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第二部 第二次モーラ合戦
第37話 龐統、幼女と夫婦漫才をする
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夜駆けがついに始まりおった。
第一陣のエーリクが雄たけびを上げながら、ヴァームフス・オルシャ連合軍に牙を剥く。
あれほど、なるべく目立たないように釘を刺しておいたが、無理だったか。
ありゃ、きっとこの土地の者の性だろうなあ。
動きが実に生き生きとしておるよ。
止めようもあるまいて。
まあ、仕方あるまい。
元々、ある程度は派手にやることが策の目的である。
ヴァームフスからでも視認が出来るくらいに暴れてこそ、最良なのだよ。
「まさしく豪勇と言うべきだなあ」
「姉妹がスカウトしたくなる戦いぶり」
「す、すかちゃらぽんとは何ぞ?」
「シゲン。お前の耳は大丈夫か?」
「大丈夫だあ。モンダイナイ」
いかん、いかん。
ドリーにかまっている場合ではない。
それにしてもあやつは色々とおかしなヤツであるな。
「どっせえええい!」と気合十分に両手斧を振り回し、ちぎっては投げちぎっては投げという表現そのものの無双振りを見せておる。
どうなっとるんだね。
あやつの斧……いや、腕力は。
振り回した両手斧を氷原に叩きつけた瞬間、軽い地割れと振動がしおったぞ。
さらには衝撃波まで発生しているではないか。
これは予想の上を行く活躍ぶりかもしれんぞ。
あまりにもエーリクが暴れるからか、凍結していた湖の氷も一部が割れたようだなあ。
うむうむ。
よいぞ、よいぞ。
もっとやれ。
エーリクに従う三百の兵も楔のように敵陣に刺さっておる。
実にいい感じである。
「ここまではワシの目論見通りだよ」
「シゲン。次の手か?」
「うむ。抗いがたしと考えたら、どう出るのか。あちらさんの動きが手に取るように分かるぞい」
当たるを幸いと千切られるのを嫌がり、弓を使うだろうよ。
そんなこと、鼻から分かっとるのだ。
その為に後詰めとして、投擲用の斧を持たせた軽装歩兵を用意しておいたのだからなあ。
斧は怖いぞ。
回転しながら、飛んでいくのを見たことがあるかね?
ビュッといって、ドスッなのだよ。
「ドリーさんや」
「何だね、シゲン君」
「投げる斧は怖いんだなあ……」
「知らなかったのか。これだから、シゲンは」
ゴミでも見るような最高に蔑んだ幼女の視線、最高だな!
いかん、いかんぞ、士元。
何を考えておるんだ。
違う! 違う! そうではない!
ワシにそういう趣味はないのだよ、全く。
一斉に投擲される斧の威力があれほどあるとは思っていなかっただけのことであるよ。
ビュンでドカーンでバキでボキだ、異常。
「シゲン。ボキャブラリーが貧相になった」
「ぼきゃしにましぇん? 何のことだね?」
「ねぇ、シゲン。耳掃除をしてやろうか?」
「え、遠慮しておくでごじゃりますよ」
ドリーの目が笑っていない。
アレはワシの耳を殺す者の目であるぞ、間違いない。
ザクッとやって、「おっと、手が滑った。ひっーひひひひっ」などと言う気だ。
「ほぉ? よく分かっている。さすが、シゲン」
「やる気だったんかーい」
「ひっーひひひひっ」
あまりにも策通りに事が進むのでワシがドリーとくだらないやり取りをしている間に面倒なことが起きようとしていることに気付いておらんかった。
「おのれ! これ以上の狼藉は許さんぞ。天に変わって、このハクヤク・ドラゴンが貴様を討つ!!」
漆黒の甲冑を纏ったエーリクとは対照的な白銀の甲冑に身を包んだ細面の青年が、エーリクら重装歩兵の前に立ち塞がっていたのだ。
