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第二部 第二次モーラ合戦
第36話 第二次モーラの戦い、始まる
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(三人称視点)
エーリクが率いる八百の兵は二種類の兵種による混成部隊となっていた。
闇を纏ったように黒で統一された全身甲冑に身を包み、両手持ちの大斧を手にして、先頭を駆けるのは将たるエーリクである。
彼の漆黒のフリューテッドアーマーには金のエングレービング が施されており、実用品でありながらもどこか気品が漂っている。
いずれ名のある匠の手による物と素人目にも分かる逸品だった。
エーリクに追従するのは重装備の歩兵三百である。
ほぼ全身を覆う金属製の甲冑を着込み、各々が手にする得物は圧倒的に片手持ちの斧が多い。
中には二刀流のように両手に構えている者までいた。
残り五百の兵は重装歩兵からはやや遅れた動きを見せており、比較的、軽装備である。
防具に関しては全く、統一されておらず、どこかちぐはぐな印象を受ける。
胸甲だけが金属製の者がいれば、全身を革鎧でまとめている者もいる。
しかし、武器に関しては完全に統一されていた。
片手持ちの斧に分類され、一般的には手斧と呼ばれている物だ。
手にしているだけではない。
腰に下げている物入れにも大量の手斧を入れている。
かなりの重量があると思われるがゆえの軽装備なのだ。
「興国の一戦ここにあり! 我と思わん者は続け!!」
大斧をブンブンと振り回しながら、大音声で名乗りを上げようとするエーリクを遠目に見ながら、龐統は蟀谷を押さえていた。
「あの小僧。勝たんでもいいとは言ったが、目立てとは言っとらんぞ。限度があるだろうて」
「シゲン。えてして、そういうものだ。諦めろ」
「まだだ! まだ終わらんよ」
風采の上がらない太目の小男がおんぶしている美しい少女を背負い直すと再び、駆け始めた。
「戦いとは」
「二手三手先を読むのだろう?」
「先に言うのはいかんよ」
「ひっーひひひひっ」
掛け合いにも似たやり取りを続ける二人を他所に戦端が開かれようとしていた。
エーリクが率いる八百の兵は二種類の兵種による混成部隊となっていた。
闇を纏ったように黒で統一された全身甲冑に身を包み、両手持ちの大斧を手にして、先頭を駆けるのは将たるエーリクである。
彼の漆黒のフリューテッドアーマーには金のエングレービング が施されており、実用品でありながらもどこか気品が漂っている。
いずれ名のある匠の手による物と素人目にも分かる逸品だった。
エーリクに追従するのは重装備の歩兵三百である。
ほぼ全身を覆う金属製の甲冑を着込み、各々が手にする得物は圧倒的に片手持ちの斧が多い。
中には二刀流のように両手に構えている者までいた。
残り五百の兵は重装歩兵からはやや遅れた動きを見せており、比較的、軽装備である。
防具に関しては全く、統一されておらず、どこかちぐはぐな印象を受ける。
胸甲だけが金属製の者がいれば、全身を革鎧でまとめている者もいる。
しかし、武器に関しては完全に統一されていた。
片手持ちの斧に分類され、一般的には手斧と呼ばれている物だ。
手にしているだけではない。
腰に下げている物入れにも大量の手斧を入れている。
かなりの重量があると思われるがゆえの軽装備なのだ。
「興国の一戦ここにあり! 我と思わん者は続け!!」
大斧をブンブンと振り回しながら、大音声で名乗りを上げようとするエーリクを遠目に見ながら、龐統は蟀谷を押さえていた。
「あの小僧。勝たんでもいいとは言ったが、目立てとは言っとらんぞ。限度があるだろうて」
「シゲン。えてして、そういうものだ。諦めろ」
「まだだ! まだ終わらんよ」
風采の上がらない太目の小男がおんぶしている美しい少女を背負い直すと再び、駆け始めた。
「戦いとは」
「二手三手先を読むのだろう?」
「先に言うのはいかんよ」
「ひっーひひひひっ」
掛け合いにも似たやり取りを続ける二人を他所に戦端が開かれようとしていた。
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