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本編

ローン

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 アイリーンが居なくなって、ローンはとても快適な日々を送っていた。
 
 あの家は恐ろしいと、親や親戚に言われたが、アイリーンの両親はいかにも善良ですと言った風貌の夫婦だった。

「ははは、慰謝料に金貨1000枚はすごいぞ」

「うわぁ! ローン様は、今日は美味しいもの食べましょうね!」

「そうだな」

 何回目だろう。アイリーンのせいにして、慰謝料を貰いに行けば侯爵は申しわけなさそうに謝り、こちらが提示する額以上の金をくれる。

「お嬢様にはなんの取り柄もないと思いましたが、素敵なご両親がいらっしゃいましたね!」

 ニコニコと横で可愛らしい笑みを浮かべるのは、アイリーンの侍女であったジュリ。

 アイリーンとは違い、小さく可愛らしい。小動物のような出立ちの彼女は抱き心地が大変よかった。

 それに、性格も。ローンが困っていれば、すぐに解決策を見出し、アドバイスしてくれる。しかし、でしゃばるのではなく、あくまでローンを立ててくれるので大変お気に入りなのだ。

「ジュリ、彼方の宿に寄ってからでもいいかい?」

「え!?」

 指差したのは、いつも高すぎて行けない高級宿。ポッとジュリの頬が赤くなる。

「もうっ! ローン様はエッチですね」

「ははは、そういうジュリも乗り気じゃないか」

「ふーん、女の子にそんなこと言うなんて。もう、早く行きましょう」

 グイグイと引っ張られる。ジュリを見れば、耳が赤く染まっていた。

 うん、やっぱりアイリーンよりこちらを選んでおいてよかった。アイリーンと結婚したら、ジュリのための家を建てようか。

 ローンはまだみぬ幸せな未来に懸想しながら、宿の中へと消えていった。
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