夜の帳が下りた闇の中でも自らが光り輝かんと眩さを放つ白銀の甲冑を纏いし者は、ワシと同じように濃い色彩の髪を風に靡かせておった。
「あやつは一体、何者ぞ」
第一陣のエーリクが雄たけびを上げながら、ヴァームフス・オルシャ連合軍に牙を剥く。
あれほど、なるべく目立たないように釘を刺しておいたが、無理だったか。
ありゃ、きっとこの土地の者の性だろうなあ。
動きが実に生き生きとしておるよ。
止めようもあるまいて。
まあ、仕方あるまい。
元々、ある程度は派手にやることが策の目的である。
ヴァームフスからでも視認が出来るくらいに暴れてこそ、最良なのだよ。
「まさしく豪勇と言うべきだなあ」
「姉妹がスカウトしたくなる戦いぶり」
「す、すかちゃらぽんとは何ぞ?」
「シゲン。お前の耳は大丈夫か?」
「大丈夫だあ。モンダイナイ」
いかん、いかん。
ドリーにかまっている場合ではない。
それにしてもあやつは色々とおかしなヤツであるな。
「どっせえええい!」と気合十分に両手斧を振り回し、ちぎっては投げちぎっては投げという表現そのものの無双振りを見せておる。
どうなっとるんだね。
あやつの斧……いや、腕力は。
振り回した両手斧を氷原に叩きつけた瞬間、軽い地割れと振動がしおったぞ。
さらには衝撃波まで発生しているではないか。
これは予想の上を行く活躍ぶりかもしれんぞ。
あまりにもエーリクが暴れるからか、凍結していた湖の氷も一部が割れたようだなあ。
うむうむ。
よいぞ、よいぞ。
もっとやれ。
エーリクに従う三百の兵も楔のように敵陣に刺さっておる。
実にいい感じである。
「ここまではワシの目論見通りだよ」
「シゲン。次の手か?」
「うむ。抗いがたしと考えたら、どう出るのか。あちらさんの動きが手に取るように分かるぞい」
当たるを幸いと千切られるのを嫌がり、弓を使うだろうよ。
そんなこと、鼻から分かっとるのだ。
その為に後詰めとして、投擲用の斧を持たせた軽装歩兵を用意しておいたのだからなあ。
斧は怖いぞ。
回転しながら、飛んでいくのを見たことがあるかね?
ビュッといって、ドスッなのだよ。
「ドリーさんや」
「何だね、シゲン君」
「投げる斧は怖いんだなあ……」
「知らなかったのか。これだから、シゲンは」
ゴミでも見るような最高に蔑んだ幼女の視線、最高だな!
いかん、いかんぞ、士元。
何を考えておるんだ。
違う! 違う! そうではない!
ワシにそういう趣味はないのだよ、全く。
一斉に投擲される斧の威力があれほどあるとは思っていなかっただけのことであるよ。
ビュンでドカーンでバキでボキだ、異常。
「シゲン。ボキャブラリーが貧相になった」
「ぼきゃしにましぇん? 何のことだね?」
「ねぇ、シゲン。耳掃除をしてやろうか?」
「え、遠慮しておくでごじゃりますよ」
ドリーの目が笑っていない。
アレはワシの耳を殺す者の目であるぞ、間違いない。
ザクッとやって、「おっと、手が滑った。ひっーひひひひっ」などと言う気だ。
「ほぉ? よく分かっている。さすが、シゲン」
「やる気だったんかーい」
「ひっーひひひひっ」
あまりにも策通りに事が進むのでワシがドリーとくだらないやり取りをしている間に面倒なことが起きようとしていることに気付いておらんかった。
「おのれ! これ以上の狼藉は許さんぞ。天に変わって、このハクヤク・ドラゴンが貴様を討つ!!」
漆黒の甲冑を纏ったエーリクとは対照的な白銀の甲冑に身を包んだ細面の青年が、エーリクら重装歩兵の前に立ち塞がっていたのだ。
夜の帳が下りた闇の中でも自らが光り輝かんと眩さを放つ白銀の甲冑を纏いし者は、ワシと同じように濃い色彩の髪を風に靡かせておった。
「あやつは一体、何者ぞ」
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