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本編

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「え? ドレスの新調?」

「はい、そろそろリメイクするのも限界がありまして……」

 いつの間に情報が渡ったのか。お母様は私とルベリオス様が想いを通わせた途端、早く戻ってこいと急かすようになっていた。

 痩せたことも分かっているらしい。今回のドレス選びも、多分夜会のためのものだろう。

「ルベリオス様もよければ」

「うむ、我も一緒に出てほしいとの通達があった」

 いつの間に!? 

 ギョッとする私はサッと使用人一同を見れば、サッとそらされる視線。

 そーかそーか、君たちか!

「アイリーン、お揃いはどうだ?」

「それは、とてもいいと思います!」
 
 スーツ姿のルベリオス様も素敵だろうな。

 貴族ということでオーダーメイドが当たり前。なので、生地を決めたり型を決めたりデザインを決めたり等、結構大変だがルベリオス様とお揃いなら頑張れる気がした。

「今日は布地を決めましょう。ちょうど行商が来ているようですから、お呼びしました」

 へぇ、行商ってここにもあるんだ。

「失礼しますぞ」

 入って来たのは、恰幅の良いおじ様。

「ふむ、お二人に合う生地ですかな?」

「ええ、お願いします」

 さすが商人というべきか、おじ様のチョイスはどれも良く予想以上の買い物をしてしまった。

「では、これで」

「はい、ありがとうございました」

 そう言っておじ様が出ていった後、使用人のみんなも手続きがあるため部屋を出ていき、2人きりになる。

 終始フードを被っていたおじ様だったけど、チラリと見えた髪は白っぽくて、なんというか虎族を思い出した。

 でもまぁ、瞳は黒だから違うかな。

「アイリーン、どうした?」

「ん? いや、なんでもない。ちょっとあの行商の人が虎族の人の髪色と似てたから……」

「なんだと?」

「いや、多分白髪だと思うよ?」

 途端に厳しくなる目に首をすくめた。

「まぁ、いい。虎族は執念深いからな。気をつけるに越した事はない」

 そうか。確かに。音もなく近づいて来たことを思えば、用心したほうがいいのかもしれない。だけど、今はルベリオス様が私のそばをピッタリとくっついて離れないから、大丈夫だと思うなぁ。

「ルベリオス様、そんなにくっついていて暑くないの?」

「まったく」

 そっと指に絡めた長い黒髪はするりと滑ってあっという間に私の指をすり抜けた。

「髪がサラサラなのは羨ましいな」

「そなたも綺麗な髪だぞ」

 うん、でもルベリオス様の髪には敵わないヨ。ルベリオス様の目が私の目を捕らえる。いい感じの雰囲気の時に、それは起きた。

 少しあいたドアから聞こえるヒソヒソ声。

「おい、押すなって!」

「いやよ、わたしたちが先に見つけたんだから!」

「あ、バカっ!」

「うわぁぁぁ!!!!」
 
 …………ちびっ子ぉぉぉぉぉぉお!!!!

「「「「「「えへ?」」」」」」

「アイリーン?」

「あなた達、1週間おやつ抜きよ!」

「「「「「「えええええ!!!!」」」」」」

 ぶーぶーと文句を言うちびっ子には悪いが、今回は許せん!
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