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本編
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※今更ですが、アイリーンの出身国はシチリアです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん?」
「⁇ ユーベルト様どういたしました?」
「いや、アイリーンの匂いがした。だが、見た感じ周りには羊族しかいないからな。多分、勘違いだろう。それに、アイリーンは宿にいるはずだ」
っぁぶねぇ!
そう言えば、臭いでもバレるんだった。
課金を終え、店を出た瞬間見覚えのある2人が視界の隅に映った。距離があるから大丈夫ーーと、思っていたらあの会話だ。もはや鼻が効くどころじゃない。普通に怖いね。
早くこの街を出ないといけない。
「すみません、シチリアへ行く馬車はありますか?」
「ふぅーん、いい男だね」
「はは、ありがとうございます」
声をかけた女の人は、サバサバとしたカッコいい女性だった。
「ちなみにシチリアへ行く馬車は今日はない。早くシチリアへ向かいたいなら明日だ」
マジかぁ。これはいよいよ本格的にやばい。
「もしかして宿がないのかい?」
「ええと……」
宿がないっていうか、逃げ出したとは言えない。気まずくて目を逸らした私に、ポンと女の人が手を打った。
「そうだ。私のところにくるかい?」
「え? いいんですか?」
一二もなく飛びついた私を一体誰が責められようか、いや、責められまい。……出ました。久しぶりの反語形でございます。
「私の名前はルリだ。よろしく」
「ルリさん。私の名前は……」
待てよ、ここでアイリーンと名乗ってユーベルト様が探した時にうっかり、なんてこともなくもない。
「ーー私の名前はリンです」
「こちらと同じ響きの名前だね」
ーーーーだって前世の名前ですから。
「じゃあリン。こっちだよ」
「ありがとうございます」
案内されるがままに、来たのは煌びやかなお城。
アレ? 待てよ? アレ?
「ここだよ」
「ちなみにルリさんのご職業は?」
「王女だ」
「でぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「あははは、ひどい悲鳴だね。今までの中で1番ひどい悲鳴だよ」
「な、な、なんで? だって、普通にいましたよね?」
「いたさ。変な奴がいないように見張る仕事だよ」
それって普通、兵士の人とか、そう言った役職の人がやるのでは?
「ーーあ」
待って、私、怪しい人で捕まるかも。ルリ様って多分、私が普通に怪しかったから城に連れてきたんじゃ……
「ルリ様、私、女です!!!!」
「はぁ!?」
怪しい上に性別偽っていましたなんて事になったらーー隠すのもいいけど、取り調べ受けてバレた時の方が怖い。
「どういうことだい?」
「ひえ!?」
こわぁい顔をしたルリ様に誰が逆らえようか、いや、誰も逆らえまい。ワァスゴイ。今日は反語デーよ。
「えーー、かくかくしかじか酷い目に遭いまして……」
ルリ様の圧に負けて、私は話しました。ただ、自分が龍の番というのは言っていない。ルリ様を信用していないわけじゃないけど、流石にコレを言うのは怖いから。前科があるからね。
「ははぁ、なるほど。つまり、リンは龍の番だね?」
「え"!?」
秒でバレました。
「今ね、虎族の王が来てるって知らせがあったんだ。大方リンの事だろう?」
「アーー、シツレイシマシタ」
クルリと踵を返しかけた私の襟首をムンズと掴むルリ様。
「まぁまちな。私たちは龍族の怒りを買うような馬鹿じゃない。虎族ってのはなんていうか、なんであんなにバカなのか……」
はぁーと額に手を当てて呻くルリ様にズルズルとお城の中に引き摺られて、私はなすすべもなく首を掴まれた子猫状態でついていった。いや、正確には連れて行かれたんだけど。
「ほら、この子だろう」
「あぁ、助かる」
豪華な部屋まで連れて行かれた時には、終わったと思ったがそれは違った。
「ーー?」
「アイリーン」
「るべりおす様?」
目を開けた時に飛び込んできたのは世界一大好きな人の顔。
「アイリーン、会いたかったぞ」
「全く、王の番ってのも大変だねぇ。ほら、行きな」
「ルベリオス様ぁーーーー!!!!」
ポンと背中を押されると、私の足は自然に走り出しルベリオス様に飛びついていた。
「よく耐えたな」
「術? をかけられていたんですけど、何故か解けて……」
「「術?」」
訝しげにする2人に、私は術について詳しく説明した。どんどん顔が険しくなるルベリオス様。多分、この話はとても重要なことだったんだと思う。
「だからか……」
その後、ルベリオス様は何かを確信した様子でルリ様と頷き合っていた。
「アイリーン、少し席を外させてくれぬか」
「分かりました」
「助かる」
立ち上がった2人。
「アイリーン、良い子にしておくのだぞ?」
「はい」
チュッと口付けられたのは唇。ユーベルト様にされた時のようなゾワゾワはなく、とてもぽかぽかとした気持ちになった。
最後にギュッと私を抱きしめて、ルベリオス様はルリ様と共に出て行った。
ところでさ。さっき、"王の番"って言わなかった? あれ、ルベリオス様って王なの? ねぇ、マジで?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん?」
「⁇ ユーベルト様どういたしました?」
「いや、アイリーンの匂いがした。だが、見た感じ周りには羊族しかいないからな。多分、勘違いだろう。それに、アイリーンは宿にいるはずだ」
っぁぶねぇ!
