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第24話 デュランダルは鈍器ではない
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指揮杖の代わりがオートクレール。
オートクレールを振れば、操り人形でお兄ちゃんが動く。
何と簡単なんでしょう。
あたしが地上にいる意味はない。
むしろ、いたら巻き添えを食って危ないので上空に逃げるのが一番なのだ。
小夜鳴鳥に変わる必要もないので背中から、翼だけ出して高みの見物。
これに限るわ。
「さぁ、カミュお兄ちゃん。やっちゃえー!」
「ロゼ!? ちょっ、待てよ」
待てと言われて、待つ人はいないの。
これは自然の摂理。
そして、あたしがルールだ。
待ったりはしない。
お兄ちゃんにとって、それが幸いなのか、不幸なのか、分からない。
だけど、彼は運動神経と身体能力が優れていらっしゃるのだ。
あたしにとって、幸いであるのは間違いない!
それにお兄ちゃんはいい武器をお持ちである。
サン・フランには三振りの名剣が伝わってきた。
王家が所蔵するジョワユーズとデュランダル。
バール家が所蔵するオートクレール。
ジョワユーズは王家の中でも王位を継ぐ者が代々、所有する王権の象徴的存在だ。
見た目も片手持ちの細身の剣でレイピアに近い。
戴冠式の際に新たな王が手にするので前世で見たことがあった。
鞘だけではなく、柄までも豪華な意匠が施されたとにかく、派手なイメージが強い。
伝説では一振りするだけで相手に三十の傷を与えるとされているけど、真偽のほどは定かではない。
でも、あたしの持っているオートクレールのとんでもなさを考えるとあながち、誇張ではないのかもしれない。
デュランダルも王家に伝わる剣だけど、こちらはもっと実用的で変わっている。
剣自身が持ち主を選ぶのだ。
オートクレールに似ているところがあるのだろう。
この剣の柄には神聖な遺物が収められているので何と四属性の魔法剣を使えるという噂。
あくまで噂なので本当はどうなのか、分からない。
現在の持ち主を追い詰めたら、真価を発揮してくれることだろう。
そう、お兄ちゃんをね!
「おっと危ない」
「うお!?」
考え事をしていて、よく見ていなかったのでゴブリン・ウォーチーフがお兄ちゃんに肉薄していた。
ウォーチーフが渾身の力で振りかぶった切っ先が、お兄ちゃんのきれいな髪を削いだ。
うっかりしていて、少し避けるのが遅れたせいで変な避け方をしてしまったが致命傷は避けている。
ちょっとハゲが出来てしまっただけだ。
命があるのだから、問題はない。
かなり、無理のある動きをさせたけど、さすが操り人形!
何ともない。
お兄ちゃんの身体能力が高くて、よかった。
痛そうな顔をしているのはハゲが出来たせいだ。
きっと、そう。
「こうして、こうなのよ。お兄ちゃん、気合を入れて」
「そんな無茶な……分かったよ。やればいいんだろ。僕は男だ!」
よし、その意気があれば、いける気がする。
ウォーチーフの得物は刀身が斧のような形状をした妙なデザインの剣だから、まともに打ち合うと押し切らてしまうだろう。
だけど、デュランダルは伊達じゃない。
刀身を折ろうと岩に叩きつけたところ、逆に岩を一刀両断した逸話があるほどに頑丈なのだ。
「必殺スパイラルタイフーン!」
あたしが勝手に名付けた技名だ。
まず、お兄ちゃんは地面を勢いよく蹴って、飛びあがる。
そこから、クルクルと体を回転させながら、デュランダルを相手の頭上目掛けて、思い切り叩きつける。
地面を蹴る時に変な音がした気がしないでもないけど、気のせい。
お兄ちゃんがくるくる回っている時に白目になっていた気がするけど、それも気のせい。
ウォーチーフもお兄ちゃんの尋常ではない様子に気が付いたのか、慌てて頭を守ろうと剣と盾を構える。
だけど、無駄だった。
剣と盾を何もなかったように切り裂いただけではない。
ウォーチーフも頭から、お尻までを真っ二つに斬られて、絶命した。
ちょっと勢い余ったのか、デュランダルは地面に深々と刺さって、お兄ちゃんの動きもようやく止まっている。
お兄ちゃんはピクリとは動いているから、大丈夫だろう。
多分、だけど。
ジェシーがやれやれというジェスチャーをしているのが少々、腹立たしい。
次の操り人形は君に決めた! と言ったら、どういう顔をするのか、見ものである。
オートクレールを振れば、操り人形でお兄ちゃんが動く。
何と簡単なんでしょう。
あたしが地上にいる意味はない。
むしろ、いたら巻き添えを食って危ないので上空に逃げるのが一番なのだ。
小夜鳴鳥に変わる必要もないので背中から、翼だけ出して高みの見物。
これに限るわ。
「さぁ、カミュお兄ちゃん。やっちゃえー!」
「ロゼ!? ちょっ、待てよ」
待てと言われて、待つ人はいないの。
これは自然の摂理。
そして、あたしがルールだ。
待ったりはしない。
お兄ちゃんにとって、それが幸いなのか、不幸なのか、分からない。
だけど、彼は運動神経と身体能力が優れていらっしゃるのだ。
あたしにとって、幸いであるのは間違いない!
