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本編
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どっぼーんっ! と盛大に池に落ちてから前世の記憶に目覚めたと言ったらみんな頭おかしいと思うよね?
でも、私はそういうケースだった。
ちなみに池に落ちた理由も、イジメのせい。
「ハハッ! 豚が池に落ちたぞ‼︎」
「お前やったな! あいつ、一応貴族だぞ? まぁ、豚だけどな!」
あははは、と私を突き落とした男とその様子を見ていた女達の楽しそうな笑い声が聞こえる。
「ごぼっ! がぼぼぼぼぼ! (クソ野郎ども! 覚えとけよ!)」
水の中で、必死にもがいて私は対岸へ向かった。いやぁ、前世では水泳の先生だったのでね。体は重いけど、脂肪があるからか結構浮くもんだよ。それで、やっとのこと上がってみたらまぁ! なんて事!!!! よ。
「ジュリ。愛してる」
「あ~ん! ローン、ジュリも心の底から貴方のことを愛してる‼︎」
……見覚えのある声に、そっと生垣の隙間を覗いた私が悪かった。なんと、ついさっきまで私のエスコートをしていた婚約者のローンが、他の女とキスしていたのだ。
こっちはローンがいないせいで、虐めに遭い散々な目にあったというのに。一応婚約者であるから、私はローンのことを愛していたのだ。まだ記憶が戻る前の私の心が涙を流しているのを感じる。
流れてきた涙を拭おうとしたら、太い腕が生垣に当たって、ガサリと音が鳴った。
「っ!? どなた!?」
「誰だ!」
逃げるか? いや、この巨体じゃ無理だ。
「私よ」
「「あ、アイリーン!?」」
まあまあ、2人とも目を見開いちゃって。しかも、女の方は私の侍女だった。いつも、ローンへの恋心を語っていた相手である。気まずさと、羞恥と怒りとがない混ぜになりながら、私は渋々立ち上がった。
「あなた……」
「も、申し訳ございません。全てはわたくしが悪いのです‼︎ 罰するならわたくしを!」
「な、何をいう! アイリーン、ジュリに言い寄ったのは私だ。どうか責めないでやってくれ!」
「ローン様!」
「大丈夫だよ、ジュリ」
「愛しています!」
「私もだ」
見つめあってヒシッと抱き合う男女。あの~、私はこの三文芝居をどれくらい見なければならないのでしょうか?
互いに庇い合う。素晴らしい精神だ。しかしだよ、1番の被害者はこの私だ。
「あの、2人は愛し合っているんですか?」
「あぁ、そうだ」
「はい」
首を縦にふる2人。え、じゃあ、私はどうなるの?
「……では、ローン様との婚約は無かったことにいたしますね」
「なっ!? それはダメだ!」
「お嬢様! それはやめてください! ローン様は悪くないのですから!」
「いや、悪いのは私だが婚約破棄するほどでもないだろう? 大体、この婚約は恋愛など皆無のはず。契約じゃないか!」
いえ、その契約も私がローン様に惚れて承諾したもの。じっさいは、なんの利益もないうちの家としては損な契約なんです。必死に言い募るローン様に今までの理想像が剥がれ落ち、ボロボロと崩れていく。
「いえ、我が家は恋愛婚を重要視していますので、あなたは私に最初に会った時に惚れたと言ってくださいましたから」
「え! ローン様?」
あれ? なんでそこで女の方が驚くの? と思ったらローン様が慌てて女に弁解するかのように捲し立ててきた。
「はっ、冗談はよしてくれ。そんなこと一度も言ったことはない。むしろ、こんな豚のような女と結婚するなんて褒めて欲しいと思ったぐらいさ。私には、ジュリ。貴女だけだ」
「ローン様」
ふぅたぁりぃはぁ~みぃつぅめぇあぁうぅ~
っだぁぁぁーーーーー‼︎ もう、見てられない!
「婚約は破棄させていただきます」
「あぁ? そんな図体の女に次の相手ができるわけないだろ? まぁ、相手ができたなら婚約破棄を受け入れよう」
ははぁん。なるほど、よぉく分かりました。
私の本気を舐めんなよ?
