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本編

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「ん……」

 体が痛い。全身が痛い。何故? どうして?

 まるで、野外活動でテントを張って寝た時みたくギシギシとなる体。

「あーー……そうだった」

 見渡す限り草原のだだっ広い平野。連れてこられた時に見た石造りの建物は見当たらなかった。

 どう考えても山のどこかである事は間違いない。

「お腹すいたなぁ」

 私が昨日出てきた水路がある方面には、大きな城壁があった。登ろうと思ったら大変だ。

「誰かいないかなぁ」

 あ、ダメダメ。いたらやばいじゃん。こんな所にいる人なんて大方虎族だからなぁ。

 でも、ぼっちはきつい。川を泳ごうにも、この荒々しい水の中に入るとひとたまりもないだろうし……

「ワンチャンその先には滝が……なんてこともあり得る」

 わたしにも翼が有ればーーいや、なくていいな。空を飛ぶなんて恐ろしい事はぜっっっったいしたくない。

 そいやあ、昨日も投げられて顔面からダイブしたけど、ユーベルトめ、許さんぞ。

 もはや、アイツには様など付けん!!!! 

 あははは、ルベリオス様だったらこんな口調かもしれないな。

 川に沿って歩き始めて約1時間がたった気がする。もはや、大きかった城壁は目を凝らさないと見えないぐらいになっていた。

「もっかい水に浸かっとくか」

 念のために臭いを消して、それから川から離れよう。

 そう思って、そっと足を入れた時だった。

「アイリーン!!!!」

「は???」

 気づけば、地上が遠い。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」

「無事だったか!」

 今! この瞬間に‼︎ 無事じゃなくなった!!!!

 空を見上げ、覚悟を決めてチラリと手元を見れば見覚えのある色合いの鱗。

「ルベリオスさま?」

「そうだ。怪我はないか? 大丈夫か?」

「ーーっ! はいっ!」

 現在進行形で怖いのだけれど、安心するという不思議な感情。

「来てくれたのですか?」

「あぁ、遅くなってすまなかった。コイツらの国は隠れていてな。見つけるのに時間がかかった」

 それでも、攫われて24時間以内にきましたよ! 全然、時間かかってない。

「っ! ルベリオス様、早く逃げてください!!!! 殺されます!」

 サッと蘇るユーベルトの言葉。龍族の番を奪うのに一度の失敗したことがないと言っていた。つまり、ルベリオス様も危ないという事。

「うむ、分かっている。言っておくが龍族はそこまで弱くない。だから安心しろ」

「~~っわかりました。助けてくださって、ありがとうございます……」

 泣かぬように、食いしばった意味もなく、目が熱くなりポタポタと目から雫が滑り落ちてくる。

「怖かったんです……」

「すまなかった」

 落ち着かせるように、低い声でゆっくりと話しかけられると余計に安心感がまして涙も止まらなくなった。しまいにはヒックヒックとしゃくり上げ始めてしまう私。もう、恥ずかしくて顔も上げられなかった。

「もう少しで、虎族の領域からでる」

「はい」

 やっとだ。そう、安心した時だった。ドンッと何かが爆発するような音がして、ルベリオス様の体が傾いだのはーー



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