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5 スローライフはいと遠きものなり
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既に人の顔をしていない。
この世を恨む感情が強かったのだろう。
目に白目がなくなって、憎悪と怨恨に彩れた禍々しい色合いをしていた。
その目で見る物全てが敵とでも言いたげな決して、目を合わせてはいけない目だ。
「これは手遅れよね」
「仕方ないぴょんぴょん。浄化だうさうさ」
「何、それ?」
「うさぎらしい喋り方うさ?」
「「…………」」
そもそもがうさぎさんは喋らないと思うんだけど、そこはツッコミを入れないでおこう。
だいたい君はうさぎはうさぎでもぬいぐるみでしょうに!
うさぎさんが言葉を喋るのよりも怪奇現象だってことに気付いていないんだから。
わたしとシルが場にそぐわないあほなやり取りをしている間に振り返った子供の霊体は半透明から、徐々に実体化していった。
より危険な兆候。
霊体の時には間接的な現象しか起こせなかった。
よく知られるポルターガイスト現象みたいのだ。
勝手に扉が開閉したり、物が飛び交う。
あれはあれでとても危ない現象ではあるけど、その霊体の領域に侵入しない限りは安全だと言える。
まだ、この段階であれば、なぜこの世に未練があるのか。
その未練は解消できるのかを聞き出して、どうにか退去を願えるのだ。
これまでに出てきた何か――つまりは四体の霊はそれで解決できた。
でも、実体化したらそんな悠長なことを言ってられない。
楔から解き放たれた悪霊は何をしでかすか分かったものじゃない。
霊体の時でも物理的な干渉を引き起こしていたのが、より凶悪で手が付けられなくなるからだ。
「きいいしゃあああ」
もう人の言葉すら喋れなくなったソレは解読不能な耳障りな叫び声を上げると襲い掛かって来た。
「危ないわ」
「余所見は怪我の元だよ、ニア」
おめーが妙な語尾で喋りかけたんでしょうが! と腹を立てている場合ではない。
わたしは霊体が視える。
それはとても特殊な能力で珍しいものではある。
だからと言って、特別に身体能力が高かったり、スーパーパワーが備わっている訳じゃない。
魔女の娘と言っても至って、平凡なものなのだ。
ちょっと無駄な動きになるのは否めないけど、間一髪のところで連続バク転をして、間合いを取った。
子供の霊体改め悪霊の長く尖った爪は空を切っただけでわたしは無事である。
バク転をしたのでちょっとばかり、息が上がったくらいか。
「疲れるから、あまりやりたくないんだよね」
「贅沢は敵だよ、ニア。さっさと勤労で感謝だ」
「はい、はい」
シルの勤労で感謝に大した意味なんてない。
よく動き、よく食べる。
それだけのこと。
ぬいぐるみなのに食べるのかって?
「もしゃもしゃ。あまり美味しくないうさ……」
こちらもきしゃあと言う叫びがぴったりなほどに顔半分まで大きく開かれた口は牙だらけ。
その口に悪霊の片腕を加え、もしゃもしゃとしている様は軽くホラーである……。
閉じていれば、まるでバツ印みたいな可愛らしいお口のうさぎちゃんぬいぐるみなのに。
あの様子ではもうやっちゃってもいいということだろう。
そう結論付けて、とっておきを披露する。
冗談ではなく、本当に疲れる業だ。
「浄化」
わたしの言葉と同時にシルに片腕を食いちぎられながらもまだ暴れようとする悪霊が炎に包まれた。
全身を焼かれ、もがき苦しむ悪霊だけど逃れることはできない。
これがあの死の恐怖と引き換えにわたしが手に入れた不思議な力の一環だ。
あの炎は普通の炎ではない。
蒼い炎。
でも、普通の人が触っても熱くない。
その代わり、不浄なものと認識されたものは塵一つ残さず焼き尽くす。
だから、浄化の炎と名付けたのだ。
ただし、代償がある。
ちりちりと頭の中が焼かれるような嫌な感覚。
全身に感じる疲労感と倦怠感。
効果は抜群だけど、あまりやりたくない理由だ。
そうは言ってもまともに悪霊と物理的にやり合うよりはいくらかましだし……。
おばちゃんに解決した旨を伝え、所属する冒険者ギルドに報告して、任務完了。
これでようやくお金が貰える。
夢とロマンに溢れた冒険者。
意外と現実はこんなものである……。
「あぁ。疲れた」
そして、ようやく戻って来れたのが我が城。
マイスイートホーム!