でも、私はそういうケースだった。
ちなみに池に落ちた理由も、イジメのせい。
「ハハッ! 豚が池に落ちたぞ‼︎」
「お前やったな! あいつ、一応貴族だぞ? まぁ、豚だけどな!」
あははは、と私を突き落とした男とその様子を見ていた女達の楽しそうな笑い声が聞こえる。
「ごぼっ! がぼぼぼぼぼ! (クソ野郎ども! 覚えとけよ!)」
水の中で、必死にもがいて私は対岸へ向かった。いやぁ、前世では水泳の先生だったのでね。体は重いけど、脂肪があるからか結構浮くもんだよ。それで、やっとのこと上がってみたらまぁ! なんて事!!!! よ。
「ジュリ。愛してる」
「あ~ん! ローン、ジュリも心の底から貴方のことを愛してる‼︎」
……見覚えのある声に、そっと生垣の隙間を覗いた私が悪かった。なんと、ついさっきまで私のエスコートをしていた婚約者のローンが、他の女とキスしていたのだ。
こっちはローンがいないせいで、虐めに遭い散々な目にあったというのに。一応婚約者であるから、私はローンのことを愛していたのだ。まだ記憶が戻る前の私の心が涙を流しているのを感じる。
流れてきた涙を拭おうとしたら、太い腕が生垣に当たって、ガサリと音が鳴った。
「っ!? どなた!?」
「誰だ!」
逃げるか? いや、この巨体じゃ無理だ。
「私よ」
「「あ、アイリーン!?」」
まあまあ、2人とも目を見開いちゃって。しかも、女の方は私の侍女だった。いつも、ローンへの恋心を語っていた相手である。気まずさと、羞恥と怒りとがない混ぜになりながら、私は渋々立ち上がった。
「あなた……」
「も、申し訳ございません。全てはわたくしが悪いのです‼︎ 罰するならわたくしを!」
「な、何をいう! アイリーン、ジュリに言い寄ったのは私だ。どうか責めないでやってくれ!」
「ローン様!」
「大丈夫だよ、ジュリ」
「愛しています!」
「私もだ」
見つめあってヒシッと抱き合う男女。あの~、私はこの三文芝居をどれくらい見なければならないのでしょうか?
互いに庇い合う。素晴らしい精神だ。しかしだよ、1番の被害者はこの私だ。
「あの、2人は愛し合っているんですか?」
「あぁ、そうだ」
「はい」
首を縦にふる2人。え、じゃあ、私はどうなるの?
「……では、ローン様との婚約は無かったことにいたしますね」
「なっ!? それはダメだ!」
「お嬢様! それはやめてください! ローン様は悪くないのですから!」
「いや、悪いのは私だが婚約破棄するほどでもないだろう? 大体、この婚約は恋愛など皆無のはず。契約じゃないか!」
いえ、その契約も私がローン様に惚れて承諾したもの。じっさいは、なんの利益もないうちの家としては損な契約なんです。必死に言い募るローン様に今までの理想像が剥がれ落ち、ボロボロと崩れていく。
「いえ、我が家は恋愛婚を重要視していますので、あなたは私に最初に会った時に惚れたと言ってくださいましたから」
「え! ローン様?」
あれ? なんでそこで女の方が驚くの? と思ったらローン様が慌てて女に弁解するかのように捲し立ててきた。
「はっ、冗談はよしてくれ。そんなこと一度も言ったことはない。むしろ、こんな豚のような女と結婚するなんて褒めて欲しいと思ったぐらいさ。私には、ジュリ。貴女だけだ」
「ローン様」
ふぅたぁりぃはぁ~みぃつぅめぇあぁうぅ~
っだぁぁぁーーーーー‼︎ もう、見てられない!
「婚約は破棄させていただきます」
「あぁ? そんな図体の女に次の相手ができるわけないだろ? まぁ、相手ができたなら婚約破棄を受け入れよう」
ははぁん。なるほど、よぉく分かりました。
私の本気を舐めんなよ?
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