それにお兄ちゃんはいい武器をお持ちである。
サン・フランには三振りの名剣が伝わってきた。
王家が所蔵するジョワユーズとデュランダル。
バール家が所蔵するオートクレール。
ジョワユーズは王家の中でも王位を継ぐ者が代々、所有する王権の象徴的存在だ。
見た目も片手持ちの細身の剣でレイピアに近い。
戴冠式の際に新たな王が手にするので前世で見たことがあった。
鞘だけではなく、柄までも豪華な意匠が施されたとにかく、派手なイメージが強い。
伝説では一振りするだけで相手に三十の傷を与えるとされているけど、真偽のほどは定かではない。
でも、あたしの持っているオートクレールのとんでもなさを考えるとあながち、誇張ではないのかもしれない。
デュランダルも王家に伝わる剣だけど、こちらはもっと実用的で変わっている。
剣自身が持ち主を選ぶのだ。
オートクレールに似ているところがあるのだろう。
この剣の柄には神聖な遺物が収められているので何と四属性の魔法剣を使えるという噂。
あくまで噂なので本当はどうなのか、分からない。
現在の持ち主を追い詰めたら、真価を発揮してくれることだろう。
そう、お兄ちゃんをね!
「おっと危ない」
「うお!?」
考え事をしていて、よく見ていなかったのでゴブリン・ウォーチーフがお兄ちゃんに肉薄していた。
ウォーチーフが渾身の力で振りかぶった切っ先が、お兄ちゃんのきれいな髪を削いだ。
うっかりしていて、少し避けるのが遅れたせいで変な避け方をしてしまったが致命傷は避けている。
ちょっとハゲが出来てしまっただけだ。
命があるのだから、問題はない。
かなり、無理のある動きをさせたけど、さすが操り人形!
何ともない。
お兄ちゃんの身体能力が高くて、よかった。
痛そうな顔をしているのはハゲが出来たせいだ。
きっと、そう。
「こうして、こうなのよ。お兄ちゃん、気合を入れて」
「そんな無茶な……分かったよ。やればいいんだろ。僕は男だ!」
よし、その意気があれば、いける気がする。
ウォーチーフの得物は刀身が斧のような形状をした妙なデザインの剣だから、まともに打ち合うと押し切らてしまうだろう。
だけど、デュランダルは伊達じゃない。
刀身を折ろうと岩に叩きつけたところ、逆に岩を一刀両断した逸話があるほどに頑丈なのだ。
「必殺スパイラルタイフーン!」
あたしが勝手に名付けた技名だ。
まず、お兄ちゃんは地面を勢いよく蹴って、飛びあがる。
そこから、クルクルと体を回転させながら、デュランダルを相手の頭上目掛けて、思い切り叩きつける。
地面を蹴る時に変な音がした気がしないでもないけど、気のせい。
お兄ちゃんがくるくる回っている時に白目になっていた気がするけど、それも気のせい。
ウォーチーフもお兄ちゃんの尋常ではない様子に気が付いたのか、慌てて頭を守ろうと剣と盾を構える。
だけど、無駄だった。
剣と盾を何もなかったように切り裂いただけではない。
ウォーチーフも頭から、お尻までを真っ二つに斬られて、絶命した。
ちょっと勢い余ったのか、デュランダルは地面に深々と刺さって、お兄ちゃんの動きもようやく止まっている。
お兄ちゃんはピクリとは動いているから、大丈夫だろう。
多分、だけど。
ジェシーがやれやれというジェスチャーをしているのが少々、腹立たしい。
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