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33.余裕な理由
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ーー翌朝
「いない……」
部屋に入る前からフォース薄々勘づいていた。それが部屋に入った瞬間、確信に変わる。
(逃げましたか……)
忌々しそうに顔を歪めたフォースは、すぐさま部屋を出ようとしてふと立ち止まった。
(窓もはめ殺し、扉の前を見張らせていた兵士は何もされていない、ならばどうやって逃げたのでしょう……)
グルリと辺りを見回すが、目立って破壊された場所はない。ふと、フォースはベッドが置かれている場所から空気が流れ込んでいるのを感じ取った。
「まさか……!」
バッとベッドの下を覗けば、近くに通気口に嵌めてあった鉄格子の残骸が放り投げてある。ぽっかりとなんの障害もなくなりただの抜け道とかした通気口がそこにはあった。
(っ! 忘れていました。ルイは普通の女とは違ったのでした)
そもそも、ここに代々閉じ込められてきたのは非力な女達だった。だが、ルイはフォースとも渡り合う腕の持ち主である。
(しかし、私ですらこのような狭い場所にある鉄を切ることは無理ですね……)
この通気口から庭に出るには、フォースでは狭すぎる。しょうがなしに、フォースは外から回って庭に出た。しばらく歩くと、ルイに着せていた夜着の端が建物の死角部分から覗いている。
「服を脱いで……? いや、流石にそれはあり得ません」
だとすると、巡回中の兵士から拝借したのか。そう思いながら、夜着の端が見える場所まで行けば、案の定ルイにのされたであろう兵士が夜着を着せられて寝かされていた。
「兵士はいない方が良かったかもしれませんねぇ」
見るに耐えない姿を晒した兵士を哀れに思いながら、フォースは確信する。
(ルイはすでに、この砦を脱出しているでしょう。追手をかけたいですが、ルイならば難なく倒してしまいそうですねぇ)
ふむ、と考え込んだフォースはまだ余裕の表情だ。
何故なら、ここから近くの街までは馬で1日ほどかかる場所にあるからだ。ルイならば目立つ道を避けて森へ入るだろうとフォースは予想する。
(森は私が探しましょうか。道の方は、暗部の者に探させましょう)
森には敵が来た時に備えて沢山の罠が仕掛けてある。それも致命傷にならないように工夫された罠が。戦いでは、捕虜を取った方が有利に戦況が動かせるからだ。
つまり、ルイが森に仕掛けられた罠に嵌っている可能性もあるのだ。
(この際、怪我をしてもらった方が楽な気がしてきましたね……ルイが怪我をして満足に身動きが取れなくなったところを、ゆっくり追い詰めて捕まえるーーあぁ、その方が楽しい……)
ゆっくりとフォースの唇が歪な笑みをつくる。見た者全員が震え上がるような嗜虐的な笑みを浮かべ、フォースはルイが逃げたであろう門の外へと向かったのだった。
「いない……」
部屋に入る前からフォース薄々勘づいていた。それが部屋に入った瞬間、確信に変わる。
(逃げましたか……)
忌々しそうに顔を歪めたフォースは、すぐさま部屋を出ようとしてふと立ち止まった。
(窓もはめ殺し、扉の前を見張らせていた兵士は何もされていない、ならばどうやって逃げたのでしょう……)
グルリと辺りを見回すが、目立って破壊された場所はない。ふと、フォースはベッドが置かれている場所から空気が流れ込んでいるのを感じ取った。
「まさか……!」
バッとベッドの下を覗けば、近くに通気口に嵌めてあった鉄格子の残骸が放り投げてある。ぽっかりとなんの障害もなくなりただの抜け道とかした通気口がそこにはあった。
(っ! 忘れていました。ルイは普通の女とは違ったのでした)
そもそも、ここに代々閉じ込められてきたのは非力な女達だった。だが、ルイはフォースとも渡り合う腕の持ち主である。
(しかし、私ですらこのような狭い場所にある鉄を切ることは無理ですね……)
この通気口から庭に出るには、フォースでは狭すぎる。しょうがなしに、フォースは外から回って庭に出た。しばらく歩くと、ルイに着せていた夜着の端が建物の死角部分から覗いている。
「服を脱いで……? いや、流石にそれはあり得ません」
だとすると、巡回中の兵士から拝借したのか。そう思いながら、夜着の端が見える場所まで行けば、案の定ルイにのされたであろう兵士が夜着を着せられて寝かされていた。
「兵士はいない方が良かったかもしれませんねぇ」
見るに耐えない姿を晒した兵士を哀れに思いながら、フォースは確信する。
(ルイはすでに、この砦を脱出しているでしょう。追手をかけたいですが、ルイならば難なく倒してしまいそうですねぇ)
ふむ、と考え込んだフォースはまだ余裕の表情だ。
何故なら、ここから近くの街までは馬で1日ほどかかる場所にあるからだ。ルイならば目立つ道を避けて森へ入るだろうとフォースは予想する。
(森は私が探しましょうか。道の方は、暗部の者に探させましょう)
森には敵が来た時に備えて沢山の罠が仕掛けてある。それも致命傷にならないように工夫された罠が。戦いでは、捕虜を取った方が有利に戦況が動かせるからだ。
つまり、ルイが森に仕掛けられた罠に嵌っている可能性もあるのだ。
(この際、怪我をしてもらった方が楽な気がしてきましたね……ルイが怪我をして満足に身動きが取れなくなったところを、ゆっくり追い詰めて捕まえるーーあぁ、その方が楽しい……)
ゆっくりとフォースの唇が歪な笑みをつくる。見た者全員が震え上がるような嗜虐的な笑みを浮かべ、フォースはルイが逃げたであろう門の外へと向かったのだった。
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