フェンネルの中心からは大分離れた郊外にある一軒家だ。
一軒家と言うと聞こえはいいけど、こじんまりとした小さな丸太小屋。
でも、一人と一羽かどうかも分からないぬいぐるみが住むのに手狭ということもない。
十分に快適な暮らしを送れるマイホームだと胸を張って言える。
買った当初はとても人が住めた環境ではなかったのだから、ここは元ゴーレムたるシルに感謝するしかないのだけど。
廃屋同然のぼろいログハウス。
それだけでも格安になりそうな条件ではあるけど、ほぼただのような値段で購入できた大きな理由はここが郊外でもいわくありな場所でもあるからだ。
ログハウスが建っているのは郊外の池の畔。
この池がよろしくなかったらしい。
日中であれば、それなりに風光明媚な景色と言えるんだけど、日が落ちるとかなりやばい。
どれくらいヤバいかって言うと小鳥や虫の鳴き声が気持ちいいね! ではなく、不可解な声が夜な夜な聞こえる怪奇スポットだったのだ。
そりゃ、誰も買わないし、近づきもしない訳である。
それをどうにかできるわたしにとっては実にいい買い物だった。
これで晴れて、スローライフ生活。
晴耕雨読の暮らしで悠々と暮らせる。
そう思っていたわたしが甘かったらしい。
スローライフとはいえ、日々同じことの繰り返し。
作業のようにルーチンをこなす日々は変わらない。
スローライフって、何だろうと自問自答しながら、お化け退治や辻占いをしながら生計を立てる冒険者稼業なのである。
戻りたかった世界も既に思い出せず、これといってやりたいことも思いつかないわたしに神が与えた罰とでも言うのだろうか。
それでもこれはまだ、平穏な日常だったのだ。
そう思える日が来ようとはこの時のわたしは考えもしなかった。
この世を恨む感情が強かったのだろう。
目に白目がなくなって、憎悪と怨恨に彩れた禍々しい色合いをしていた。
その目で見る物全てが敵とでも言いたげな決して、目を合わせてはいけない目だ。
「これは手遅れよね」
「仕方ないぴょんぴょん。浄化だうさうさ」
「何、それ?」
「うさぎらしい喋り方うさ?」
「「…………」」
そもそもがうさぎさんは喋らないと思うんだけど、そこはツッコミを入れないでおこう。
だいたい君はうさぎはうさぎでもぬいぐるみでしょうに!
うさぎさんが言葉を喋るのよりも怪奇現象だってことに気付いていないんだから。
わたしとシルが場にそぐわないあほなやり取りをしている間に振り返った子供の霊体は半透明から、徐々に実体化していった。
より危険な兆候。
霊体の時には間接的な現象しか起こせなかった。
よく知られるポルターガイスト現象みたいのだ。
勝手に扉が開閉したり、物が飛び交う。
あれはあれでとても危ない現象ではあるけど、その霊体の領域に侵入しない限りは安全だと言える。
まだ、この段階であれば、なぜこの世に未練があるのか。
その未練は解消できるのかを聞き出して、どうにか退去を願えるのだ。
これまでに出てきた何か――つまりは四体の霊はそれで解決できた。
でも、実体化したらそんな悠長なことを言ってられない。
楔から解き放たれた悪霊は何をしでかすか分かったものじゃない。
霊体の時でも物理的な干渉を引き起こしていたのが、より凶悪で手が付けられなくなるからだ。
「きいいしゃあああ」
もう人の言葉すら喋れなくなったソレは解読不能な耳障りな叫び声を上げると襲い掛かって来た。
「危ないわ」
「余所見は怪我の元だよ、ニア」
おめーが妙な語尾で喋りかけたんでしょうが! と腹を立てている場合ではない。
わたしは霊体が視える。
それはとても特殊な能力で珍しいものではある。
だからと言って、特別に身体能力が高かったり、スーパーパワーが備わっている訳じゃない。
魔女の娘と言っても至って、平凡なものなのだ。
ちょっと無駄な動きになるのは否めないけど、間一髪のところで連続バク転をして、間合いを取った。
子供の霊体改め悪霊の長く尖った爪は空を切っただけでわたしは無事である。
バク転をしたのでちょっとばかり、息が上がったくらいか。
「疲れるから、あまりやりたくないんだよね」
「贅沢は敵だよ、ニア。さっさと勤労で感謝だ」
「はい、はい」
シルの勤労で感謝に大した意味なんてない。
よく動き、よく食べる。
それだけのこと。
ぬいぐるみなのに食べるのかって?
