! ここでは全長30mを超える大樹とここで育ったちょっと怖い動物や昆虫が解き放たれています。みなさん自慢の身体能力でこれらの障害を掻い潜ってください! なお、大樹の森を飛び越えられてはレースの意味がないので、森全体を鉄柵で覆いました。入る時は大樹の森『入口』と書かれた門を潜ってくださいね!」
モニターには大樹の森の映像が流れ森に住む野生生物が映し出された。それは大蛇であったり、人間の子供ぐらいの大きさの猛禽類などまるでジャングルだ。
「そして、大樹の森を抜けると次に待ち受けているのは鳥人が住むこの空で最も大きな都市アルティルスです」
また、モニターに巨大都市アルティルスの映像が映し出された。
アルティルス。空に浮かぶ鳥人の世界では最も大きな都市で島の大きさもここらへんの島の中では一番大きいかもしれない。ここは良くマル男と放課後遊びに行くから地理的には詳しい。
司会からレースの説明を受けて俺と対戦相手の1年は校庭のグランドの所定の位置に立つ。
「位置について!」
司会の鳥人が右手を高く上げる。
「よーい!」
大きなスターターピストルの破裂音と共に砂煙が上がる。
校庭を囲う生徒たちが俺らを見ている。
「スタート!」
最高速で空を駆ける二人を見送る視線を俺は背中で感じる。
ついに翔颯会1回戦が始まった。
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