そう言えば、臭いでもバレるんだった。
課金を終え、店を出た瞬間見覚えのある2人が視界の隅に映った。距離があるから大丈夫ーーと、思っていたらあの会話だ。もはや鼻が効くどころじゃない。普通に怖いね。
早くこの街を出ないといけない。
「すみません、シチリアへ行く馬車はありますか?」
「ふぅーん、いい男だね」
「はは、ありがとうございます」
声をかけた女の人は、サバサバとしたカッコいい女性だった。
「ちなみにシチリアへ行く馬車は今日はない。早くシチリアへ向かいたいなら明日だ」
マジかぁ。これはいよいよ本格的にやばい。
「もしかして宿がないのかい?」
「ええと……」
宿がないっていうか、逃げ出したとは言えない。気まずくて目を逸らした私に、ポンと女の人が手を打った。
「そうだ。私のところにくるかい?」
「え? いいんですか?」
一二もなく飛びついた私を一体誰が責められようか、いや、責められまい。……出ました。久しぶりの反語形でございます。
「私の名前はルリだ。よろしく」
「ルリさん。私の名前は……」
待てよ、ここでアイリーンと名乗ってユーベルト様が探した時にうっかり、なんてこともなくもない。
「ーー私の名前はリンです」
「こちらと同じ響きの名前だね」
ーーーーだって前世の名前ですから。
「じゃあリン。こっちだよ」
「ありがとうございます」
案内されるがままに、来たのは煌びやかなお城。
アレ? 待てよ? アレ?
「ここだよ」
「ちなみにルリさんのご職業は?」
「王女だ」
「でぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「あははは、ひどい悲鳴だね。今までの中で1番ひどい悲鳴だよ」
「な、な、なんで? だって、普通にいましたよね?」
「いたさ。変な奴がいないように見張る仕事だよ」
それって普通、兵士の人とか、そう言った役職の人がやるのでは?
「ーーあ」
待って、私、怪しい人で捕まるかも。ルリ様って多分、私が普通に怪しかったから城に連れてきたんじゃ……
「ルリ様、私、女です!!!!」
「はぁ!?」
怪しい上に性別偽っていましたなんて事になったらーー隠すのもいいけど、取り調べ受けてバレた時の方が怖い。
「どういうことだい?」
「ひえ!?」
こわぁい顔をしたルリ様に誰が逆らえようか、いや、誰も逆らえまい。ワァスゴイ。今日は反語デーよ。
「えーー、かくかくしかじか酷い目に遭いまして……」
ルリ様の圧に負けて、私は話しました。ただ、自分が龍の番というのは言っていない。ルリ様を信用していないわけじゃないけど、流石にコレを言うのは怖いから。前科があるからね。
「ははぁ、なるほど。つまり、リンは龍の番だね?」
「え"!?」
秒でバレました。
「今ね、虎族の王が来てるって知らせがあったんだ。大方リンの事だろう?」
「アーー、シツレイシマシタ」
クルリと踵を返しかけた私の襟首をムンズと掴むルリ様。
「まぁまちな。私たちは龍族の怒りを買うような馬鹿じゃない。虎族ってのはなんていうか、なんであんなにバカなのか……」
はぁーと額に手を当てて呻くルリ様にズルズルとお城の中に引き摺られて、私はなすすべもなく首を掴まれた子猫状態でついていった。いや、正確には連れて行かれたんだけど。
「ほら、この子だろう」
「あぁ、助かる」
豪華な部屋まで連れて行かれた時には、終わったと思ったがそれは違った。
「ーー?」
「アイリーン」
「るべりおす様?」
目を開けた時に飛び込んできたのは世界一大好きな人の顔。
「アイリーン、会いたかったぞ」
「全く、王の番ってのも大変だねぇ。ほら、行きな」
「ルベリオス様ぁーーーー!!!!」
ポンと背中を押されると、私の足は自然に走り出しルベリオス様に飛びついていた。
「よく耐えたな」
「術? をかけられていたんですけど、何故か解けて……」
「「術?」」
訝しげにする2人に、私は術について詳しく説明した。どんどん顔が険しくなるルベリオス様。多分、この話はとても重要なことだったんだと思う。
「だからか……」
その後、ルベリオス様は何かを確信した様子でルリ様と頷き合っていた。
「アイリーン、少し席を外させてくれぬか」
「分かりました」
「助かる」
立ち上がった2人。
「アイリーン、良い子にしておくのだぞ?」
「はい」
チュッと口付けられたのは唇。ユーベルト様にされた時のようなゾワゾワはなく、とてもぽかぽかとした気持ちになった。
最後にギュッと私を抱きしめて、ルベリオス様はルリ様と共に出て行った。
ところでさ。さっき、"王の番"って言わなかった? あれ、ルベリオス様って王なの? ねぇ、マジで?
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