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第二部 偽りから生まれる真実
第57話 私にも出来ます
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射し込む太陽の眩い光で気持ちのいい目覚め。
まずは手首を直角に曲げ、手を前に出します。
大きく、息を吐きながら、ゆっくりと指を一本ずつ折って……って、んー?
「え? あれ?」
私はいつ部屋に戻ったんでしょうか?
昨夜、シルさんとお話していて、途中で急にストンと記憶が抜けているんですよね。
何か、言われたような記憶があるのですが、思い出せません。
それに自分で部屋に戻って、寝たのでしょうか。
シルさんが運んでくれた?
本人に聞けば、はっきりするのですが……。
『私、寝てしまったのでしょうか? シルさんが運んでくれたんですね。ありがとうございます』と言えば、いいのでしょうか。
一方的に意識しているみたいで気持ち悪いと思われるのではないでしょうか。
悪い考えが頭の中をグルグルと巡って、よろしくありません。
こんなことでは今日の朝御飯も失敗しそうです……。
奇跡です。
奇跡が起きました。
起床時のルーティンワークをちゃんと、こなしたのがよかったのでしょうか。
とにかく、大成功です。
「アリーさん。これはどうやったのですか?」
「ママ。はーとがしゅあわあせ」
「偶然、出来たんです♪」
目玉焼きが焦げていません。
いえ、そうではなくて!
なぜかは分からないのですが、目玉焼きがハート型になったんです。
やはり、日頃の行いがいいからでしょうか?
迷える仔羊を始末するのは、神の御心にかなっているんですね。
え? 何でしょうか?
パミュさんに疑いの目を向けられているような……。
何か、変なことを言ったでしょうか?
「ママ。じしんもて」
「大丈夫です、パミュさん。この地方で地震は滅多に起きませんよ」
あれ? どうしたのでしょうか?
パミュさんの憐れな者を慈しむようでいて、どこか違うところを見ているような不思議な目をしています。
シルさんはシルさんで口許を押さえ、くつくつと笑っています。
でも、なぜか理由が分からないけど、幸せなんです。
胸の中がほんのりと温かくなるような錯覚を覚えて。
一人では決して、味わえない幸せ。
ずっと三人で一緒にいられたら、いいのに……。
ええ、朝食の時は三人一緒がいいと願いました。
でも、まさか今日一日ずっと一緒に行動することになるとは思っていませんでした。
「ママ、どした?」
「え? 何でもありませんよ」
パミュさんを真ん中にして、三人で歩いているとまるで本物の家族そのものではないでしょうか?
おまけに手を繋いでいるんです。
これはもう家族です!
「チッチッチッ。ママ。さんにんでない。よにん」
「え、えぇ」
パミュさんの背中には灰色猫のぬいぐるみが、括りつけられています。
最初は抱っこして、歩きたかったようですが、それではいざという時に対処が出来ません。
もしも、暴漢に襲われた場合、両手がふさがれていると蹴りでしか、対応が出来ません。
勿論、蹴りだけでも十分に対応は出来ますし、熊や狼程度であれば、蹴りだけでも仕留められないことはありません。
ただ、それにははっきりとした視界を確保することが大事です。
ぬいぐるみにより、それが妨げられることは明らかではないでしょうか。
そこで私が金糸で縁取りがされたグリーンのリボンを見繕って、彼女に括りつけたという訳なんです。
「パミュさん。どうされました?」
「な、なでもない」
少々、パミュさんの顔が青褪めているように見受けられます。
歩くのに疲れたのでしょうか?
それともまさか、流感!?
いけません。
「ママ、ちがう。パミュ、だいじょぶ」
はっきりと頭を左右に振って、否定されました。
本当に大丈夫なのでしょうか。
心配です。
シルさんはシルさんで私達のやり取りを見て、目を細めて……笑いをこらえていませんか?
まずは手首を直角に曲げ、手を前に出します。
大きく、息を吐きながら、ゆっくりと指を一本ずつ折って……って、んー?
「え? あれ?」
私はいつ部屋に戻ったんでしょうか?
昨夜、シルさんとお話していて、途中で急にストンと記憶が抜けているんですよね。
何か、言われたような記憶があるのですが、思い出せません。
それに自分で部屋に戻って、寝たのでしょうか。
シルさんが運んでくれた?
本人に聞けば、はっきりするのですが……。
『私、寝てしまったのでしょうか? シルさんが運んでくれたんですね。ありがとうございます』と言えば、いいのでしょうか。
一方的に意識しているみたいで気持ち悪いと思われるのではないでしょうか。
悪い考えが頭の中をグルグルと巡って、よろしくありません。
こんなことでは今日の朝御飯も失敗しそうです……。
奇跡です。
奇跡が起きました。
起床時のルーティンワークをちゃんと、こなしたのがよかったのでしょうか。
とにかく、大成功です。
「アリーさん。これはどうやったのですか?」
「ママ。はーとがしゅあわあせ」
「偶然、出来たんです♪」
目玉焼きが焦げていません。
いえ、そうではなくて!
なぜかは分からないのですが、目玉焼きがハート型になったんです。
やはり、日頃の行いがいいからでしょうか?
迷える仔羊を始末するのは、神の御心にかなっているんですね。
え? 何でしょうか?
パミュさんに疑いの目を向けられているような……。
何か、変なことを言ったでしょうか?
「ママ。じしんもて」
「大丈夫です、パミュさん。この地方で地震は滅多に起きませんよ」
あれ? どうしたのでしょうか?
パミュさんの憐れな者を慈しむようでいて、どこか違うところを見ているような不思議な目をしています。
シルさんはシルさんで口許を押さえ、くつくつと笑っています。
でも、なぜか理由が分からないけど、幸せなんです。
胸の中がほんのりと温かくなるような錯覚を覚えて。
一人では決して、味わえない幸せ。
ずっと三人で一緒にいられたら、いいのに……。
ええ、朝食の時は三人一緒がいいと願いました。
でも、まさか今日一日ずっと一緒に行動することになるとは思っていませんでした。
「ママ、どした?」
「え? 何でもありませんよ」
パミュさんを真ん中にして、三人で歩いているとまるで本物の家族そのものではないでしょうか?
おまけに手を繋いでいるんです。
これはもう家族です!
「チッチッチッ。ママ。さんにんでない。よにん」
「え、えぇ」
パミュさんの背中には灰色猫のぬいぐるみが、括りつけられています。
最初は抱っこして、歩きたかったようですが、それではいざという時に対処が出来ません。
もしも、暴漢に襲われた場合、両手がふさがれていると蹴りでしか、対応が出来ません。
勿論、蹴りだけでも十分に対応は出来ますし、熊や狼程度であれば、蹴りだけでも仕留められないことはありません。
ただ、それにははっきりとした視界を確保することが大事です。
ぬいぐるみにより、それが妨げられることは明らかではないでしょうか。
そこで私が金糸で縁取りがされたグリーンのリボンを見繕って、彼女に括りつけたという訳なんです。
「パミュさん。どうされました?」
「な、なでもない」
少々、パミュさんの顔が青褪めているように見受けられます。
歩くのに疲れたのでしょうか?
それともまさか、流感!?
いけません。
「ママ、ちがう。パミュ、だいじょぶ」
はっきりと頭を左右に振って、否定されました。
本当に大丈夫なのでしょうか。
心配です。
シルさんはシルさんで私達のやり取りを見て、目を細めて……笑いをこらえていませんか?
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