15 / 43
本編
閑話 文芸部と言う名の勝手に応援し隊II
しおりを挟む
Side カオル
僕はカオル。
文芸部の副部長として、優秀だけどちょっとアレな部長のサポートに日々、奔走しなきゃいけないので苦労が絶えない。
苦労が絶えないというと意味では幼馴染二人のせいでもストレスが溜まるくらいに苦労している。
どう見ても両想いのくせして、自分たちのことになると極端に鈍感なのだ、あの二人は。
その間を取り持とうとする僕の苦労といったらない。
ほぼ全力で空回りする日々の繰り返しだからね。
僕は元々、男の子としてこの世に生まれた。
でも、お母さまがどうしても女の子が欲しかったらしい。
生まれた時から、女の子として育てられたし、幸いなことに母親似だったから、特に変に思われることはなかった。
それに僕が男の子であることはアリス以外の人たちは気付いていて、知らない振りをしてくれていた。
実際、女の子の姿でいる方が皆からの受けは良かったし、過ごしやすかったのは事実だ。
さて、僕たちは例によって例のごとく、懲りずに二人をくっつける為の作戦を実行中である。
部長曰く、面と向かってを避けて、『ネットでGO』作戦だそうだ。
今までになく凝った作戦でVR機器やネトゲとコストも手順もかかっている。
面倒なことだが乗り掛かった舟というもの、手伝わざるを得ない。
僕だって、あの二人に幸せになってもらいたいと思っているのは一緒だしね。
タケルを誘導するのは僕でアリスを誘導するのはスミカということに決まった。
無事に第一段階までは成功というところかな?
それにしても二人の鈍感さにはある種の才能すら感じる。
いくら普段と髪型が違うとはいえ、タケルはマリーナとエステルが部長とスミカだということに気付いてすらいない。
それすら気付かないんだから、フルアーマーとフードで顔見えない状態じゃ、お互いのことにも気付かないだろう。
その方が今回の作戦には有利に働くから、いいんだけどね。
まぁ、何はともあれ、偶然の産物だけど合流も果たせた。
勧誘すべき人材二人の確保に成功したんだから、終わり良ければ総て良しってものだね。
作戦は第二段階へと入る訳だけどそれにはまず、タケルを適度にけしかけなくっちゃいけない。
いわゆるペア狩り。
二人で冒険に行くようにと文面まで考えてあげたから、多分、大丈夫だろう。
僕たちに出来ることはお膳立てだけであって、それ以上のことには介入しない方針。
むしろ、介入しても成果出なかったから、やるだけ無駄なんだよね。
だから、アプリでチャット会議ということになったが、これもいつも通りのこと。
マリーナ:
二人きりで狩りですもの。吊り橋効果でドキドキ恋に落ちるのは間違いなしなのです。
エステル:
部長は楽観的すぎると思います。それなら、とうに成功してるはずです。
ヴォルフ:
だけどスミカ。今まで下手に介入しては失敗してるのは事実。今回は出来るだけ介入しない方がいいのでは?
マリーナ:
そうです。本当は二人の狩りを監視……もとい見守りたいところを我慢すると決めたではありませんか。
エステル:
そうなんですけど、アリスは恋愛に不器用で臆病すぎるから、心配なんです。
マリーナ:
そうよね、そうなのよ。どうやって、導けばうまくいくのか、考えましょう。
ヴォルフ:
(君らも恋愛経験はほぼ0じゃないか! 僕もだけどさ。アニメ、マンガ、小説etcそういう恋愛知識しかないって、自覚があるの?そんな恋愛巧者なら、僕とスミカの仲はもっと進んでいるよ)
エステル:
吊り橋効果を高めるにはさらなるハプニングが最適だと思います。
マリーナ:
いいアイデアね。障害があると恋の炎は燃え上がるものですわ。
ヴォルフ:
障害になるかどうか、まだ分からないけど転校生をうまく利用するのも手では?
エステル:
足利さんを? うーん、そっか! 恋にはライバルが必要、そういうこと?
マリーナ:
突如、現れた転校生に幼馴染の恋が動き出すのよ。いいわ、この案でいきましょう。
ヴォルフ:
(大丈夫かな。いつも通りが定期過ぎて逆に安心してきたがまずくない?)
