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18 生ける屍
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わたしは受けた恩を返す主義。
これは譲れない。
アフターケアまでコミコミでしっかりとやりたい派なのだ。
ただ、それだけのこと。
だから、ちょっとした意趣返しでイケメン二人がびっくりした顔を見せてくれたら、それで満足だったりもする。
「残念なお知らせです」
「「は?」」
顔の整った人が二人とも鳩が豆鉄砲でも食った表情をした。
これは何度、見ても飽きないと思う。
そんな気がする。
美人は三日で飽きる。
薄らとなった前世の記憶にそういう格言があったはず。
自信はない。
あれは感情が薄くて、表情が豊かでなければ、どんなに整った容姿であっても見飽きる。
でも、例え整っていなくても感情表現が豊かで表情も朗らかだったら、見飽きない。
そういうことなんじゃないだろうか。
「ニア。真面目にやろう?」
「あぁ? うん。分かってるわ」
シルは元ゴーレム、今もうさぎのぬいぐるみなガワだけでゴーレムだけど融通が利かないところがある。
ちょっとした占い師ジョークがゴーレムには分からないだけ!
「王子様とその家来さん」
あれ?
まずいことを言っちゃった?
鳩が豆鉄砲から、一気に緊迫感溢れる顔になったような……。
「わたし達、完璧に完全に囲まれているんです」
でも、今の一言でわたしに対して、向けられていた疑念は消えたと思う。
周囲への警戒心に一気に切り替えて、抜剣するんだからプロは違うわね。
わたし達をの周りの地面から、人間の腕が生えるように伸びて、それは姿を現した。
一本じゃない。
何本もの腕が伸びてくる様子は何度も見慣れた光景でもぞっとする。
「何だ、あれは?」
「あれは動く死体!?」
さすがこの世界で生まれ育ったプロの冒険者さん。
よく知っている。
またの名を生ける屍、リビングデッド。
でも、これは合っているようで合っていない。
間違った名だと思う。
彼らは蘇った訳ではない。
元から宿っていた魂が抜けてしまった状態とでも言えば、いいんだろうか。
器だけあって中に満たす液体がない飲み物。
そういうのを想像すれば、分かりやすい。
だけど生命がないからこそ厄介とも言える。
剣術に長けた人が感じる気の流れもないし、魔法使いが感じる魔力の流れもない。
イケメン二人は冒険者として手練れみたいだけど、全く気付いていなかったのがその証拠だ。
なぜかは分からないけど、彼らのように生命のない者がわたしには視える。
これを利用しない手はないだろう。
幽霊退治専門の冒険者をやっていた理由でもある。
「だから、ニア。真面目にやらないと!」
「分かってるわ。シル、頑張って!」
「な、なんてことするうさー」
大きく振りかぶって、シルをリビングデッドの群れに投げつけた。
転生前にスポーツ経験があった記憶はないし、転生してもそれほどの身体能力はないわたしが投げたところで大した威力は出ない。
いいや、違った。
シルはだいたいがもふもふしたうさぎのぬいぐるみに過ぎない。
どんなに運動神経がいい人が投げたところで大した威力にはならないはず。
その割に凄い勢いで飛んでいった気がするけど多分、気のせい。
突っ込んだシルに当たったリビングデッドが爆散したように見えたのも多分、気のせい。
「殿下! 頭がヤツラの弱点です」
「なるほど」
「あっ」
家来さんの方はリビングデッドと過去に戦った経験があるんだろうか。
双剣を操って、風のように駆けながらリビングデッドの首を次々に刎ねていく様子はちょっとした芸術作品を見ている気さえしてくる。
でも、これも間違っていたりするのだ。
彼らは首を刎ねても機能を停止しない。
元々、動きが鈍いのがさらに鈍くなるだけで普通に頭がなくても動く。
多分、もう脳が機能していないし、知覚や知能といったものも失われているから、関係ないんだろう。
頭部がなければ、噛みつかれて生きたまま食べられることはないのでその点では確かにありなんだけど。
それでも長く伸びた爪で引っかかれたら、軽傷では済まないのは確かなのだ。
「それじゃ、駄目なんですよ。アレは動けないように手足も落とさないと……」
「「…………」」
そんなギョッとした顔をされても困る。
恐らく、頭部と手足を落としても彼らは完全に止まっていないのだから。
最善は燃やすこと。
最上級の不死生物(アンデッド)なんて言われているヴァンパイアですら、燃やされると簡単には復活できないらしい。
リビングデッドはアンデッドの中では最弱!
