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本編

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「ルベリオス様!!!!」

 パッと散った赤いナニカに、一瞬で私の脳内は混乱した。

 え? え? どうして? どうやって? なんで? なんでルベリオス様からアカイノガデテルノ⁇

ーーーーーーーーーーーーーーー血?

「あ、あぁ、ぁぁぁぁあ! やだ、やだ! ルベリオス様! 大丈夫ですか⁉︎ ルベリオス様!!!!」
 
 私を助けに来たから。ルベリオス様が撃たれたんだ。死んだらどうしよう。

「アイリーン、落ち着け。我は大丈夫だ、少し掠っただけ。このまま突破するぞ」

「~~~~っ」

 パニックになりかけた私をルベリオス様は先程と同じ声音で話しかけてくれた。段々と冷静になれば、周りには誰もいないことが分かる。

「多分、あれは仕掛けが作動したのだろうな」

「では、追ってきたのでは?」

「多分、違うだろう」

 よかった。

「ルベリオス様、無理しないでください」

 掠ったと言っても血が出るくらいだから痛いに決まってる。

「アイリーン、我ら龍族は人族とは違う。驚異的な治癒力が備わっている。あの擦り傷はもう既に治っているぞ」

 ルベリオス様が龍体になっている間、ずっと私がそのことを心配していたからか、屋敷について人型になったルベリオス様は私を抱きしめながらそう言った。

「え?」

 そーなの? 

「強いのですね」

「あぁ、そうだ。そういえば、アイリーンはやけに今日は素直だな? もしや、我に惚れたか?」

 エ"?

 唐突な話題変換に、ピシリと固まる私。

 じわじわと頬が熱を持っているのがわかった。

「アイリーン?」

 自分が今、おかしいのは分かっている。

「る、ルベリオス様」

 やめてください。そう言おうとした矢先だった。顔を上げた私の目に入ってきたのはルベリオス様の満面の笑み。

 私がルベリオス様のことが好きであると、確信しているような、そんな顔だった。

「い、意地悪」

「言っておくが我は今年で100歳になる」

 だから意地が悪いのはしょうがないと?

「アイリーン、我はそなたのことが大好きだぞ?」

 耳元で囁かれる低く甘い声。

 ボンッと全身が朱に染まった気がした。あぁ、もう無理だ。私はこの人が好きだ。この人に私は囚われたのか。

 そう思ったらストンと今の気持ちが心に入ってきた。

「……私も好きです」

「っ! アイリーン!!!!」

「うぐっ」

 感極まったルベリオス様の熱い胸板に押しつぶされながら、私は微笑んでいたらしい。

「あーー! アイリーンさまがすけべぇな顔してるぅーーーーーー!!!!」

 と、屋敷に遊びに来たちびっ子に言われるまで私たちは抱き合っていた。

「あ"~~、ちびっ子のお母様がたにも広まって……」

 屋敷には、最近収穫した野菜やら出来立ての牛乳やらが、どっさりと置かれている。なんでもお祝いだそうだ。

 私達のことが筒抜けになったのは、とても恥ずかしかったがありがたくいただいた。
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