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「アイリーンが龍族の番?」
「はい」
「まぁ、まぁまぁまあ! それで、アイリーンは痩せたのかしら?」
アイリーンの母であるユリアーナの言葉に、その場にいた全員が「え?」という顔をする。
「ユリアーナ、大事なのはそこじゃないだろう? アイリーンが龍族の番である事はどう思っているんだい?」
慌てて、父であるダリルが問いかけるがユリアーナは笑顔で言い放った。
「だって、婚約を破棄しないことには始まらないでしょう?」
痩せてこいと言ったのに、痩せてなかったら私たちの苦労が水の泡じゃない、と。
「確かにそうだな」
ダリルも頷く。知らせに来た使者は、「え? え?」と困惑していたが、2人は気づかず次の計画について話し合っていた。
「アイリーンの今の婚約者って……ローンよねぇ?」
「あぁ。先日も我が家に来て慰謝料を請求しに来たぞ」
「まぁ、なんの?」
「確か、自分はアイリーンに無理矢理婚約させられているのに、一方的に破棄されそうになって傷心だ! とか言ってたねぇ」
思い出すようにセリフを口にするダリルに、ユリアーナが「あら!」と上品に口に手を当てて驚く仕草をする。
「それじゃあ、アイリーンが龍族の番だったって知ったらもっと傷つくでしょうねぇ」
「あぁ、そうだな」
この時点で、使者はこの夫婦が何をしようとしているのか察した。
「そういえば、アイリーンは池に落とされたとも言っていたわ」
「もしかすると、その貴族の方々も番だと知れば傷心になるかもしれないねぇ」
「あらぁ~~」
「「それなら、知らせない方がいいね」わよねぇ」
あ、この2人。情報を遮断するつもりだ。使者は察した。そして、多分他の者達には流すのだろう。貴族達にとってどれだけ新しく新鮮な情報を手に入れられるかが社交界を握る鍵となる。それを知らない貴族達は……そこまで考えて使者はブルリと身を震わせた。
「ねぇ、このリストにある方々にはこの情報が入らないようにしてちょうだい」
「「「「「「はっ」」」」」」
ユリアーナの言葉に、いつのまにか現れた黒い服を纏った者たちが頷き消えた。消えた
「引き続き報告を頼むわ。あぁ、領地も何匹かネズミがいるみたいねぇ、あなた?」
「あぁ、だからそれの排除を頼むよ。間違っても情報が漏れる事はないように」
「は、はい!」
こうして、秘密の報告は終わったのだった。
余談だが、アイリーンの家は代々諜報活動を行なっている家系。王家に忠誠を誓い、貴族達の動向を確認する。アイリーンの受けていたいじめを知らないはずがなかったのだ。では、何故止めなかったのか?
「ほほほ、何故かしらねぇ?」
勇気のある使者の1人がユリアーナ様に聞いたらしいが、笑みで返されたらしい。
「はい」
「まぁ、まぁまぁまあ! それで、アイリーンは痩せたのかしら?」
アイリーンの母であるユリアーナの言葉に、その場にいた全員が「え?」という顔をする。
「ユリアーナ、大事なのはそこじゃないだろう? アイリーンが龍族の番である事はどう思っているんだい?」
慌てて、父であるダリルが問いかけるがユリアーナは笑顔で言い放った。
「だって、婚約を破棄しないことには始まらないでしょう?」
痩せてこいと言ったのに、痩せてなかったら私たちの苦労が水の泡じゃない、と。
「確かにそうだな」
ダリルも頷く。知らせに来た使者は、「え? え?」と困惑していたが、2人は気づかず次の計画について話し合っていた。
「アイリーンの今の婚約者って……ローンよねぇ?」
「あぁ。先日も我が家に来て慰謝料を請求しに来たぞ」
「まぁ、なんの?」
「確か、自分はアイリーンに無理矢理婚約させられているのに、一方的に破棄されそうになって傷心だ! とか言ってたねぇ」
思い出すようにセリフを口にするダリルに、ユリアーナが「あら!」と上品に口に手を当てて驚く仕草をする。
「それじゃあ、アイリーンが龍族の番だったって知ったらもっと傷つくでしょうねぇ」
「あぁ、そうだな」
この時点で、使者はこの夫婦が何をしようとしているのか察した。
「そういえば、アイリーンは池に落とされたとも言っていたわ」
「もしかすると、その貴族の方々も番だと知れば傷心になるかもしれないねぇ」
「あらぁ~~」
「「それなら、知らせない方がいいね」わよねぇ」
あ、この2人。情報を遮断するつもりだ。使者は察した。そして、多分他の者達には流すのだろう。貴族達にとってどれだけ新しく新鮮な情報を手に入れられるかが社交界を握る鍵となる。それを知らない貴族達は……そこまで考えて使者はブルリと身を震わせた。
「ねぇ、このリストにある方々にはこの情報が入らないようにしてちょうだい」
「「「「「「はっ」」」」」」
ユリアーナの言葉に、いつのまにか現れた黒い服を纏った者たちが頷き消えた。消えた
「引き続き報告を頼むわ。あぁ、領地も何匹かネズミがいるみたいねぇ、あなた?」
「あぁ、だからそれの排除を頼むよ。間違っても情報が漏れる事はないように」
「は、はい!」
こうして、秘密の報告は終わったのだった。
余談だが、アイリーンの家は代々諜報活動を行なっている家系。王家に忠誠を誓い、貴族達の動向を確認する。アイリーンの受けていたいじめを知らないはずがなかったのだ。では、何故止めなかったのか?
「ほほほ、何故かしらねぇ?」
勇気のある使者の1人がユリアーナ様に聞いたらしいが、笑みで返されたらしい。
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