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本編
ルベリオス
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助けに来た時、貴族令嬢のはずなのに、泥まみれになっていることには驚いた。
しかし、自分の腕の中にいる愛しい番が頬を染めているという嬉しい出来事にルベリオスは歓喜していた。
「……好きです」
やっとか。知らず知らずのうちに、ルベリオスは笑みを浮かべていた。
やっと、やっと。愛しの番が己に好意を告げてくれたのだ。もともと、アイリーンが自分に好意を持ってくれているのは知っていた。しかし、その好意を告げてくれたのは初めてだ。
やっと自覚したか。
アイリーンは忌々しい婚約者のせいで、この手のモノがトラウマになっていた。だから、心を開くまでまだ時間がかかるとルベリオスは見ていたのだが……
癪だが、虎のおかげか。
ギュッと抱きしめながら、ルベリオスは羞恥で真っ赤に染まったアイリーンを愛しげに見つめた。
だが、内心は怒りでドロドロとした感情が渦巻いていた。
よくよく見れば、首にはまるで飼い犬のような首輪と紐が付けられている。龍ならば簡単に引きちぎることが可能だが、人のアイリーンには無理だろう。それを見越してつけたのか。
趣味が悪い。我が番を侮辱するなど!
取った後も、赤い跡がくっきりと残っていた。アイリーンは気にしていないようだが、ルベリオスは気にする。
今すぐにでもアイリーンを誰も入れないような頑丈な部屋へ隠しておきたい。真綿で包んで、2人きりの世界でアイリーンと愛し合いたい。
だが、アイリーンはまるで鳥のようだ。執着しすぎると逃げ出してしまいそうな気がする。
もし、アイリーンが宝石にしか興味のない一般の貴族令嬢の様だったらどんなによかったか。アイリーンは、その手のものにはほとんど執着していなかった。
むしろ、あの美しい見た目からは想像もできないほどのアクティブな性格であり、現に虎族の逃げ出すのは難しいとされる城壁もどうやって逃げたのか分からないが逃げ切っている。
この気持ちは隠した方が良さそうだ。
優しい優しい恋人を演じる。それが、アイリーンを手に入れる1番の近道だ。
「全く、番が分からない人族には手を焼く。だが、そこが我には可愛くて仕方がなく感じてしまうのだ。不思議だと思わないか? アイリーン」
ちびっ子を追い回したせいで疲れ果てて寝たアイリーンの頭を撫でながらルベリオスは苦笑いを浮かべた。
すでにアイリーンには分からないように今まで以上の防御魔法をかけてある。それこそ、悪意のある者がアイリーンに近づけばひとたまりもないほどのものだ。
「ーーあの虎はまた来るであろうな」
そう呟いたルベリオスの前にはいつの間に現れたのか、1人の龍族がいた。
「使いを出すのだ。次、手を出したらどうなるか教えてやれ」
アイリーンの前では好青年のようなルベリオスが、今は冷たい顔をしていた。
「虎はしつこい。我が忠告したところでまた来るであろう」
そこを、叩く。そう、ルベリオスは低く低くまるで唸るように呟いたのだった。
しかし、自分の腕の中にいる愛しい番が頬を染めているという嬉しい出来事にルベリオスは歓喜していた。
「……好きです」
やっとか。知らず知らずのうちに、ルベリオスは笑みを浮かべていた。
やっと、やっと。愛しの番が己に好意を告げてくれたのだ。もともと、アイリーンが自分に好意を持ってくれているのは知っていた。しかし、その好意を告げてくれたのは初めてだ。
やっと自覚したか。
アイリーンは忌々しい婚約者のせいで、この手のモノがトラウマになっていた。だから、心を開くまでまだ時間がかかるとルベリオスは見ていたのだが……
癪だが、虎のおかげか。
ギュッと抱きしめながら、ルベリオスは羞恥で真っ赤に染まったアイリーンを愛しげに見つめた。
だが、内心は怒りでドロドロとした感情が渦巻いていた。
よくよく見れば、首にはまるで飼い犬のような首輪と紐が付けられている。龍ならば簡単に引きちぎることが可能だが、人のアイリーンには無理だろう。それを見越してつけたのか。
趣味が悪い。我が番を侮辱するなど!
取った後も、赤い跡がくっきりと残っていた。アイリーンは気にしていないようだが、ルベリオスは気にする。
今すぐにでもアイリーンを誰も入れないような頑丈な部屋へ隠しておきたい。真綿で包んで、2人きりの世界でアイリーンと愛し合いたい。
だが、アイリーンはまるで鳥のようだ。執着しすぎると逃げ出してしまいそうな気がする。
もし、アイリーンが宝石にしか興味のない一般の貴族令嬢の様だったらどんなによかったか。アイリーンは、その手のものにはほとんど執着していなかった。
むしろ、あの美しい見た目からは想像もできないほどのアクティブな性格であり、現に虎族の逃げ出すのは難しいとされる城壁もどうやって逃げたのか分からないが逃げ切っている。
この気持ちは隠した方が良さそうだ。
優しい優しい恋人を演じる。それが、アイリーンを手に入れる1番の近道だ。
「全く、番が分からない人族には手を焼く。だが、そこが我には可愛くて仕方がなく感じてしまうのだ。不思議だと思わないか? アイリーン」
ちびっ子を追い回したせいで疲れ果てて寝たアイリーンの頭を撫でながらルベリオスは苦笑いを浮かべた。
すでにアイリーンには分からないように今まで以上の防御魔法をかけてある。それこそ、悪意のある者がアイリーンに近づけばひとたまりもないほどのものだ。
「ーーあの虎はまた来るであろうな」
そう呟いたルベリオスの前にはいつの間に現れたのか、1人の龍族がいた。
「使いを出すのだ。次、手を出したらどうなるか教えてやれ」
アイリーンの前では好青年のようなルベリオスが、今は冷たい顔をしていた。
「虎はしつこい。我が忠告したところでまた来るであろう」
そこを、叩く。そう、ルベリオスは低く低くまるで唸るように呟いたのだった。
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