……かどうかは分からないけど、弱い部類のはず。
実体がない霊体のもいれば、魔法や特殊能力を持っているのが多いのだ。
本能的に人間に襲い掛かって来るだけの動く死体では大したことが……。
死んでるのが動いてるんだから、十分に大したこと?
そうかもしれない。
「まぁ、面倒なので燃やした方がいいです」
そう言ったら、さらにギョッとした顔をされた。
本当のことを言ったのにこれは俗にいう胡乱な目で見られるという状態では?
仕方ないわね。
あまりやりたくはないけど、やるしかないか。
「こんな風にね」
浄化(ルストラー)の力は一気に放出すると頭の痛みと倦怠感がやばい。
やばいでは説明できないほどにやばいのでやばいのだ。
何かに似ていると思ったら、二日酔い。
それも相当に重症の二日酔いでさらに船酔いまでしている。
そんな超やばやばになるのでなるべく、やりたくはない。
ただ、一気に放出しなければいいだけということに気付いた。
家宝のミゼリコルドには不思議で便利な機能がある。
魔法を刀身に宿らせたり、逆にそれを放出したりができるらしい。
この機能に気付いたのはシル。
ルストラーに活用できると気付いたのはわたし。
だから、わたしの方が賢いとも言えない……。
シルはわたしの先生のような存在でもあるし。
その割に容赦なく、投げたって?
それはそれでこれはこれ!
御先祖様には悪いと思ったけど、ミゼリコルドにもちょっとした細工をした。
貴重なミスリルはミスリル繊維と呼ばれる糸状に加工されたものがあって、それを編んで加工したローブやチェインメイルが珍重されている。
ミゼリコルドと一緒に伝来のミスリルで編まれた装束があったのでそれを分解して、糸に戻した。
そのミスリルの糸をミゼリコルドに結んだ。
これで投げて、手元に戻すのが可能になった。
ミゼリコルドにルストラーの蒼い炎をちょっとだけ、乗せる。
振り回すだけでリビングデッドくらいなら、余裕で浄化できるのだ。
これは譲れない。
アフターケアまでコミコミでしっかりとやりたい派なのだ。
ただ、それだけのこと。
だから、ちょっとした意趣返しでイケメン二人がびっくりした顔を見せてくれたら、それで満足だったりもする。
「残念なお知らせです」
「「は?」」
顔の整った人が二人とも鳩が豆鉄砲でも食った表情をした。
これは何度、見ても飽きないと思う。
そんな気がする。
美人は三日で飽きる。
薄らとなった前世の記憶にそういう格言があったはず。
自信はない。
あれは感情が薄くて、表情が豊かでなければ、どんなに整った容姿であっても見飽きる。
でも、例え整っていなくても感情表現が豊かで表情も朗らかだったら、見飽きない。
そういうことなんじゃないだろうか。
「ニア。真面目にやろう?」
「あぁ? うん。分かってるわ」
シルは元ゴーレム、今もうさぎのぬいぐるみなガワだけでゴーレムだけど融通が利かないところがある。
ちょっとした占い師ジョークがゴーレムには分からないだけ!
「王子様とその家来さん」
あれ?
まずいことを言っちゃった?
