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第42話 さらば愛しき者よ
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そして、あたしは今、人生の岐路に立っている。
北に広がる大海原を臨む石灰岩の崖の上で。
選択を間違えば、終わりを招くかもしれない。
どうしてこうなってしまったんだろうか。
カトルが崖の端へと追い詰められていた。
お兄ちゃんは彼女を庇うようにその前に立っている。
お兄ちゃんはデュランダルの柄に手をかけてはいる。
だけど決して、抜くことはないだろうという確信に近い思いがある。
抜いてしまえば、それこそもう
二人を追い詰めるように取り囲んでいるのはエマが率いる聖騎士第四隊だった。
エマの隣にはイヴの姿もある。
「貴公らは、聖騎士団の敵となった。我々は聖騎士団の名のもとに、お前たちを討つ! それが私の使命である」
エマがお兄ちゃんとカトルをきつい視線で睨みつけながら、高らかに言った。
「パラディンは人々を守るものだろ! だが、お前達は何だ! 正義を押し付けるのがおかしいって、なぜ分からない」
お兄ちゃんも警戒した態度を崩さないでエマニュエルを見据えている。
「カミーユは関係ない。お前らなんか、嫌いだ。消えてなくなれ」
カトルがお兄ちゃんの言葉に頷くとゆっくりと口を開くとアイスシルバーの髪が逆立ち始めた。
いけない。
このままでは本当に取り返しのつかないことになってしまう。
「パラディンにとって、正義とは何か? 我々が守るべきものは何か? それは一つに他ならない。神の意志よ」
エマは微笑みながら応えるとその表情のままに腰に佩いた長剣を抜いた。
相変わらず、頭の固い人だことで!
前世でもそうだったけど、融通の利かない真面目さがこの場合、毒にも薬にもならない。
「それはエゴだよ! 己の都合のいいように解釈したものだ!! 神の意志? そんなものがあるもんかよ」
カミーユは静かに口を開くとデュランダルにかけている手に力を込めた。
このままではもう収拾がつかない。
カトルとお兄ちゃんを助けるにしても早く、動かないとこれ以上はもう無理だ。
ここはあたしが悪者になってでもこの場をどうにか、切り抜けるしかない。
そう考えて、オートクレールを抜き、動こうとする前にそいつは動き出していた。
殺気どころか、気配すら感じさせない。
だから、気付かなかった。
エマとイヴの脇をすり抜け、一直線にお兄ちゃんを狙って、動いていた。
「あっ」と声を上げたのは誰だったんだろうか?
あたし? エマ? それともイヴだったのか。
槍による鋭すぎる突きの一撃がお兄ちゃんの心臓を目掛け、放たれていたのだ。
もう遅い。
間に合わない。
誰もがそう思った。
唯一、動くことが出来たのはカトルだった……。
お兄ちゃんを突き飛ばし、一撃を避けさせたのだ。
だがカトル自身が一撃を受けてしまった。
彼女の小さな体を貫通した槍の穂先が赤い液体に塗れている。
ゆっくりと穂先が抜かれると凄まじい量の血が噴き出し、大地を染めた。
「ぐっ」と呻き声とともにカトルの口からも大量の血が溢れ出る。
「これでよかったんだよ、カミーユ。誰も恨まないでね」
カトルは血で彩られた顔で無理に笑顔を作ると致命傷を負った体とは思えない速さで動くとあたし達の前から、姿を消した。
断崖から、荒れる海へと身を投じたのだ……。
悔しいくらいに彼女の顔はきれいだった。
あたしにはとても真似が出来ない。
お兄ちゃんもあたしも身じろぎ出来ないでいる中、お兄ちゃんを襲おうとしたパラディンはエマによって、取り押さえられていた。
北に広がる大海原を臨む石灰岩の崖の上で。
選択を間違えば、終わりを招くかもしれない。
どうしてこうなってしまったんだろうか。
カトルが崖の端へと追い詰められていた。
お兄ちゃんは彼女を庇うようにその前に立っている。
お兄ちゃんはデュランダルの柄に手をかけてはいる。
だけど決して、抜くことはないだろうという確信に近い思いがある。
抜いてしまえば、それこそもう
二人を追い詰めるように取り囲んでいるのはエマが率いる聖騎士第四隊だった。
エマの隣にはイヴの姿もある。
「貴公らは、聖騎士団の敵となった。我々は聖騎士団の名のもとに、お前たちを討つ! それが私の使命である」
エマがお兄ちゃんとカトルをきつい視線で睨みつけながら、高らかに言った。
「パラディンは人々を守るものだろ! だが、お前達は何だ! 正義を押し付けるのがおかしいって、なぜ分からない」
お兄ちゃんも警戒した態度を崩さないでエマニュエルを見据えている。
「カミーユは関係ない。お前らなんか、嫌いだ。消えてなくなれ」
カトルがお兄ちゃんの言葉に頷くとゆっくりと口を開くとアイスシルバーの髪が逆立ち始めた。
いけない。
このままでは本当に取り返しのつかないことになってしまう。
「パラディンにとって、正義とは何か? 我々が守るべきものは何か? それは一つに他ならない。神の意志よ」
エマは微笑みながら応えるとその表情のままに腰に佩いた長剣を抜いた。
相変わらず、頭の固い人だことで!
前世でもそうだったけど、融通の利かない真面目さがこの場合、毒にも薬にもならない。
「それはエゴだよ! 己の都合のいいように解釈したものだ!! 神の意志? そんなものがあるもんかよ」
カミーユは静かに口を開くとデュランダルにかけている手に力を込めた。
このままではもう収拾がつかない。
カトルとお兄ちゃんを助けるにしても早く、動かないとこれ以上はもう無理だ。
ここはあたしが悪者になってでもこの場をどうにか、切り抜けるしかない。
そう考えて、オートクレールを抜き、動こうとする前にそいつは動き出していた。
殺気どころか、気配すら感じさせない。
だから、気付かなかった。
エマとイヴの脇をすり抜け、一直線にお兄ちゃんを狙って、動いていた。
「あっ」と声を上げたのは誰だったんだろうか?
あたし? エマ? それともイヴだったのか。
槍による鋭すぎる突きの一撃がお兄ちゃんの心臓を目掛け、放たれていたのだ。
もう遅い。
間に合わない。
誰もがそう思った。
唯一、動くことが出来たのはカトルだった……。
お兄ちゃんを突き飛ばし、一撃を避けさせたのだ。
だがカトル自身が一撃を受けてしまった。
彼女の小さな体を貫通した槍の穂先が赤い液体に塗れている。
ゆっくりと穂先が抜かれると凄まじい量の血が噴き出し、大地を染めた。
「ぐっ」と呻き声とともにカトルの口からも大量の血が溢れ出る。
「これでよかったんだよ、カミーユ。誰も恨まないでね」
カトルは血で彩られた顔で無理に笑顔を作ると致命傷を負った体とは思えない速さで動くとあたし達の前から、姿を消した。
断崖から、荒れる海へと身を投じたのだ……。
悔しいくらいに彼女の顔はきれいだった。
あたしにはとても真似が出来ない。
お兄ちゃんもあたしも身じろぎ出来ないでいる中、お兄ちゃんを襲おうとしたパラディンはエマによって、取り押さえられていた。
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