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備忘録1 湘南Pホテル編
13 ペキンダックデキタアル
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オペラグローブに隠した魔法の鎖は防御に特化しているの。
自動的に敵を判断して、排除してくれるわ。
分かりやすく言えば、オートガードを勝手にやってくれる便利な道具ってところかしら?
鎖の有効範囲はわたしが意識することでどこまでも広げられるから、理論上は無制限に広げられるし、威力も自在だから……。
不用意に近づくとどうなるかって、気になるでしょう?
鈍い音がして、黒マネキンが思い切り、吹き飛ばされたわ。
あの速度と角度で壁にぶつかったら、かなりのダメージを負うわね!
ただし、それは生命がある生き物の場合であって。
マネキンは魔法生物系の魔物だから、ちょっと違うのよね。
え? 何?
ちょっと目が怖い?
チャットが違う意味で盛り上がっているわね。
気になるわ。
「上目遣いの恋する乙女が消えた」って……。
どういう意味?
そんな自問自答している間に白い方もレオの裏拳で吹き飛ばされているのよね。
ノールックで裏拳を当てているんだもの。
さすが、レオ!
カッコいいわ。
お陰でチャットも「バケツマンGJ」と彼を称えるコメントがたくさんで沸いている。
ここまではいい感じよね。
撮影班やアンを含めたスタッフがどうして、普通に動けているのかが不思議ですって?
あぁ、それを知りたいの?
知ってしまうと後戻りできなくても知りたいの?
ほら、人間の世界のテレビでもあるでしょう?
前人未踏の場所を目指した探検隊が探検していて、なぜかカメラの方が先の風景を映している。
不思議でしょう?
そういうことなの。
ダンジョンの主って、実のところ、わたしやレオと同類みたいなモノと考えて、おかしくないの。
だから、こういうのはお互いが損しないように動くのよ?
偶にその辺りの加減が分からない手合いがいて、困るのよね。
「ものすご~く、歓迎されているわね♪」
「そのようだね」
あれだけ、乱暴に吹き飛ばされたのにチャイナマネキンは立ち上がったわ。
大分、よろよろとしていて頼りない感じだけど。
もう首だけではないわね。
手足があらぬ方に曲がっていて、あまり画面に映してはいけない絵面になっているわ……。
チャットは別の意味で盛り上がっているから、これはこれで正解なんでしょうけど。
痛覚そのものが存在しないのかしら?
それでも平然と動いてるから、ホラー映画みたいで盛り上がるみたい。
「ペキンダックデキタアルヨー」
まぁ~た、変なのが現れちゃったわ。
今度のマネキンは低音で男性的なのね?
機械音声にしてもどこから、声を出しているのか不思議だわ。
コックコートに身を包んでいるし、右手に中華包丁で左手には中華鍋。
コックさんよね。
コックマネキンってところかしら?
どうして、マネキンなのに口を付けたのか、分からないけれど……。
だらしなく開いた口から、黄色く濁った粘液性の液体が滴り落ちていて。
瞳もなくて、白眼だけ。
これが実にホラー映画ぽいとチャットは概ね、好評だわ!
コックマネキンが獣のような唸り声を上げるのが、合図になったのかしら?
気が付いたら、コックマネキンとチャイナマネキンが大安売り状態になっていたわ。
そこかしこから顔を覗かせて、「イラッシャイマセアルヨー」と友好的な挨拶とは裏腹に、仲良くするつもりはないのでしょう?
「不死生物(アンデッド)ではないわ」
「見た目はそれっぽいけど、違うんだ?」
「アンデッドじゃなくて、パペットに近いのよ」
「へえ。じゃあ、ゴーレムみたいなものかな?」
「それだわ。魔法生物でもそれなのよ! 生身の肉体を使った生肉ゴーレム(フレッシュゴーレム)なのよ。冴えてるわね、レオ」
チャットもホラー映画さながらの展開が続くのに慣れてきたみたい。
ホラー映画を映画館で見ている感覚で見ているのではなくって?
でも、それ以外のコメントもあるのよね。
自然なやり取りでイチャイチャしていて、推せる……?
よく分からないわ。
分からないけど、はっきりと言えることがある。
この反応はわたしが考えていた以上であるのは間違いないってことだわ。
魅了の唄(テンプテーション)が効いているだけでは説明できない何か、不思議な力……。
だから、人間って、面白いのよね。
まぁ、悪くないわ。
このまま、この勢いがあったら、何でもできそうな気がするもの。
「じゃあ、レオくんに任せてもいい?」
「分かった」
邪魔さえなければ、ずっと見つめ合っていたい。
でも、それはできないのよね。
悔しいけど、見つめ合う時間はそろそろおしまいにしないと……。
名残惜しくても今は仕方ないの。
レオが右腕を仰々しく、振りかざすのはある極大魔法を使う前の準備段階だわ。
マネキンもどきに包囲されていても緊迫感を全く、感じさせないわね。
あまりに余裕がある態度にチャットは盛り上がっていて、いい感じ!