「もしゃもしゃ。あまり美味しくないうさ……」
こちらもきしゃあと言う叫びがぴったりなほどに顔半分まで大きく開かれた口は牙だらけ。
その口に悪霊の片腕を加え、もしゃもしゃとしている様は軽くホラーである……。
閉じていれば、まるでバツ印みたいな可愛らしいお口のうさぎちゃんぬいぐるみなのに。
あの様子ではもうやっちゃってもいいということだろう。
そう結論付けて、とっておきを披露する。
冗談ではなく、本当に疲れる業だ。
「浄化」
わたしの言葉と同時にシルに片腕を食いちぎられながらもまだ暴れようとする悪霊が炎に包まれた。
全身を焼かれ、もがき苦しむ悪霊だけど逃れることはできない。
これがあの死の恐怖と引き換えにわたしが手に入れた不思議な力の一環だ。
あの炎は普通の炎ではない。
蒼い炎。
でも、普通の人が触っても熱くない。
その代わり、不浄なものと認識されたものは塵一つ残さず焼き尽くす。
だから、浄化の炎と名付けたのだ。
ただし、代償がある。
ちりちりと頭の中が焼かれるような嫌な感覚。
全身に感じる疲労感と倦怠感。
効果は抜群だけど、あまりやりたくない理由だ。
そうは言ってもまともに悪霊と物理的にやり合うよりはいくらかましだし……。
おばちゃんに解決した旨を伝え、所属する冒険者ギルドに報告して、任務完了。
これでようやくお金が貰える。
夢とロマンに溢れた冒険者。
意外と現実はこんなものである……。
「あぁ。疲れた」
そして、ようやく戻って来れたのが我が城。
マイスイートホーム!
フェンネルの中心からは大分離れた郊外にある一軒家だ。
一軒家と言うと聞こえはいいけど、こじんまりとした小さな丸太小屋。
でも、一人と一羽かどうかも分からないぬいぐるみが住むのに手狭ということもない。
十分に快適な暮らしを送れるマイホームだと胸を張って言える。
買った当初はとても人が住めた環境ではなかったのだから、ここは元ゴーレムたるシルに感謝するしかないのだけど。
廃屋同然のぼろいログハウス。
それだけでも格安になりそうな条件ではあるけど、ほぼただのような値段で購入できた大きな理由はここが郊外でもいわくありな場所でもあるからだ。
ログハウスが建っているのは郊外の池の畔。
この池がよろしくなかったらしい。
日中であれば、それなりに風光明媚な景色と言えるんだけど、日が落ちるとかなりやばい。
どれくらいヤバいかって言うと小鳥や虫の鳴き声が気持ちいいね! ではなく、不可解な声が夜な夜な聞こえる怪奇スポットだったのだ。
そりゃ、誰も買わないし、近づきもしない訳である。
それをどうにかできるわたしにとっては実にいい買い物だった。
これで晴れて、スローライフ生活。
晴耕雨読の暮らしで悠々と暮らせる。
そう思っていたわたしが甘かったらしい。
スローライフとはいえ、日々同じことの繰り返し。
作業のようにルーチンをこなす日々は変わらない。
スローライフって、何だろうと自問自答しながら、お化け退治や辻占いをしながら生計を立てる冒険者稼業なのである。
戻りたかった世界も既に思い出せず、これといってやりたいことも思いつかないわたしに神が与えた罰とでも言うのだろうか。
それでもこれはまだ、平穏な日常だったのだ。
そう思える日が来ようとはこの時のわたしは考えもしなかった。
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