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第14話 烏令嬢と泣き虫殿下④

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ジェシージュスタン。全部、取ってあるんでしょ?」
「はい。これだけ、ありますが」

 ジェシーが背負っていた布袋を逆さまにすると出てくるわ、出てくるわ。
 耳、耳、耳。
 切り取られたゴブリンの耳である。

 ジェシーは結構、神経質で几帳面な性格をしているんだろう。
 きれいに切り取っている。
 慣れてしまった今となってはどうということはないが、最初はあまりにもグロテスクな光景に慄いたものだ。

「お、おんどぅりゃばってん」
「ん?」

 お兄ちゃんがまた、泡を吹いて、倒れてしまった。
 全く、世話の焼ける人だこと。



 今度はお漏らしをしていないのでよかった。
 さすがにもう着替えはない。
 次に漏らされたら、下半身を丸出しで帰ってもらうところだったよ?

「本当にすまない……」

 シュンとなっているお兄ちゃんカミーユが可哀想にしか、思えない同情を誘う姿で責める訳にもいかない。
 こういう時、下手に容姿が整っていると武器になるということはあたし自身、よく知っている。
 現に十歳のあたしはかわいらしい子供であることをちゃっかりと利用しているのだ。

 お兄ちゃんの場合、意図的にではないんだろう。
 天然でやっているのでちょっとたちが悪い。
 こういう人ではなかったので調子が狂う。

「知らなかったのなら、仕方ありませんよ。首を持って帰るのは大変なのです。耳や角、牙といった特徴のある物を証拠として、持ち帰る。これが冒険者のルールですよ?」
「そうなのか。知らなかった。勉強になる」

 素直過ぎて、気持ち悪い。
 そんなことを言ったら、失礼かもしれないけど、助言や苦言をあまり聞いてくれる人ではなかったのに……。

「失礼かもしれませんけど、カミュさんの腕では帰るのも大変なのでは? あたし達は町に戻る途中ですから」
「いいのか?」
「い、いいですけど?」
「すまない。頼む」

 この辺りの押しの強さはやはり、お兄ちゃんであると思わざるを得ない。
 げんなりしているジェシーには悪いけど、荷物が少し、増えたと思って我慢してもらおう。
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