わたしもちょっとだけ、手を貸そうと思うの。
そっと小さな声で唄を歌う。
囁くような小さな声で……気付かれないように。
誰にも理解できないわたしだけが知っている秘密の言葉。
アジフがいたら、「そんなことはないですよー? よー?」と言いそうだけど。
でも、これはかつてあった言語であり、失われた言語――古代語と名付けた人間もいたらしいわ。
彼らには発音すら困難な難解な言語よ?
レオがかざした右腕をゆっくりと振り下ろす姿は神々しいという言葉がふさわしいと思うの。
雷光を帯びて、仄かな蒼き光を放つ。
それって、彼の父親が纏う力によく似ているんですもの。
光が一際、輝きを増していくから、そろそろ頃合いなんでしょうね。
「雷弾撃(ライトニングブラスター)!」
んんん?
多分、そういうの叫ばなくても魔法って、使えるの。
レオは何か、こう言いたくなるらしいわ。
男のロマンって、言われると好きにさせてあげようって、思うのだけど……。
不要な掛け声と共に振り下ろしたレオの指先からは、無数の蒼き雷光が放たれたわ。
この魔法は前方に扇状で放出する雷の魔法だけど、本来はここまで出力が上がらないのよね。
レオが凄いのもあるし、こっそりと威力を増幅させたのが大きいかしら?
雷の力を帯びて、弾丸みたいになった雷撃が的確にフレッシュゴーレムを構成する中心――核を射抜いている。
核をやられるとゴーレムみたいな魔法生物は自壊するしかないの。
ゴーレムは核を中心に持っていて、仮初の肉体を保持している存在だから……。
核が壊れちゃうと肉体を維持出来なくなるのよね。
ただ、ゴーレムは材質がどんなものであろうと核はたいてい、体の奥深くに内臓されているものだわ。
弱点になるのだから、できるだけ隠そうとするものじゃない?
だから、場所が一定ではなくて、同タイプのゴーレムであっても同じ場所にある保証がないのよ。
レオの目にはそれが全て、見えているのよ。
さらにそれを確実に破壊するだけの力もある。
だって、わたしの旦那様だから♪
チャットも沸いているわね。
「すげー」「かっけー」などの短いコメントが多いわ。
ライブ配信では世界初となる雷魔法の披露だもの。
レオをひたすらに絶賛するものがほとんど!
わたし自身が褒められたみたいにくすぐったいわ。
それにしてもきれいに片付いたわね。
「それじゃ次の階に行きましょ♪」
自動的に敵を判断して、排除してくれるわ。
分かりやすく言えば、オートガードを勝手にやってくれる便利な道具ってところかしら?
鎖の有効範囲はわたしが意識することでどこまでも広げられるから、理論上は無制限に広げられるし、威力も自在だから……。
不用意に近づくとどうなるかって、気になるでしょう?
鈍い音がして、黒マネキンが思い切り、吹き飛ばされたわ。
あの速度と角度で壁にぶつかったら、かなりのダメージを負うわね!
ただし、それは生命がある生き物の場合であって。
マネキンは魔法生物系の魔物だから、ちょっと違うのよね。
え? 何?
ちょっと目が怖い?
チャットが違う意味で盛り上がっているわね。
気になるわ。
「上目遣いの恋する乙女が消えた」って……。
どういう意味?
そんな自問自答している間に白い方もレオの裏拳で吹き飛ばされているのよね。
ノールックで裏拳を当てているんだもの。
さすが、レオ!
カッコいいわ。
お陰でチャットも「バケツマンGJ」と彼を称えるコメントがたくさんで沸いている。
ここまではいい感じよね。
撮影班やアンを含めたスタッフがどうして、普通に動けているのかが不思議ですって?
あぁ、それを知りたいの?
知ってしまうと後戻りできなくても知りたいの?
ほら、人間の世界のテレビでもあるでしょう?
前人未踏の場所を目指した探検隊が探検していて、なぜかカメラの方が先の風景を映している。
不思議でしょう?
そういうことなの。
ダンジョンの主って、実のところ、わたしやレオと同類みたいなモノと考えて、おかしくないの。
だから、こういうのはお互いが損しないように動くのよ?
偶にその辺りの加減が分からない手合いがいて、困るのよね。
「ものすご~く、歓迎されているわね♪」
「そのようだね」
あれだけ、乱暴に吹き飛ばされたのにチャイナマネキンは立ち上がったわ。
大分、よろよろとしていて頼りない感じだけど。
もう首だけではないわね。
手足があらぬ方に曲がっていて、あまり画面に映してはいけない絵面になっているわ……。
チャットは別の意味で盛り上がっているから、これはこれで正解なんでしょうけど。
痛覚そのものが存在しないのかしら?