鳩が豆鉄砲から、一気に緊迫感溢れる顔になったような……。
「わたし達、完璧に完全に囲まれているんです」
でも、今の一言でわたしに対して、向けられていた疑念は消えたと思う。
周囲への警戒心に一気に切り替えて、抜剣するんだからプロは違うわね。
わたし達をの周りの地面から、人間の腕が生えるように伸びて、それは姿を現した。
一本じゃない。
何本もの腕が伸びてくる様子は何度も見慣れた光景でもぞっとする。
「何だ、あれは?」
「あれは動く死体!?」
さすがこの世界で生まれ育ったプロの冒険者さん。
よく知っている。
またの名を生ける屍、リビングデッド。
でも、これは合っているようで合っていない。
間違った名だと思う。
彼らは蘇った訳ではない。
元から宿っていた魂が抜けてしまった状態とでも言えば、いいんだろうか。
器だけあって中に満たす液体がない飲み物。
そういうのを想像すれば、分かりやすい。
だけど生命がないからこそ厄介とも言える。
剣術に長けた人が感じる気の流れもないし、魔法使いが感じる魔力の流れもない。
イケメン二人は冒険者として手練れみたいだけど、全く気付いていなかったのがその証拠だ。
なぜかは分からないけど、彼らのように生命のない者がわたしには視える。
これを利用しない手はないだろう。
幽霊退治専門の冒険者をやっていた理由でもある。
「だから、ニア。真面目にやらないと!」
「分かってるわ。シル、頑張って!」
「な、なんてことするうさー」
大きく振りかぶって、シルをリビングデッドの群れに投げつけた。
転生前にスポーツ経験があった記憶はないし、転生してもそれほどの身体能力はないわたしが投げたところで大した威力は出ない。
いいや、違った。
シルはだいたいがもふもふしたうさぎのぬいぐるみに過ぎない。
どんなに運動神経がいい人が投げたところで大した威力にはならないはず。
その割に凄い勢いで飛んでいった気がするけど多分、気のせい。
突っ込んだシルに当たったリビングデッドが爆散したように見えたのも多分、気のせい。
「殿下! 頭がヤツラの弱点です」
「なるほど」
「あっ」
家来さんの方はリビングデッドと過去に戦った経験があるんだろうか。
双剣を操って、風のように駆けながらリビングデッドの首を次々に刎ねていく様子はちょっとした芸術作品を見ている気さえしてくる。
でも、これも間違っていたりするのだ。
彼らは首を刎ねても機能を停止しない。
元々、動きが鈍いのがさらに鈍くなるだけで普通に頭がなくても動く。
多分、もう脳が機能していないし、知覚や知能といったものも失われているから、関係ないんだろう。
頭部がなければ、噛みつかれて生きたまま食べられることはないのでその点では確かにありなんだけど。
それでも長く伸びた爪で引っかかれたら、軽傷では済まないのは確かなのだ。
「それじゃ、駄目なんですよ。アレは動けないように手足も落とさないと……」
「「…………」」
そんなギョッとした顔をされても困る。
恐らく、頭部と手足を落としても彼らは完全に止まっていないのだから。
最善は燃やすこと。
最上級の不死生物(アンデッド)なんて言われているヴァンパイアですら、燃やされると簡単には復活できないらしい。
リビングデッドはアンデッドの中では最弱!
……かどうかは分からないけど、弱い部類のはず。
実体がない霊体のもいれば、魔法や特殊能力を持っているのが多いのだ。
本能的に人間に襲い掛かって来るだけの動く死体では大したことが……。
死んでるのが動いてるんだから、十分に大したこと?
そうかもしれない。
「まぁ、面倒なので燃やした方がいいです」
そう言ったら、さらにギョッとした顔をされた。
本当のことを言ったのにこれは俗にいう胡乱な目で見られるという状態では?
仕方ないわね。
あまりやりたくはないけど、やるしかないか。
「こんな風にね」
浄化(ルストラー)の力は一気に放出すると頭の痛みと倦怠感がやばい。
やばいでは説明できないほどにやばいのでやばいのだ。
何かに似ていると思ったら、二日酔い。
それも相当に重症の二日酔いでさらに船酔いまでしている。
そんな超やばやばになるのでなるべく、やりたくはない。
ただ、一気に放出しなければいいだけということに気付いた。
家宝のミゼリコルドには不思議で便利な機能がある。
魔法を刀身に宿らせたり、逆にそれを放出したりができるらしい。
この機能に気付いたのはシル。
ルストラーに活用できると気付いたのはわたし。
だから、わたしの方が賢いとも言えない……。
シルはわたしの先生のような存在でもあるし。
その割に容赦なく、投げたって?
それはそれでこれはこれ!
御先祖様には悪いと思ったけど、ミゼリコルドにもちょっとした細工をした。
貴重なミスリルはミスリル繊維と呼ばれる糸状に加工されたものがあって、それを編んで加工したローブやチェインメイルが珍重されている。
ミゼリコルドと一緒に伝来のミスリルで編まれた装束があったのでそれを分解して、糸に戻した。
そのミスリルの糸をミゼリコルドに結んだ。
これで投げて、手元に戻すのが可能になった。
ミゼリコルドにルストラーの蒼い炎をちょっとだけ、乗せる。
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