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本編
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「「「「「「おおお~~」」」」」」
私が女官の人に連れられて宴の会場へ入ると、無数の目線がこちらに向けられた。奥に座っているのはユーベルト様か。
「ああ、来たか」
首に通された紐がさながらリードの如く私の自由を拘束する。
「これ、外してもらえませんか」
「ダメだ。こちらに来い」
「ぐっ」
グイッと遠慮なしで引っ張られたことで、身体が傾き不本意ながらユーベルト様の方へ倒れ込んでしまった。
「着飾ればもっとよくなったじゃないか」
「ソウデスカ」
満足げなユーベルト様とは対照的に私の中でまたもやイライラが募っていく。ぁぁ、嫌だ。
「おい」
「は?」
フンッとせめてもの抵抗で顔を背けていたら、首の紐を引かれた。なんだと思ってみれ見れば、ユーベルト様の手が差し出されている。
なんだと思ってユーベルト様を見れば、顎で促される。
「は?」
「はぁ、接吻だ」
「嫌ですよ」
普通に嫌よ。首輪みたいなのでも頭にきてるのに。ツンっとそっぽを向いた私の耳に、周囲が騒めくのが聞こえた。
「そろそろ素直にならないと、私も何をするか分からないぞ?」
そっと耳元で囁かれた言葉は、剣呑さを孕んでいる。これ以上は、命の危険もありそうだった。
渋々。渋々、ユーベルト様の手の甲に口付ける。
わあああああーーーー!!!! と盛大な歓声と拍手が周囲から鳴り響いた。
「トカゲの番を服従させるとは、ユーベルト様は素晴らしいですなぁ」
誰が服従だって?
「いやぁ、さすがはユーベルト様」
なーにがユーベルト様だ!
「今頃トカゲは焦っているでしょうね」
口々に好き勝手いう周囲の人々。とても、美しい姿をしているのに、何故かわたしには醜くうつった。
「いや、しかし、上玉ですなぁ。この金髪の髪など、美しい……」
スルリと年配の男性に髪を撫でられる。ゾワゾワと全身に鳥肌が立った。
かんっぜんに見せ物じゃないの!!!!
「この獲物は私のだ。渡さんぞ」
「ははは、そうでしょうな」
愛想笑いを浮かべて去っていく男性をフンッと鼻で笑った後、ユーベルト様は何を思ったのか手元の杯をこちらに向けた。
「ほら、お前も黙ってないで酒を飲むがいい」
グッと差し出される杯。
「まだ私飲めないので」
「そう言わず、飲め」
いや、未成年はお酒飲んじゃダメなのよ。
「無理です‼︎ 未成年ーーうっ!? んぐぅ!?」
「お、飲んだか?」
コイツ、無理矢理飲ませた!!!!
口の中に流れ込んでくる苦い液体。ゴホゴホと咽せるのが治ると、また酒を流し込まれた。
「も、やめ……っ!」
「ほら、飲め」
パワハラだ!!!! 未成年だって! お酒は体に良くないのよ。太る元だから。
「嫌らの~~!!!!」
「ははは、酔いが回ったか?」
どれだけ飲まされたか。呂律がおかしくなり出した頃、ユーベルト様はご機嫌な様子で私を抱き上げた。
「ひっ!?」
酔いで、グラグラと揺れる視界に、抱き上げられ高くなる視界。最悪なコンディションに、恐怖に駆られて近くにある物体にしがみつく。しかし、それはユーベルト様でーー
「いい子だ」
「ーーーーっ!?」
余計に最悪な事態を招くだけだった。
私が女官の人に連れられて宴の会場へ入ると、無数の目線がこちらに向けられた。奥に座っているのはユーベルト様か。
「ああ、来たか」
首に通された紐がさながらリードの如く私の自由を拘束する。
「これ、外してもらえませんか」
「ダメだ。こちらに来い」
「ぐっ」
グイッと遠慮なしで引っ張られたことで、身体が傾き不本意ながらユーベルト様の方へ倒れ込んでしまった。
「着飾ればもっとよくなったじゃないか」
「ソウデスカ」
満足げなユーベルト様とは対照的に私の中でまたもやイライラが募っていく。ぁぁ、嫌だ。
「おい」
「は?」
フンッとせめてもの抵抗で顔を背けていたら、首の紐を引かれた。なんだと思ってみれ見れば、ユーベルト様の手が差し出されている。
なんだと思ってユーベルト様を見れば、顎で促される。
「は?」
「はぁ、接吻だ」
「嫌ですよ」
普通に嫌よ。首輪みたいなのでも頭にきてるのに。ツンっとそっぽを向いた私の耳に、周囲が騒めくのが聞こえた。
「そろそろ素直にならないと、私も何をするか分からないぞ?」
そっと耳元で囁かれた言葉は、剣呑さを孕んでいる。これ以上は、命の危険もありそうだった。
渋々。渋々、ユーベルト様の手の甲に口付ける。
わあああああーーーー!!!! と盛大な歓声と拍手が周囲から鳴り響いた。
「トカゲの番を服従させるとは、ユーベルト様は素晴らしいですなぁ」
誰が服従だって?
「いやぁ、さすがはユーベルト様」
なーにがユーベルト様だ!
「今頃トカゲは焦っているでしょうね」
口々に好き勝手いう周囲の人々。とても、美しい姿をしているのに、何故かわたしには醜くうつった。
「いや、しかし、上玉ですなぁ。この金髪の髪など、美しい……」
スルリと年配の男性に髪を撫でられる。ゾワゾワと全身に鳥肌が立った。
かんっぜんに見せ物じゃないの!!!!
「この獲物は私のだ。渡さんぞ」
「ははは、そうでしょうな」
愛想笑いを浮かべて去っていく男性をフンッと鼻で笑った後、ユーベルト様は何を思ったのか手元の杯をこちらに向けた。
「ほら、お前も黙ってないで酒を飲むがいい」
グッと差し出される杯。
「まだ私飲めないので」
「そう言わず、飲め」
いや、未成年はお酒飲んじゃダメなのよ。
「無理です‼︎ 未成年ーーうっ!? んぐぅ!?」
「お、飲んだか?」
コイツ、無理矢理飲ませた!!!!
口の中に流れ込んでくる苦い液体。ゴホゴホと咽せるのが治ると、また酒を流し込まれた。
「も、やめ……っ!」
「ほら、飲め」
パワハラだ!!!! 未成年だって! お酒は体に良くないのよ。太る元だから。
「嫌らの~~!!!!」
「ははは、酔いが回ったか?」
どれだけ飲まされたか。呂律がおかしくなり出した頃、ユーベルト様はご機嫌な様子で私を抱き上げた。
「ひっ!?」
酔いで、グラグラと揺れる視界に、抱き上げられ高くなる視界。最悪なコンディションに、恐怖に駆られて近くにある物体にしがみつく。しかし、それはユーベルト様でーー
「いい子だ」
「ーーーーっ!?」
余計に最悪な事態を招くだけだった。
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