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第一章 セラフィナ十二歳
第13話 悪妻、感動する
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モデストとの二度目の顔合わせから、暫くして、私は王立学園への入学準備で忙しくなった。
本来なら、一ヶ月に一度くらいの顔合わせが予定されていたのだが、優秀だと思われてしまったのが完全に悪手だった。
やらなくてはいけないことが増えてしまったのだ。
埋め合わせという意味なんだろうか?
一週間に一度、モデストから花束が送られてくるようになった。
メッセージカードなどは付いていないし、言伝もないようだから、彼がどう思って、送っているのか、分からない。
ちょっと気持ち悪いと感じてしまう。
あなたはそんなまめな人だったかしら?
本当に何か、企んでいるんじゃないの。
それとも思惑に気付かれた!?
そんなのありえないかな?
私の猫かぶり技術は相当なレベルのはずだ。
十歳のお子様に見破られるとは思えない。
モデストの件はイレギュラーなことだらけで疲れる。
だけど、昼は模範的なお嬢様を装い、夜は信頼する兄と姉と一緒に冒険者の活動を行い、独り立ちが出来るようひたすら頑張った。
やや頑張り過ぎているのは分かっている。
そのせいで少々、寝不足気味になっているのもしょうがないと割り切っている。
冒険者として、大っぴらに活動出来る訳ではないから、夜の睡眠時間を削るしかないんだもの。
だけど、この血の滲むような努力の甲斐あって、学園入学を前にして、私は実力を大いに高めることが出来た。
これもひとえにタマラ先生の教えあってのものだ。
半年弱の付き合いで彼女から、与えられたものが大きすぎて、どうやって報いればいいのか、困ってる。
そして、学園の入学式を迎えた。
そんなに感じるものなんてないと思っていたんだけど……。
人間は単純な生き物ではないって、よく分かったわ。
十二歳に戻って、まだ半年くらいしか経っていないし、入学式は二度目なのだ。
それがこんなにも感慨深いとは思ってもみなかった。
「でも、学園では孤立無援なのよね」
ナル姉もマテオ兄も去年、卒業している。
学園内に護衛やお付きの人間を連れて行くのも禁止されているのだ。
そうなると私一人で降りかかる火の粉を払わないといけない。
ただ、幸いなことにあまり、心配することはないだろうと楽観視している。
まず、私は国王陛下の姪である。
これは非常に大きなアドバンテージだ。
建前上、学園内では身分差がないとなっているんだけど、そうでもないんだから。
つまり、私を脅かす存在は実質いない……はず。
入学式が行われる大講堂に向かう人々にふと目をやる。
付き添いのいない生徒と親族と思しき大人が付き添っている生徒の二種類がいるようだ。
付き添いがいないのは十中八九、ほぼ高位の貴族や裕福な平民だろう。
入学前にある程度の教育水準に達しているからというのが理由だ。
だから、学園で学ぶのは社交性と将来の人脈づくりだったりする。
それだけが理由という訳ではないんだけど、家族は付き添わないのが慣例らしい。
私もそうなのよね。
本当はお父様もお母様も来たがってたのだ。
でも、ここで弱みを見せるべきではないから、『私、一人で頑張りますわ』って言ったら、付いていけないことを残念がっていた。
それでも私の成長ぶりに感動していた。
前回みたいな失敗はしたくないもの。
一人で乗り切らなきゃ! それでお友達を作るの!
「よし、頑張る……ぐへぇ」
気合を入れ、天に向かって手を突き上げようとしたまさにその時、背中に強い衝撃を受けた。
思わず、変な声を上げながら、つんのめってしまい、ちょっとカッコの悪い転び方をした。
危うく、地面と熱烈なファーストキスをしちゃうところだったわ……。
咄嗟に手を付いたから、膝をすりむく程度で済んだみたい。
一体、何なの?
誰かがぶつかってきたんだろうか?
それとも悪意のある体当たりでもされちゃったとか?
