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第15話 謎多き第二王子アロイス
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道すがら、話を聞きだして、分かったことがある。
お兄ちゃんには冒険者として、既に活躍している兄がいる。
その兄のようになりたいと一念発起して、石ランクでも受けることが出来るゴブリンの討伐依頼を受けて、森に入った。
入ったものの迷子になり、彷徨っているうちにゴブリンの集落に近付いてしまったんだろう。
たくさんのゴブリンに追いかけられ、必死に逃げたが限界がきて、絶体絶命の危機に陥ったところ、通りかかったのがあたし達だったという訳だ。
「お兄さんのようになりたいのですか? カミュは言葉遣いも所作もいいところのお坊ちゃまでしょ? そのような無理をする必要がないのでは?」
「それは違うよ。兄さんは凄い人なんだよ。兄さんはきっと世界を救う勇者にだって、なれるんだ。僕も兄さんのようになりたいと思った。それだけのことさ」
「へ、へぇ」
お兄ちゃんが兄さんと呼ぶのは一人しかいない。
お兄ちゃんにはそもそも、兄が二人いる。
第一王子で王太子のギャスパルと第二王子のアロイスだ。
でも、あたしが知っている限りではお兄ちゃんがギャスパル殿下を兄さんと呼んだことは一度もない。
兄上。
お兄様。
それ以外で呼んではいけない圧を感じるとよく漏らしていたのを記憶している。
尊敬はしているが、苦手でもあったらしい。
だから、『兄さん』と呼ぶのはアロイス殿下で間違いないだろう。
前世のアロイス殿下は平民の……確か、フラヴィという女性が婚約者だったはずだ。
爵位と領地を拝領して、臣下に下る道を選んだのがアロイスという人物。
しかし、お兄ちゃんの話をまとめると今世のアロイス殿下は、皆目、見当がつかない人にしか思えない。
勇者になれるほどに凄腕の冒険者ならば、既に名が通っている可能性が高い。
アロイス殿下は十八歳になっているはずだ。
才能が豊かな人であれば、そうであってもおかしくはない。
だが、前世のアロイス殿下は謙虚で無欲な人で自ら、身を引いた印象が強い。
兄弟と争うことを嫌ったのか、それとも厭世的な人だったのかは分からない。
分かっているのは特に秀でた才能を見せることなく、表舞台を去ったということだけなのだ。
あたし達というよりはジェシーのギルドへの報告も終わり、お兄ちゃんも『ゴブリンの耳』を納入し、無事とは言えないまでも依頼を完了した。
お兄ちゃんは妙なところが頑固というか、潔癖なところがある。
最後まで自分が成し遂げていないのに貰う訳にはいかないと言っていた。
その考え方が前世と変わっていないことに少し、安心している自分がいる。
前世で見た汚い大人の同類になったお兄ちゃんは見たくないのだ。
さて、これにて一件落着と考えて、お兄ちゃんを放っておいてもいいのだろうか?
お兄ちゃんの考えは一理ある。
実力が伴っていない今のお兄ちゃんに成長は見込めるんだろうか?
「ジェシーはどう思う?」
「お嬢様の思うようにすれば、いいんじゃないですかね」
(ふはははは。お嬢ちゃんのこと、よく分かっているヤツのようだね。思うようにすべきだろう? 二度目なんだ。好きなように動けば、いいのさ)
オートクレールは鞘に納められているのにうるさい男(?)だ。
でも、ジェシーとオートクレールの言葉は、あたしの背中を押すのに十分な力があった。
「分かった。あたしがあの人を鍛えるわ!」
お兄ちゃんには冒険者として、既に活躍している兄がいる。
その兄のようになりたいと一念発起して、石ランクでも受けることが出来るゴブリンの討伐依頼を受けて、森に入った。
入ったものの迷子になり、彷徨っているうちにゴブリンの集落に近付いてしまったんだろう。
たくさんのゴブリンに追いかけられ、必死に逃げたが限界がきて、絶体絶命の危機に陥ったところ、通りかかったのがあたし達だったという訳だ。
「お兄さんのようになりたいのですか? カミュは言葉遣いも所作もいいところのお坊ちゃまでしょ? そのような無理をする必要がないのでは?」
「それは違うよ。兄さんは凄い人なんだよ。兄さんはきっと世界を救う勇者にだって、なれるんだ。僕も兄さんのようになりたいと思った。それだけのことさ」
「へ、へぇ」
お兄ちゃんが兄さんと呼ぶのは一人しかいない。
お兄ちゃんにはそもそも、兄が二人いる。
第一王子で王太子のギャスパルと第二王子のアロイスだ。
でも、あたしが知っている限りではお兄ちゃんがギャスパル殿下を兄さんと呼んだことは一度もない。
兄上。
お兄様。
それ以外で呼んではいけない圧を感じるとよく漏らしていたのを記憶している。
尊敬はしているが、苦手でもあったらしい。
だから、『兄さん』と呼ぶのはアロイス殿下で間違いないだろう。
前世のアロイス殿下は平民の……確か、フラヴィという女性が婚約者だったはずだ。
爵位と領地を拝領して、臣下に下る道を選んだのがアロイスという人物。
しかし、お兄ちゃんの話をまとめると今世のアロイス殿下は、皆目、見当がつかない人にしか思えない。
勇者になれるほどに凄腕の冒険者ならば、既に名が通っている可能性が高い。
アロイス殿下は十八歳になっているはずだ。
才能が豊かな人であれば、そうであってもおかしくはない。
だが、前世のアロイス殿下は謙虚で無欲な人で自ら、身を引いた印象が強い。
兄弟と争うことを嫌ったのか、それとも厭世的な人だったのかは分からない。
分かっているのは特に秀でた才能を見せることなく、表舞台を去ったということだけなのだ。
あたし達というよりはジェシーのギルドへの報告も終わり、お兄ちゃんも『ゴブリンの耳』を納入し、無事とは言えないまでも依頼を完了した。
お兄ちゃんは妙なところが頑固というか、潔癖なところがある。
最後まで自分が成し遂げていないのに貰う訳にはいかないと言っていた。
その考え方が前世と変わっていないことに少し、安心している自分がいる。
前世で見た汚い大人の同類になったお兄ちゃんは見たくないのだ。
さて、これにて一件落着と考えて、お兄ちゃんを放っておいてもいいのだろうか?
お兄ちゃんの考えは一理ある。
実力が伴っていない今のお兄ちゃんに成長は見込めるんだろうか?
「ジェシーはどう思う?」
「お嬢様の思うようにすれば、いいんじゃないですかね」
(ふはははは。お嬢ちゃんのこと、よく分かっているヤツのようだね。思うようにすべきだろう? 二度目なんだ。好きなように動けば、いいのさ)
オートクレールは鞘に納められているのにうるさい男(?)だ。
でも、ジェシーとオートクレールの言葉は、あたしの背中を押すのに十分な力があった。
「分かった。あたしがあの人を鍛えるわ!」
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