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本編

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※紛らわしい表記があります。
 アイリーンはすでに痩せています。リバウンド防止のための水泳だと再度認識していただいてから、このお話をお読みくださいm(_ _)m


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 滝まであと少し! の距離で私はいつの間にか背後にいた神様によって捕まった。

「ダイエットと言ったが、十分痩せているではないか。私は今の方が好みだな」

 腹に手を回され、俵担ぎにされた私の心境がわかる? 

「~~~~っ!?!?!?!?!?」

 視界いっぱいに広がる遠くなった地面。神様が手を離せば顔面からダイブするであろう距離。恐ろしさに声も出ず、心の中で絶叫する。

 いや、捕まえ方が怖いのよ。

「きゃぁぁぁぁぁぁあ!? は、は、はな、はな、離してぇ!!!!」

 いつかの場面の二の舞のような……

「ん? この体勢が怖いのか? 好都合だ。私から逃げたお仕置きだな。帰るまでこのままだ」

 その宣告は私にとって、激辛ラーメンにこの世に存在する香辛料全てぶち込んだのを食べろと言われるぐらい地獄だった。

「う~ん」

「なんだ? いきなり静かになった……気絶したのか⁉︎」

 伸びた私を担いだ神様の大爆笑を最後に私の意識は遥か彼方へ飛んでいった。

 しばらくして、意識が回復した私が見たのは点のようになった地上。そして、柔らかな感触。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

「ん? 起きたのか? 落ちたく無いなら動かない方がいいぞ?」

「ど、だ、だ!? 誰が喋ってるの!?」

 下を見るのが怖くて、上を向いたまま必死に叫ぶ私を誰が責められようか? いや、誰も責められまい。なんか、漢文になってきた。

「まぁ待て、後で説明してやるから」

 ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?

 グンッと上がったスピードとに、反射的に変顔になる私。不思議と風は来ないけど、私の脳裏に一つの仮定が浮かび上がっていた。

 何も、貴重な種族は龍族だけでは無い。虎族という、同様に滅多に姿を現さない種もいるのだ。この手のひらに感じるもふもふとした感触。
 まさか……虎!? 

 虎以外にある? 無いよね?

 なんでも、龍と虎は犬猿の仲らしい。伝説の中では、しょっちゅう争いをしていたようだ。

 もしかして、私、それに巻き込まれてるの? 嘘でしょう? ねぇ、誰が嘘だと言ってくれる? わたしにはまだ、あの婚約者と婚約破棄をしなければならないという最大の試練があるのよ。こんな事してたら、婚約破棄するまでにどれだけ時間がかかるか……

 ビュンビュンと周囲の雲たちが風のように流れていっている。それだけで、どれくらいの速さか分かる。そして、屋敷からどれだけ遠ざかっているかも……

「あの、帰してくれたりは……?」

「この状況ですると思うか?」

 しないよねぇ。

「まぁ、話は後だ」

 ゴウっと雲の中を突き進む。すると、目の前には、広大な土地が現れた。

 石造の建物が綺麗に並んでおり、人らしき人物たちが手を振っている。

「え、え、え?」

「ここが私の国だ」

私の国・・・

 


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