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第23話 烏令嬢にも苦手なものはある
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ゴブリン・シャーマンが魔法の詠唱を終えるよりもオートクレールに雷の魔力を充填する方が早かった。
ただ、それだけのことだ。
「その身に刻むがいい。黒き雷!」
右手一本で構えていたオートクレールに左手を副えて、右足を大きく踏み出しながら、猛る獣のように突きを放つ。
それと同時にオートクレールに纏わせた雷の魔力を一気に解き放つと漆黒の闇のように禍々しい稲妻が走る。
詠唱で身動きの取れなかったゴブリン・シャーマン達は憐れ、物言わぬ黒焦げの死体になった。
でも、実のところ、エクレール・ノワールは見た目の派手さの割に威力はそれほどでもない。
(あれだな。ロマンは大事だぜ。そういうことだな)
違うからね?
かっこいいからとではなくて、依頼の証拠がないとお金にならないから、黒き炎をやめただけなんだから。
フラム・ノワールだと消し炭にしてしまうので、それではお金にならないからであって……とゴブリン・シャーマンの黒焦げ死体を見る。
これはダメだわ。
判別不能なのでギルドに証拠として、認められない可能性の方が高い。
やってしまったものはしようがない。
諦めよう……。
一番高いのがまだ、残っているから。
気を取り直して、頑張るしかない!
でも、ウォーチーフは厄介な相手みたいだ。
まず、普通のゴブリンよりも明らかに体格がいいし、装備している物も上等に見えた。
ゴブリンの亜種でホブゴブリンという種族がいる。
突然変異で生まれる絶対数が少ない個体のことだ。
あれは知能・体格・戦闘力が普通のゴブリンを遥かに上回っている。
このウォーチーフはホブゴブリンと見て、間違いないと思う。
対して、あたしは力を抑えないといけない。
お金にするにはお手軽に魔法剣で片付けられないからだ。
加減が効かないのでつい、やってしまった! で報酬を減らしたくはない。
そうなると近接での戦いを挑まなければ、ならないのだけど……。
(お嬢ちゃんはあまり、動くのが得意ではなかったか)
嫌なことを思い出させてくれる。
呪いのせいで体を重く感じて、動かしにくかったのはある。
それでもある程度、動けるのであれば階段を転げ落ちて、死ぬという憐れな死に様はなかったはずだ。
今回は同じ轍は踏まないと基礎体力を付けるべく、トレーニングをした。
ある程度、動けるようにはなっている。
ただ、あくまで動けるだけ。
純粋な身体能力だけを駆使する木剣を使った摸擬戦においてはジェシーはともかくとして、お兄ちゃんにすら勝てない。
それがあたしの剣術の実力なのだ。
ならば、どうすればいいのか。
簡単である。
自分が出来ないのなら、他人を使えばいいのだ。
「行け! お兄ちゃん!!」
「はあ!?」
簡単な癒しの魔法で動けるようにしてあげた。
治療費はサービスしてあげよう。
優しいあたしに感謝して欲しいくらいだ。
「さぁ、頑張って、お兄ちゃん。操り人形」
(本当に大丈夫なのか、お嬢ちゃん)
こう見えて、あたしは人形遊びが得意だった。
自分が動くのでなければ、余裕なのよ。
ただ、それだけのことだ。
「その身に刻むがいい。黒き雷!」
右手一本で構えていたオートクレールに左手を副えて、右足を大きく踏み出しながら、猛る獣のように突きを放つ。
それと同時にオートクレールに纏わせた雷の魔力を一気に解き放つと漆黒の闇のように禍々しい稲妻が走る。
詠唱で身動きの取れなかったゴブリン・シャーマン達は憐れ、物言わぬ黒焦げの死体になった。
でも、実のところ、エクレール・ノワールは見た目の派手さの割に威力はそれほどでもない。
(あれだな。ロマンは大事だぜ。そういうことだな)
違うからね?
かっこいいからとではなくて、依頼の証拠がないとお金にならないから、黒き炎をやめただけなんだから。
フラム・ノワールだと消し炭にしてしまうので、それではお金にならないからであって……とゴブリン・シャーマンの黒焦げ死体を見る。
これはダメだわ。
判別不能なのでギルドに証拠として、認められない可能性の方が高い。
やってしまったものはしようがない。
諦めよう……。
一番高いのがまだ、残っているから。
気を取り直して、頑張るしかない!
でも、ウォーチーフは厄介な相手みたいだ。
まず、普通のゴブリンよりも明らかに体格がいいし、装備している物も上等に見えた。
ゴブリンの亜種でホブゴブリンという種族がいる。
突然変異で生まれる絶対数が少ない個体のことだ。
あれは知能・体格・戦闘力が普通のゴブリンを遥かに上回っている。
このウォーチーフはホブゴブリンと見て、間違いないと思う。
対して、あたしは力を抑えないといけない。
お金にするにはお手軽に魔法剣で片付けられないからだ。
加減が効かないのでつい、やってしまった! で報酬を減らしたくはない。
そうなると近接での戦いを挑まなければ、ならないのだけど……。
(お嬢ちゃんはあまり、動くのが得意ではなかったか)
嫌なことを思い出させてくれる。
呪いのせいで体を重く感じて、動かしにくかったのはある。
それでもある程度、動けるのであれば階段を転げ落ちて、死ぬという憐れな死に様はなかったはずだ。
今回は同じ轍は踏まないと基礎体力を付けるべく、トレーニングをした。
ある程度、動けるようにはなっている。
ただ、あくまで動けるだけ。
純粋な身体能力だけを駆使する木剣を使った摸擬戦においてはジェシーはともかくとして、お兄ちゃんにすら勝てない。
それがあたしの剣術の実力なのだ。
ならば、どうすればいいのか。
簡単である。
自分が出来ないのなら、他人を使えばいいのだ。
「行け! お兄ちゃん!!」
「はあ!?」
簡単な癒しの魔法で動けるようにしてあげた。
治療費はサービスしてあげよう。
優しいあたしに感謝して欲しいくらいだ。
「さぁ、頑張って、お兄ちゃん。操り人形」
(本当に大丈夫なのか、お嬢ちゃん)
こう見えて、あたしは人形遊びが得意だった。
自分が動くのでなければ、余裕なのよ。
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