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本編
17.嗤い
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「逃げた?」
「はい……」
「もっとよく探せ。近くに隠れているはずだ」
報告に来た女官達は、皆口を揃えてトカゲの番がいないと言った。
「当てが外れたか」
賢い女と、思っていたが違ったようだ。
先程は、防衛の魔法が誤作動を起こしてしまうし、今日はついていない。
「私が直々に探そう」
まさか、この城壁を登って逃げたとは考えられない。とすれば、この宮殿内にいるはずなのだ。
「どこへ隠れた?」
虎族は嗅覚も優れている。昨日の匂いを思い出し、辿っていけば庭にある川のところで途切れていた。
「まさか……」
潜って水路から逃げたのか? だが、水路の距離はそこそこあった。人族がそんな簡単に逃げられるのか?
そう思ったが、ユーベルトは念のため調べさせることにした。
あの女ならやりかねない。
「おい、この水路の向こう側を調査しろ」
「はっ!」
しばらくして報告がきたが、その内容は笑いしか出ないものだった。
「つまり、水路から逃げたと? 匂い消しのつもりか」
水路の近くに流れる川のヘリに人間の足跡と思われるものが続いていたらしい。そして、それは川に続き消えていったと、報告があった。
あの水路を泳ぎきった女が川で溺れるとは思えない。
「もしや、先程の魔法の誤作動は……」
ーーーーーーーーーートカゲが来たか。
そうならば、辻褄が合う、川で途切れた足跡も全て。大方、川から離れる前に匂いを消しておこうとでも思ったのだろう。その直後に、トカゲが来たのではないか?
「ククククククク……あはははははは!!!!」
私の手から逃げるのがどうも好きなようだ。
「私の妃であるのに、他の男と浮気とはいい性格だ
な」
連れ帰ったら、名を聞き出して魂を縛り。しっかりと躾けてやろう。
煌びやかな王座に腰掛けたユーベルトは、その綺麗な見目からは想像のつかないほどの醜悪な笑みを浮かべて愉しそうに嗤ったのだった。
「はい……」
「もっとよく探せ。近くに隠れているはずだ」
報告に来た女官達は、皆口を揃えてトカゲの番がいないと言った。
「当てが外れたか」
賢い女と、思っていたが違ったようだ。
先程は、防衛の魔法が誤作動を起こしてしまうし、今日はついていない。
「私が直々に探そう」
まさか、この城壁を登って逃げたとは考えられない。とすれば、この宮殿内にいるはずなのだ。
「どこへ隠れた?」
虎族は嗅覚も優れている。昨日の匂いを思い出し、辿っていけば庭にある川のところで途切れていた。
「まさか……」
潜って水路から逃げたのか? だが、水路の距離はそこそこあった。人族がそんな簡単に逃げられるのか?
そう思ったが、ユーベルトは念のため調べさせることにした。
あの女ならやりかねない。
「おい、この水路の向こう側を調査しろ」
「はっ!」
しばらくして報告がきたが、その内容は笑いしか出ないものだった。
「つまり、水路から逃げたと? 匂い消しのつもりか」
水路の近くに流れる川のヘリに人間の足跡と思われるものが続いていたらしい。そして、それは川に続き消えていったと、報告があった。
あの水路を泳ぎきった女が川で溺れるとは思えない。
「もしや、先程の魔法の誤作動は……」
ーーーーーーーーーートカゲが来たか。
そうならば、辻褄が合う、川で途切れた足跡も全て。大方、川から離れる前に匂いを消しておこうとでも思ったのだろう。その直後に、トカゲが来たのではないか?
「ククククククク……あはははははは!!!!」
私の手から逃げるのがどうも好きなようだ。
「私の妃であるのに、他の男と浮気とはいい性格だ
な」
連れ帰ったら、名を聞き出して魂を縛り。しっかりと躾けてやろう。
煌びやかな王座に腰掛けたユーベルトは、その綺麗な見目からは想像のつかないほどの醜悪な笑みを浮かべて愉しそうに嗤ったのだった。
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