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失われた地下通路

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 おかしい。以前ルーナを捕らえた時に使用した地下通路の様子が違う。

 異変を感じたのは10日ほど経ってから。普通なら既に出口があってもいいはずなのに一向に薄暗い通路が続いていたのだ。

「これは……どういうことだ?」

「さあ、わたくしどももサッパリで」

 商品を仕入れに、隣国へ向かうという商人と共に旅をしていたが嫌な予感がしていた。もしや、この通路はすでにただの通路になっているのではないか?

「私は一旦引き返す」

「え!?」

 商人の男がビックリしたように目を見開いたが、踵を返した。もし、この通路が普通の通路になっているならばここから先何ヶ月もこの暗闇を歩かなければならない。それなら一旦引き返して馬車で移動した方が賢明だろう。いや、馬の方が速いか。

「今までの短さはルーナ……いや、カヤの力だったか……?」

 伯爵が無理矢理娶ったという、東の国の巫女。不思議な力を持っているらしかったので十分にあり得る。

 引き返すかどうか迷う商人たちを置いて、マクシミリムは元来た道を歩き始めた。

 10日も無駄にした。マクシミリムは東の国の旅路が相当過酷なことをしっている。

 国を出るまで馬車で1ヶ月。そこから6つほどの国を跨ぎ、海を渡った先にあるらしい。

 一度行ったことがあると言う伯爵も、元軍人ながら酷く厳しい道のりだったと言っていた。
 
 だが、帰りは楽なのだそう。カヤを連れていると、荒れ狂っていた海は穏やかになり、あろうことか追い風まで吹いたらしい。

 ルーナはどうかは分からないが、どんなに過酷であろうとマクシミリムはルーナを諦める気は1ミリもなかった。

 必ずルーナを連れて帰り、私のものにする。

「馬を借りるぞ」

「ええ、もちろんです。この馬でよろしいでしょうか」

「あぁ」

 一度城に戻り、馬を借りる。馬車は遅い。馬ならばもっと早く着く。

 ルーナは私がいない東の国で、自由気ままに暮らしているのだろう。私がいなくても生きていけると?
 
 そんなことは許されない。ルーナは私と共にいるべきなのだ。

「ハッ!」

 手綱を握るマクシミリムの顔は暗い笑みが浮かんでいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【日記スペースby華雪】

 今日は、凛と一緒に縄跳びをした。藁で編んだ縄は重かったけど、二重跳びを披露したら凄く褒めてくれたヨ。
 でも、30分ぐらいで凛も習得できた。しまいには、三重跳びまで出来ていた。あれ? 俺の運動神経が悪いのかな? それとも、凛の運動神経が良すぎたのかな? そう悩んだけど、後者であることを願ったのは言うまでもない。

 とっっっっても楽しい1日だった。

 凛は16歳だそうだ。私より幼いのにしっかりものでよく豆知識を教えてくれる。でも、笑った顔は年相応の可愛らしさがある。
 ちなみに凛は綺麗系ではなく可愛い系。天真爛漫って言葉が当てはまる、そんな子。動物に例えるなら豆柴のような愛らしさがある。凛曰く、私は狐らしい。狐…………!?

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