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第一部 第一次モーラ合戦
第10話 龐統、退治される
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ボロキレ娘は何と、ワシの申し出を全力で断りおった。
「殿方の衣を纏うなど、乙女には耐えられません」と口で殊勝なことを言っているが、目は口ほどに物を言う訳だよ。
「こんな汗塗れのおっさん臭いのは着れない」
そう言っている目だ。
結局、ドリーが自分の纏っていた道衣に似た服を脱ぎ、ボロキレ娘に渡した。
今の小さなドリーが着ていただけあって、丈が全体的に足りないのか、身体の線がもろに出ている。
ドリーの服は胸元で襟を合わせるせいか、やや育ちのいい胸が片方零れ落ちそうになっていた。
零れるというよりは溢れるという方が正しいかもしれない。
ボロボロ服よりもかえって、艶めかしくなってしまった気がするぞ……。
ドリーは上着を脱いで清々しい顔をしているあたり、さすがは露出狂変態と褒めるべきだろうか。
あの胸と股だけを覆う布面積が非常に小さい下衣はどういう構造をしているのか、不思議だ。
元々、小さめだったから、ドリーが小さくなっても平気だいうことか?
恐らく、本人に聞いてもはぐらかされるのがオチだろう。
「私はブリギッタ・エークルンドです。ボロキレではありませんっ」
「ぼろきった?」
「ブ・リ・ギ・ッ・タです」
ドリーだけでも持て余している現状に面倒なのが加わってしまった。
ボロキレむ……
「ブリギッタ!」
「へいへい」
背中にはぎゃーぎゃーとうるさい小娘。
隣には手を繋いでいるダンマリで不愛想な小娘。
両手に花どころか、厄介事に巻き込まれるとしか思えないんだが……。
おまけにどうにか、身支度を整えて道へと戻った時には辺りはすっかり、闇に包まれている。
お天道様はとうにお休みなって、夜の帳が下りている訳だよ。
星明りしかない現状で歩みを進めるべきかどうか。
これは思案のしどころかもしれない。
ワシとしたことが判断を誤った。
軍師としてはあるまじき失態である。
霞むほどに遠く、道の彼方に見えた篝火のようなものにもっと気を払うべきだったのだ。
結論から言えば、アレは篝火ではなかった。
火を灯した騎馬の一団だったのだ。
暗がりなのでさすがに土煙は見えなかったが、大地を踏みしめる蹄の音はかなり遠くからでも分かるほどに大きい。
馬を巧みに操るとは異民族が支配する地域に迷い込んでしまったと考えて、間違いないようだなあ。
それとも匈奴――三国時代に猛威を振るった北方の騎馬民族――に攫われて、森に捨てられたとでもいうのだろうか?
考えても埒が明かないことだ。
ワシらに出来ることは息を殺して、騎馬の一団がどういう行動を取るのか、見守ることくらいか。
「おのれ、醜きトロルめ! 卑怯な手を使いおって! その汚い手を姫から離せ」
失敗だった。
見守るよりも隠れて、やり過ごすべきだったか。
そう思った時には脳天に手痛い一撃を喰らっていた。
不幸中の幸いというべきか。
剣を抜かずに鞘で殴りつけられただけのようだ。
それでも目の前ではお星様がチカチカと瞬き、ワシは見事に意識を刈り取られた訳だが……。
「殿方の衣を纏うなど、乙女には耐えられません」と口で殊勝なことを言っているが、目は口ほどに物を言う訳だよ。
「こんな汗塗れのおっさん臭いのは着れない」
そう言っている目だ。
結局、ドリーが自分の纏っていた道衣に似た服を脱ぎ、ボロキレ娘に渡した。
今の小さなドリーが着ていただけあって、丈が全体的に足りないのか、身体の線がもろに出ている。
ドリーの服は胸元で襟を合わせるせいか、やや育ちのいい胸が片方零れ落ちそうになっていた。
零れるというよりは溢れるという方が正しいかもしれない。
ボロボロ服よりもかえって、艶めかしくなってしまった気がするぞ……。
ドリーは上着を脱いで清々しい顔をしているあたり、さすがは露出狂変態と褒めるべきだろうか。
あの胸と股だけを覆う布面積が非常に小さい下衣はどういう構造をしているのか、不思議だ。
元々、小さめだったから、ドリーが小さくなっても平気だいうことか?
恐らく、本人に聞いてもはぐらかされるのがオチだろう。
「私はブリギッタ・エークルンドです。ボロキレではありませんっ」
「ぼろきった?」
「ブ・リ・ギ・ッ・タです」
ドリーだけでも持て余している現状に面倒なのが加わってしまった。
ボロキレむ……
「ブリギッタ!」
「へいへい」
背中にはぎゃーぎゃーとうるさい小娘。
隣には手を繋いでいるダンマリで不愛想な小娘。
両手に花どころか、厄介事に巻き込まれるとしか思えないんだが……。
おまけにどうにか、身支度を整えて道へと戻った時には辺りはすっかり、闇に包まれている。
お天道様はとうにお休みなって、夜の帳が下りている訳だよ。
星明りしかない現状で歩みを進めるべきかどうか。
これは思案のしどころかもしれない。
ワシとしたことが判断を誤った。
軍師としてはあるまじき失態である。
霞むほどに遠く、道の彼方に見えた篝火のようなものにもっと気を払うべきだったのだ。
結論から言えば、アレは篝火ではなかった。
火を灯した騎馬の一団だったのだ。
暗がりなのでさすがに土煙は見えなかったが、大地を踏みしめる蹄の音はかなり遠くからでも分かるほどに大きい。
馬を巧みに操るとは異民族が支配する地域に迷い込んでしまったと考えて、間違いないようだなあ。
それとも匈奴――三国時代に猛威を振るった北方の騎馬民族――に攫われて、森に捨てられたとでもいうのだろうか?
考えても埒が明かないことだ。
ワシらに出来ることは息を殺して、騎馬の一団がどういう行動を取るのか、見守ることくらいか。
「おのれ、醜きトロルめ! 卑怯な手を使いおって! その汚い手を姫から離せ」
失敗だった。
見守るよりも隠れて、やり過ごすべきだったか。
そう思った時には脳天に手痛い一撃を喰らっていた。
不幸中の幸いというべきか。
剣を抜かずに鞘で殴りつけられただけのようだ。
それでも目の前ではお星様がチカチカと瞬き、ワシは見事に意識を刈り取られた訳だが……。
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