まだ、恨みを買ってないと思うんだけど、どうなってるのよ。
本来なら、一ヶ月に一度くらいの顔合わせが予定されていたのだが、優秀だと思われてしまったのが完全に悪手だった。
やらなくてはいけないことが増えてしまったのだ。
埋め合わせという意味なんだろうか?
一週間に一度、モデストから花束が送られてくるようになった。
メッセージカードなどは付いていないし、言伝もないようだから、彼がどう思って、送っているのか、分からない。
ちょっと気持ち悪いと感じてしまう。
あなたはそんなまめな人だったかしら?
本当に何か、企んでいるんじゃないの。
それとも思惑に気付かれた!?
そんなのありえないかな?
私の猫かぶり技術は相当なレベルのはずだ。
十歳のお子様に見破られるとは思えない。
モデストの件はイレギュラーなことだらけで疲れる。
だけど、昼は模範的なお嬢様を装い、夜は信頼する兄と姉と一緒に冒険者の活動を行い、独り立ちが出来るようひたすら頑張った。
やや頑張り過ぎているのは分かっている。
そのせいで少々、寝不足気味になっているのもしょうがないと割り切っている。
冒険者として、大っぴらに活動出来る訳ではないから、夜の睡眠時間を削るしかないんだもの。
だけど、この血の滲むような努力の甲斐あって、学園入学を前にして、私は実力を大いに高めることが出来た。
これもひとえにタマラ先生の教えあってのものだ。
半年弱の付き合いで彼女から、与えられたものが大きすぎて、どうやって報いればいいのか、困ってる。
そして、学園の入学式を迎えた。
そんなに感じるものなんてないと思っていたんだけど……。
人間は単純な生き物ではないって、よく分かったわ。
十二歳に戻って、まだ半年くらいしか経っていないし、入学式は二度目なのだ。
それがこんなにも感慨深いとは思ってもみなかった。
「でも、学園では孤立無援なのよね」
ナル姉もマテオ兄も去年、卒業している。
学園内に護衛やお付きの人間を連れて行くのも禁止されているのだ。
そうなると私一人で降りかかる火の粉を払わないといけない。
ただ、幸いなことにあまり、心配することはないだろうと楽観視している。
まず、私は国王陛下の姪である。
これは非常に大きなアドバンテージだ。
建前上、学園内では身分差がないとなっているんだけど、そうでもないんだから。
つまり、私を脅かす存在は実質いない……はず。
入学式が行われる大講堂に向かう人々にふと目をやる。
付き添いのいない生徒と親族と思しき大人が付き添っている生徒の二種類がいるようだ。
付き添いがいないのは十中八九、ほぼ高位の貴族や裕福な平民だろう。
入学前にある程度の教育水準に達しているからというのが理由だ。
だから、学園で学ぶのは社交性と将来の人脈づくりだったりする。
それだけが理由という訳ではないんだけど、家族は付き添わないのが慣例らしい。
私もそうなのよね。
本当はお父様もお母様も来たがってたのだ。
でも、ここで弱みを見せるべきではないから、『私、一人で頑張りますわ』って言ったら、付いていけないことを残念がっていた。
それでも私の成長ぶりに感動していた。
前回みたいな失敗はしたくないもの。
一人で乗り切らなきゃ! それでお友達を作るの!
「よし、頑張る……ぐへぇ」
気合を入れ、天に向かって手を突き上げようとしたまさにその時、背中に強い衝撃を受けた。
思わず、変な声を上げながら、つんのめってしまい、ちょっとカッコの悪い転び方をした。
危うく、地面と熱烈なファーストキスをしちゃうところだったわ……。
咄嗟に手を付いたから、膝をすりむく程度で済んだみたい。
一体、何なの?
誰かがぶつかってきたんだろうか?
それとも悪意のある体当たりでもされちゃったとか?
まだ、恨みを買ってないと思うんだけど、どうなってるのよ。
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