それでも平然と動いてるから、ホラー映画みたいで盛り上がるみたい。
「ペキンダックデキタアルヨー」
まぁ~た、変なのが現れちゃったわ。
今度のマネキンは低音で男性的なのね?
機械音声にしてもどこから、声を出しているのか不思議だわ。
コックコートに身を包んでいるし、右手に中華包丁で左手には中華鍋。
コックさんよね。
コックマネキンってところかしら?
どうして、マネキンなのに口を付けたのか、分からないけれど……。
だらしなく開いた口から、黄色く濁った粘液性の液体が滴り落ちていて。
瞳もなくて、白眼だけ。
これが実にホラー映画ぽいとチャットは概ね、好評だわ!
コックマネキンが獣のような唸り声を上げるのが、合図になったのかしら?
気が付いたら、コックマネキンとチャイナマネキンが大安売り状態になっていたわ。
そこかしこから顔を覗かせて、「イラッシャイマセアルヨー」と友好的な挨拶とは裏腹に、仲良くするつもりはないのでしょう?
「不死生物(アンデッド)ではないわ」
「見た目はそれっぽいけど、違うんだ?」
「アンデッドじゃなくて、パペットに近いのよ」
「へえ。じゃあ、ゴーレムみたいなものかな?」
「それだわ。魔法生物でもそれなのよ! 生身の肉体を使った生肉ゴーレム(フレッシュゴーレム)なのよ。冴えてるわね、レオ」
チャットもホラー映画さながらの展開が続くのに慣れてきたみたい。
ホラー映画を映画館で見ている感覚で見ているのではなくって?
でも、それ以外のコメントもあるのよね。
自然なやり取りでイチャイチャしていて、推せる……?
よく分からないわ。
分からないけど、はっきりと言えることがある。
この反応はわたしが考えていた以上であるのは間違いないってことだわ。
魅了の唄(テンプテーション)が効いているだけでは説明できない何か、不思議な力……。
だから、人間って、面白いのよね。
まぁ、悪くないわ。
このまま、この勢いがあったら、何でもできそうな気がするもの。
「じゃあ、レオくんに任せてもいい?」
「分かった」
邪魔さえなければ、ずっと見つめ合っていたい。
でも、それはできないのよね。
悔しいけど、見つめ合う時間はそろそろおしまいにしないと……。
名残惜しくても今は仕方ないの。
レオが右腕を仰々しく、振りかざすのはある極大魔法を使う前の準備段階だわ。
マネキンもどきに包囲されていても緊迫感を全く、感じさせないわね。
あまりに余裕がある態度にチャットは盛り上がっていて、いい感じ!
わたしもちょっとだけ、手を貸そうと思うの。
そっと小さな声で唄を歌う。
囁くような小さな声で……気付かれないように。
誰にも理解できないわたしだけが知っている秘密の言葉。
アジフがいたら、「そんなことはないですよー? よー?」と言いそうだけど。
でも、これはかつてあった言語であり、失われた言語――古代語と名付けた人間もいたらしいわ。
彼らには発音すら困難な難解な言語よ?
レオがかざした右腕をゆっくりと振り下ろす姿は神々しいという言葉がふさわしいと思うの。
雷光を帯びて、仄かな蒼き光を放つ。
それって、彼の父親が纏う力によく似ているんですもの。
光が一際、輝きを増していくから、そろそろ頃合いなんでしょうね。
「雷弾撃(ライトニングブラスター)!」
んんん?
多分、そういうの叫ばなくても魔法って、使えるの。
レオは何か、こう言いたくなるらしいわ。
男のロマンって、言われると好きにさせてあげようって、思うのだけど……。
不要な掛け声と共に振り下ろしたレオの指先からは、無数の蒼き雷光が放たれたわ。
この魔法は前方に扇状で放出する雷の魔法だけど、本来はここまで出力が上がらないのよね。
レオが凄いのもあるし、こっそりと威力を増幅させたのが大きいかしら?
雷の力を帯びて、弾丸みたいになった雷撃が的確にフレッシュゴーレムを構成する中心――核を射抜いている。
核をやられるとゴーレムみたいな魔法生物は自壊するしかないの。
ゴーレムは核を中心に持っていて、仮初の肉体を保持している存在だから……。
核が壊れちゃうと肉体を維持出来なくなるのよね。
ただ、ゴーレムは材質がどんなものであろうと核はたいてい、体の奥深くに内臓されているものだわ。
弱点になるのだから、できるだけ隠そうとするものじゃない?
だから、場所が一定ではなくて、同タイプのゴーレムであっても同じ場所にある保証がないのよ。
レオの目にはそれが全て、見えているのよ。
さらにそれを確実に破壊するだけの力もある。
だって、わたしの旦那様だから♪
チャットも沸いているわね。
「すげー」「かっけー」などの短いコメントが多いわ。
ライブ配信では世界初となる雷魔法の披露だもの。
レオをひたすらに絶賛するものがほとんど!
わたし自身が褒められたみたいにくすぐったいわ。
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