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本編
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「そなたの名は何という」
道中、そう聞かれたのでとりあえずアイリーンと名乗るとそのままアイリーン呼びが決定したらしい。
「アイリーン、そなたは何故このようなところに?」
「年頃の娘は王都にいると聞いているのだが、アイリーンは違うのか?」
「アイリーン?」
などなどなどなど! 結局、言いにくい過去の出来事を一から十まで説明する羽目になった。
「なるほど、池に落とされた先に婚約者の浮気。そなたは太っていた為、相手ができない限り婚約破棄はしないと?」
うぐっ、簡潔に纏められていていいと思うけど、傷口に塩を塗られている気分だ。もちろん粗塩ね。
「……そういう事です」
「何と! ならば、我がそなたの伴侶になってやろう!」
んん? あれ? 何でそうなるの?
「いえ、遠慮します」
「何故だ? 龍だぞ? 龍の伴侶になれるのだぞ?」
んんん? フリだよね? フリでも遠慮するけど。
なんだか怪しい方向に行き出した所で、屋敷に着いた。
「そなたーー」
「こちらです! さあ、お疲れでしょうから中へ」
失礼だが、これ以上喋っていると不味い方向に行きそうなことぐらい私にはわかる。
ポカンとする龍族の男性をさっとエスコートして応接室へと通した。
さあ、気分を切り替えて!
「龍族の方がどうして此方に来られたのですか?」
備え付けられていた椅子に腰を下ろした男性は、少し何かを考える素振りをした後、口を開いた。
「実は、伴侶を探していてな。これが見つからなければ國に帰れないのだ」
ほうほう、なるほどなるほど。ん? あれ? これいらん事に首突っ込んだんじゃ? と思ったのは後の祭り。
「だが、行幸だった。そなたがいたからな」
いやいやいやいや、そんなすぐに決めちゃまずいでしょう。龍族は寿命が長いと聞いている。生涯連れそう伴侶をそんなに簡単に決めたどんな目に遭うか。
「私如きが龍族の方に説教するのは良くないと、分かっているのですが……」
「なんだ?」
「その、安易に伴侶を決めるというのはいかがなものかと。長く連れ添うのでしょう?」
もし、性格がキツかったり、合わなかったりしたら……新婚生活なんてどころじゃない。
「っくく。ふ、くくく」
「……なにか可笑しいところでも?」
何故笑ってるんだ。
ぷるぷると我慢するように口を弾き結んでいるものの、それをすればするほど肩の揺れがひどくなっている。
「ーーーはぁ。伴侶についてはどうやら詳しく伝わってなかったようだ。我ら龍族は番というものがある。大抵は同じ龍族内で見つかるのだが、稀に他種族に番がいる龍族もいるんだ。我のようにな」
へぇ、なるほど。
「なんだ、理解してないようだな。我の番はアイリーン、そなただぞ?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?」
コノオカタハ、ナニヲ、オッシャゥテイルノデ?
「ふふふ、私の身の上話を聞いて哀れに思ってくださったのですが? それならご心配はいりません。相手ならお金を積めば誰か貴族が捕まるでしょうから」
「何を言っている、そなたが婚約者に好意がないことを確認したから我は求婚したのだ」
マジで?
「いや、だって、惚れた様子とか見えないし」
「何をいう、一目惚れだぞ」
うっそだあ! そんな仏教面で言われたって信じられないもんね‼︎
「……仮にですよ、仮にあなたが私に惚れたと致しましょう。ですが、私はあなたに惚れていません!!!!」
「そうか? なら何故我を見て顔を赤くする?」
こんなイケメンに、面と向かって惚れたなんて言われて顔を赤くしない人はいないでしょう!?
