10 / 11
第10話 救われるもの
しおりを挟む
その時、天に掲げたノートゥングに異変が起きた。
刀身に入っていた無数のヒビが急進行していくとまるで蜘蛛の巣のように全体に広がっていく。
そして、粉々に砕け散った。
ボクの手元に残っているのは白銀の柄だけだ……。
「どういうことだ!? ノートゥング!」
何もいない虚空に向けて、叫ぶボクの姿はさぞかし、滑稽だろう。
普通はそう考えるものだ。
ところがアンからは真っ直ぐな視線を向けられる。
穢れを知らない無垢で純粋な瞳はボクに生まれた心に刺さる。
やめろ! やめてくれ!
そんな目でボクを見ないでくれ。
ボクには何も出来ないんだ。
『デウス・エクス・マキナ。アナタに力を。アナタにしかデキナイ』
ボクの頭の中に再び、あの無機質で感情を感じさせない機械のような声が響いた。
それと同時にプログラミング言語のような奇妙な文字列が浮かんでは消えていく。
まるでボクの脳にインプットするかのように……。
そして、全てが終わった時、理解した。
ノートゥングが……彼女がなぜ、ここにいたのか。
彼女は神々によって、造られた神剣だった。
神々が使う為に造られたのではない。
神々の運命を変えるべく、人間の勇者に与えられたのだ。
しかし、勇者はノートゥングを使えなかった。
それを悲嘆した神々の王ヴォータンは自らが与えたノートゥングを魔槍グングニルで貫き、粉々に砕いてしまった。
ヴォータンは言った。
『いずれ、この剣はその真の姿を取り戻すであろう。神でもなく、人でもない者によってな』
堕落した人間はやがて、ヴォータンの言葉を忘れ、砕かれたノートゥングの刃を形だけ整えた。
真実は闇に埋もれ、ノートゥングは伝説となった。
「それがボクだと言うのか?」
『イエスユアマジェスティ』
バラバラとノートゥングの刀身が全て、崩れ落ちていった。
残ったのは柄だけだ。
『解釈実行」
再び、ノートゥングの声が頭に響く。
その瞬間、剣の柄に副えていた掌が急速に熱くなっていく。
まるで生命を吸われるような錯覚と意識が遠くなる感覚を覚えた。
『具現化』
刃の失われたノートゥングが何か、獣が唸るような奇妙な音を上げ始める。
それと同時にノートゥングにも変化が現れた。
柄から、光り輝く粒子が発生されていき、刃の形を形成していく。
「光の剣か」
分かったよ、ノートゥング。
これで何をすればいいのか。
ボクはノートゥングを握る拳に力を込めるとこちらを微動だにせず、見つめていたアンジェに向けて、勢いよく振り下ろす。
「解釈実行。君の呪いを今、解く」
刀身に入っていた無数のヒビが急進行していくとまるで蜘蛛の巣のように全体に広がっていく。
そして、粉々に砕け散った。
ボクの手元に残っているのは白銀の柄だけだ……。
「どういうことだ!? ノートゥング!」
何もいない虚空に向けて、叫ぶボクの姿はさぞかし、滑稽だろう。
普通はそう考えるものだ。
ところがアンからは真っ直ぐな視線を向けられる。
穢れを知らない無垢で純粋な瞳はボクに生まれた心に刺さる。
やめろ! やめてくれ!
そんな目でボクを見ないでくれ。
ボクには何も出来ないんだ。
『デウス・エクス・マキナ。アナタに力を。アナタにしかデキナイ』
ボクの頭の中に再び、あの無機質で感情を感じさせない機械のような声が響いた。
それと同時にプログラミング言語のような奇妙な文字列が浮かんでは消えていく。
まるでボクの脳にインプットするかのように……。
そして、全てが終わった時、理解した。
ノートゥングが……彼女がなぜ、ここにいたのか。
彼女は神々によって、造られた神剣だった。
神々が使う為に造られたのではない。
神々の運命を変えるべく、人間の勇者に与えられたのだ。
しかし、勇者はノートゥングを使えなかった。
それを悲嘆した神々の王ヴォータンは自らが与えたノートゥングを魔槍グングニルで貫き、粉々に砕いてしまった。
ヴォータンは言った。
『いずれ、この剣はその真の姿を取り戻すであろう。神でもなく、人でもない者によってな』
堕落した人間はやがて、ヴォータンの言葉を忘れ、砕かれたノートゥングの刃を形だけ整えた。
真実は闇に埋もれ、ノートゥングは伝説となった。
「それがボクだと言うのか?」
『イエスユアマジェスティ』
バラバラとノートゥングの刀身が全て、崩れ落ちていった。
残ったのは柄だけだ。
『解釈実行」
再び、ノートゥングの声が頭に響く。
その瞬間、剣の柄に副えていた掌が急速に熱くなっていく。
まるで生命を吸われるような錯覚と意識が遠くなる感覚を覚えた。
『具現化』
刃の失われたノートゥングが何か、獣が唸るような奇妙な音を上げ始める。
それと同時にノートゥングにも変化が現れた。
柄から、光り輝く粒子が発生されていき、刃の形を形成していく。
「光の剣か」
分かったよ、ノートゥング。
これで何をすればいいのか。
ボクはノートゥングを握る拳に力を込めるとこちらを微動だにせず、見つめていたアンジェに向けて、勢いよく振り下ろす。
「解釈実行。君の呪いを今、解く」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~
鐘雪アスマ
ファンタジー
海道刹那はごく普通の女子高生。
だったのだが、どういうわけか異世界に来てしまい、
そこでヒョウム国の皇帝にカルマを移されてしまう。
そして死後、このままでは他人の犯した罪で地獄に落ちるため、
一度生き返り、カルマを消すために善行を積むよう地獄の神アビスに提案される。
そこで生き返ったはいいものの、どういうわけか最強魔力とチートスキルを手に入れてしまい、
災厄級の存在となってしまう。
この小説はフィクションであり、実在の人物または団体とは関係ありません。
著作権は作者である私にあります。
恋愛要素はありません。
笑いあり涙ありのファンタジーです。
毎週日曜日が更新日です。
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
赤毛のアンナ 〜極光の巫女〜
桐乃 藍
ファンタジー
幼馴染の神代アンナと共に異世界に飛ばされた成瀬ユウキ。
彼が命の危機に陥る度に発動する[先読みの力]。
それは、終焉の巫女にしか使えないと伝えられる世界最強の力の一つだった。
世界の終わりとされる約束の日までに世界を救うため、ユウキとアンナの冒険が今、始まる!
※2020年8月17日に完結しました(*´꒳`*)
良かったら、お気に入り登録や感想を下さいませ^ ^
------------------------------------------------------
※各章毎に1枚以上挿絵を用意しています(★マーク)。
表紙も含めたイラストは全てinstagramで知り合ったyuki.yukineko様に依頼し、描いて頂いています。
(私のプロフィール欄のURLより、yuki.yukineko 様のインスタに飛べます。綺麗で素敵なイラストが沢山あるので、そちらの方もご覧になって下さい)
ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~
アオイソラ
ファンタジー
おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)
ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!
転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!
プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。
「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」
えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ!
「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」
顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。
「助けてくれ…」
おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!
一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。
イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!
北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚!
※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️
「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる