上 下
170 / 232
第4章 麗しのアルフィン

第155話 全く、首が一つだけでもしつこいんですのね?

しおりを挟む
 ちょっと頭が痛くなってきましたわ。
 アウラールの巨大新星爆ジャイガンティックノヴァブラストが想定外の威力でした。
 これではまた、地形が変わって環境に変化が生じますわね。

「リーナ。それより、問題なのはあっちだね」
「そうですわね」

 巨大新星爆ジャイガンティックノヴァブラストが急深な海岸を極端に遠浅の地形に変えてしまった。
 これは覆しようのない事実ですわ。
 しかし、それ以上に問題となる現象が起きてしまったのです。
 七色の光で穿たれたギータの苦し紛れに放った黒い閃光。
 渦潮で沈み行く体に虹の閃光を受け、そのまま大人しく沈んでくれたら、良かったのですけど。
 アウラールの翼を狙って、撃たれた腐食ブレスが偏光障壁に弾かれたのですわ。
 弾かれた方向がよりによって、陸地だったんですもの。
 由々しき事態ですわね。

 ギータの腐食ブレスは熱線や雷撃に似た特性を持ち、直線状に放射されます。
 紫色の燐光に彩られていて、闇の色を纏った閃光のようにも見えて、きれい……などと言っている場合ではありませんわね。
 中々の大惨事ですもの。
 黒い閃光が走った海岸線には大規模な崖崩れと地割れが発生。
 様変わりした地形は風光明媚とはとても言えないものですわ。
 どうしますの、これ?

「どうする?」
「レオは戦ってみたいのでしょう? あの時よりも弱くて、歯応えがないかもしれませんけど」
「うん。それじゃ、ちょっとだけ楽しんでくるよ」

 レオはそう言うとサムズアップをしてから、飛び降りていきました。
 結構、高さがあったはずなのですけど、相変わらず、無茶しますわね。

「アウラール、あそこに降りることは出来るかしら?」
『ピロールー』

 まだ、被害の出ていない比較的、きれいな砂浜が残っているようです。
 そこに降りるようにとアウラールに指示を出しつつ、地上を窺いました。
 ギータは少しばかりのダメージを受けたようですが、既に渦潮から抜け出し、上陸を果たていました。
 考えていることは同じなのかしら?
 まだ、きれいな砂浜を目指しているようです。

「全く、首が一つだけでもしつこいんですのね?」

 ギータの全身を覆っている朽ち果てた肉塊は全て、こそげ落ち、その姿がさらに不気味さと異様さの増した禍々しいものになっています。
 想像してみてください。
 骨だけなのにミシミシギシギシと不快な音を立てながら、動いてますのよ?
 まず、どういう原理で動いているのか。
 そして、自重で壊れないのか。
 頭の中に次々と湧いてくる疑問に際限がないみたい。
 面倒ですから、思考は一旦、切りましょう……。

「でも、コアもないただの死んだ首一つでは話になりませんのよ?」
「ふわぁ、ニール眠いー」

 あまりにやることがないのでニールを眠気という名の抗いがたい魔物が襲い掛かってきたようです。
 でも、アレはレオがすぐに片付けるでしょう。
 問題ないですわ。
 ニールが少しでも寝やすいように優しく、頭を撫でていると安らかな、寝息が聞こえてきました。

 🦀 🦀 🦀

 その頃、巨大新星爆ジャイガンティックノヴァブラストの余波で波打ち際に打ち上げられたトリトンは救援の信号を送りつつ、上陸しようと立ち上がろうとして……
 第一歩で盛大にコケていた。

「ちょっと~、何してんのよ~」

 水陸両用として、水中活動は完璧なまで調整が施されたトリトンだが相変わらず、歩行すら、満足に出来ないのだった。





――Side レオンハルト
 水中をうごめく白い影を補足した僕はアウラールから、飛び降りると魔装を纏ったまま、真・獣形態に変身する。
 リーナが本来の姿を取り戻した以上、僕の力も最大限に発揮出来るってもんだ。

 地上に降り立つ頃には僕の姿は真っ黒な獅子に変化しているが以前よりも大きくなっている。
 何よりも魔装の力が反映されて、今まで出来なかったことも可能になっただろう。

 力のセーブがやや出来ていなかったかな?
 着地した場所がクレーターみたいに大きく陥没していた。
 うん。
 だけど、これくらいは問題……ないかな?
 大事の前の小事っていうし、大丈夫だ。
 リーナは多分、許してくれるから、いいことにしよう。

 天に向け、咆哮するとまた、やらかしてしまった気がする。
 周囲の地形がちょっとばかり、吹き飛んだと言えないこともない。
 だけど、これくらいのやっちゃった感も多分、平気だ。
 リーナは許してくれる……はず。

 そんなことより、今はからくり仕掛けの山車のようにぎこちない動きで動いている骨だけのモノを倒すのが先決だ。
 折角だから、試してみるか。
 前腕を覆っている篭手のような金属状の装甲。
 これは魔装の影響に依るものだ。
 そして、これは僕の新しい攻撃手段でもある。
 ガシャリという金属音とともに両腕の篭手から、鋭利な刃物のようなものが展開された。
 このブレードなら、いけるな。
 爪で切り裂くのより、ずっと愉しめそうだ。

「八つ裂きにしてやる! いや、細切れにしてやるかな? どっちでもいいや」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

未亡人メイド、ショタ公爵令息の筆下ろしに選ばれる。ただの性処理係かと思ったら、彼から結婚しようと告白されました。【完結】

高橋冬夏
恋愛
騎士だった夫を魔物討伐の傷が元で失ったエレン。そんな悲しみの中にある彼女に夫との思い出の詰まった家を火事で無くすという更なる悲劇が襲う。 全てを失ったエレンは娼婦になる覚悟で娼館を訪れようとしたときに夫の雇い主と出会い、だたのメイドとしてではなく、幼い子息の筆下ろしを頼まれてしまう。 断ることも出来たが覚悟を決め、子息の性処理を兼ねたメイドとして働き始めるのだった。

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~

シェルビビ
恋愛
 男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。  10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。  一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。  自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ
恋愛
R18作品です。 18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。 男爵家の令嬢エリーナ・ネーディブは身体が弱くほとんどを屋敷の中で過ごす引きこもり令嬢だ。 そのせいか極度の人見知り。 ある時父からいきなりカール・フォード公爵が婚姻をご所望だと聞かされる。 あっという間に婚約話が進み、フォード家へ嫁ぐことに。 内気で初心な令嬢は、美貌の公爵に甘く激しく愛されてー?

処理中です...