「……生理現象です」
「そうか、人族は興味深いな」
……なんかもうやだぁ! 珍獣みたいに私のこと見てくる。
「そなたは我に惚れたら伴侶になってくれるのだな?」
「はあ、まあ、惚れたなら」
「ならば、まずは我の名を呼んではくれぬか」
あ、そう言えば、まだこの男性の名前を知らない。
「お名前を伺っても?」
「ルベリオスだ」
「分かりました。では、ルベリオス様と」
「うむ、いいだろう」
ルベリオス様は至極ご満悦の様子で、頷いていた。お気に召したのならよかった。
「もう,夜遅いですがルベリオス様,此方に泊まっていきますか?」
「ん? あぁ、助かる」
そのままの流れで客室へと案内し、私の1日は終わった。
道中、そう聞かれたのでとりあえずアイリーンと名乗るとそのままアイリーン呼びが決定したらしい。
「アイリーン、そなたは何故このようなところに?」
「年頃の娘は王都にいると聞いているのだが、アイリーンは違うのか?」
「アイリーン?」
などなどなどなど! 結局、言いにくい過去の出来事を一から十まで説明する羽目になった。
「なるほど、池に落とされた先に婚約者の浮気。そなたは太っていた為、相手ができない限り婚約破棄はしないと?」
うぐっ、簡潔に纏められていていいと思うけど、傷口に塩を塗られている気分だ。もちろん粗塩ね。
「……そういう事です」
「何と! ならば、我がそなたの伴侶になってやろう!」
んん? あれ? 何でそうなるの?
「いえ、遠慮します」
「何故だ? 龍だぞ? 龍の伴侶になれるのだぞ?」
んんん? フリだよね? フリでも遠慮するけど。
なんだか怪しい方向に行き出した所で、屋敷に着いた。
「そなたーー」
「こちらです! さあ、お疲れでしょうから中へ」
失礼だが、これ以上喋っていると不味い方向に行きそうなことぐらい私にはわかる。
ポカンとする龍族の男性をさっとエスコートして応接室へと通した。
さあ、気分を切り替えて!
「龍族の方がどうして此方に来られたのですか?」
備え付けられていた椅子に腰を下ろした男性は、少し何かを考える素振りをした後、口を開いた。
「実は、伴侶を探していてな。これが見つからなければ國に帰れないのだ」
ほうほう、なるほどなるほど。ん? あれ? これいらん事に首突っ込んだんじゃ? と思ったのは後の祭り。
「だが、行幸だった。そなたがいたからな」
いやいやいやいや、そんなすぐに決めちゃまずいでしょう。龍族は寿命が長いと聞いている。生涯連れそう伴侶をそんなに簡単に決めたどんな目に遭うか。
「私如きが龍族の方に説教するのは良くないと、分かっているのですが……」
「なんだ?」
「その、安易に伴侶を決めるというのはいかがなものかと。長く連れ添うのでしょう?」
もし、性格がキツかったり、合わなかったりしたら……新婚生活なんてどころじゃない。
「っくく。ふ、くくく」
「……なにか可笑しいところでも?」
何故笑ってるんだ。
ぷるぷると我慢するように口を弾き結んでいるものの、それをすればするほど肩の揺れがひどくなっている。
「ーーーはぁ。伴侶についてはどうやら詳しく伝わってなかったようだ。我ら龍族は番というものがある。大抵は同じ龍族内で見つかるのだが、稀に他種族に番がいる龍族もいるんだ。我のようにな」
へぇ、なるほど。
「なんだ、理解してないようだな。我の番はアイリーン、そなただぞ?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?」
コノオカタハ、ナニヲ、オッシャゥテイルノデ?
「ふふふ、私の身の上話を聞いて哀れに思ってくださったのですが? それならご心配はいりません。相手ならお金を積めば誰か貴族が捕まるでしょうから」
「何を言っている、そなたが婚約者に好意がないことを確認したから我は求婚したのだ」
マジで?
「いや、だって、惚れた様子とか見えないし」
「何をいう、一目惚れだぞ」
うっそだあ! そんな仏教面で言われたって信じられないもんね‼︎
「……仮にですよ、仮にあなたが私に惚れたと致しましょう。ですが、私はあなたに惚れていません!!!!」
「そうか? なら何故我を見て顔を赤くする?」
こんなイケメンに、面と向かって惚れたなんて言われて顔を赤くしない人はいないでしょう!?
「……生理現象です」
「そうか、人族は興味深いな」
……なんかもうやだぁ! 珍獣みたいに私のこと見てくる。
「そなたは我に惚れたら伴侶になってくれるのだな?」
「はあ、まあ、惚れたなら」
「ならば、まずは我の名を呼んではくれぬか」
あ、そう言えば、まだこの男性の名前を知らない。
「お名前を伺っても?」
「ルベリオスだ」
「分かりました。では、ルベリオス様と」
「うむ、いいだろう」
ルベリオス様は至極ご満悦の様子で、頷いていた。お気に召したのならよかった。
「もう,夜遅いですがルベリオス様,此方に泊まっていきますか?」
「ん? あぁ、助かる」
そのままの流れで客室へと案内し、私の1日は終わった。
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