チャット会議が終わって、別の意味で疲れている。
もう長い付き合いで慣れてるし、たまに妄想で暴走する以外は部長もスミカもとてもいい友人である。
ふと時計を見ると十時をちょっと過ぎたくらいだった。
「あの二人、うまくやってるかな。少しくらいは仲が進めばいいんだけどなぁ」
僕はそう思いながら、明日からまた、着ていくことになる女子の制服――えんじ色のブレザーとウィッグを確認して、にんまりするのだった。
僕はカオル。
文芸部の副部長として、優秀だけどちょっとアレな部長のサポートに日々、奔走しなきゃいけないので苦労が絶えない。
苦労が絶えないというと意味では幼馴染二人のせいでもストレスが溜まるくらいに苦労している。
どう見ても両想いのくせして、自分たちのことになると極端に鈍感なのだ、あの二人は。
その間を取り持とうとする僕の苦労といったらない。
ほぼ全力で空回りする日々の繰り返しだからね。
僕は元々、男の子としてこの世に生まれた。
でも、お母さまがどうしても女の子が欲しかったらしい。
生まれた時から、女の子として育てられたし、幸いなことに母親似だったから、特に変に思われることはなかった。
それに僕が男の子であることはアリス以外の人たちは気付いていて、知らない振りをしてくれていた。
実際、女の子の姿でいる方が皆からの受けは良かったし、過ごしやすかったのは事実だ。
さて、僕たちは例によって例のごとく、懲りずに二人をくっつける為の作戦を実行中である。
部長曰く、面と向かってを避けて、『ネットでGO』作戦だそうだ。
今までになく凝った作戦でVR機器やネトゲとコストも手順もかかっている。
面倒なことだが乗り掛かった舟というもの、手伝わざるを得ない。
僕だって、あの二人に幸せになってもらいたいと思っているのは一緒だしね。
タケルを誘導するのは僕でアリスを誘導するのはスミカということに決まった。
無事に第一段階までは成功というところかな?
それにしても二人の鈍感さにはある種の才能すら感じる。
いくら普段と髪型が違うとはいえ、タケルはマリーナとエステルが部長とスミカだということに気付いてすらいない。
それすら気付かないんだから、フルアーマーとフードで顔見えない状態じゃ、お互いのことにも気付かないだろう。
その方が今回の作戦には有利に働くから、いいんだけどね。
まぁ、何はともあれ、偶然の産物だけど合流も果たせた。
勧誘すべき人材二人の確保に成功したんだから、終わり良ければ総て良しってものだね。
作戦は第二段階へと入る訳だけどそれにはまず、タケルを適度にけしかけなくっちゃいけない。
いわゆるペア狩り。
二人で冒険に行くようにと文面まで考えてあげたから、多分、大丈夫だろう。
僕たちに出来ることはお膳立てだけであって、それ以上のことには介入しない方針。
むしろ、介入しても成果出なかったから、やるだけ無駄なんだよね。
だから、アプリでチャット会議ということになったが、これもいつも通りのこと。
マリーナ:
二人きりで狩りですもの。吊り橋効果でドキドキ恋に落ちるのは間違いなしなのです。
エステル:
部長は楽観的すぎると思います。それなら、とうに成功してるはずです。
ヴォルフ:
だけどスミカ。今まで下手に介入しては失敗してるのは事実。今回は出来るだけ介入しない方がいいのでは?
マリーナ:
そうです。本当は二人の狩りを監視……もとい見守りたいところを我慢すると決めたではありませんか。
エステル:
そうなんですけど、アリスは恋愛に不器用で臆病すぎるから、心配なんです。
マリーナ:
そうよね、そうなのよ。どうやって、導けばうまくいくのか、考えましょう。
ヴォルフ:
(君らも恋愛経験はほぼ0じゃないか! 僕もだけどさ。アニメ、マンガ、小説etcそういう恋愛知識しかないって、自覚があるの?そんな恋愛巧者なら、僕とスミカの仲はもっと進んでいるよ)
エステル:
吊り橋効果を高めるにはさらなるハプニングが最適だと思います。
マリーナ:
いいアイデアね。障害があると恋の炎は燃え上がるものですわ。
ヴォルフ:
障害になるかどうか、まだ分からないけど転校生をうまく利用するのも手では?
エステル:
足利さんを? うーん、そっか! 恋にはライバルが必要、そういうこと?
マリーナ:
突如、現れた転校生に幼馴染の恋が動き出すのよ。いいわ、この案でいきましょう。
ヴォルフ:
(大丈夫かな。いつも通りが定期過ぎて逆に安心してきたがまずくない?)
チャット会議が終わって、別の意味で疲れている。
もう長い付き合いで慣れてるし、たまに妄想で暴走する以外は部長もスミカもとてもいい友人である。
ふと時計を見ると十時をちょっと過ぎたくらいだった。
「あの二人、うまくやってるかな。少しくらいは仲が進めばいいんだけどなぁ」
僕はそう思いながら、明日からまた、着ていくことになる女子の制服――えんじ色のブレザーとウィッグを確認して、にんまりするのだった。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる