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4 贄の村
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今回の案件、決して、見過ごしてはいけないものだわ。
アンとゼルに調査させて、正解だったと思う。
驚くほどに巧妙で陰湿な仕掛けが施されていることが判明したのだから……。
まず、個人で計画したものとはとても思えないわ。
何より規模が大きいから、それなりに力のある者が加担している可能性が高いと思うの。
まさか集落一つをまるまる利用するなんて、思わないじゃない?
敵ながら、侮れない相手だと考えるべきよね。
アンには件の闇サイトを調べてもらったけどまず、この闇サイトも曲者だったの。
サイトで死にたい人間=自殺希望者を募る。
ここまでは割とある手法よね。
でも、無差別に集めている訳ではないの。
狡猾極まりない手法だわ。
まず、標的とする者を選り好みするようにふるいにかけているのだから、驚きでしょう?
覚醒者(アウェイカー)であるだけでは、サイトを見つけることすらできないの。
一定のオドを有した資格者(プレイヤー)足り得る者にしか、見つけられない。
そう仕掛けが施されているのよ。
しかも死にたがっているプレイヤーであれば、苦も無く見つけられるように作られているのが質が悪いわ……。
それどころか、AIを利用したPRバナーを悪用して、意図的に誘導していることまで分かったんだもの。
「よく見つけたわね」
「蛇の道は蛇って言いますからねぇ」
「そ、そう……」
闇サイトの情報をまとめた報告書を持ってきたアンとのやり取りはちょっと腑に落ちないけど!
では、そうやって苦労して、集めたプレイヤーをどうするのか。
これが一番、重要な問題点だわ。
そのまま、処理できないのを知らない愚か者が計画したとは思えない。
用意周到に準備しているのであれば、そこも考えているはず。
わたしと同じ『変容』の力を持っているなら、厄介だけど……。
それはまず、存在しないと考えて問題ないと思うの。
わたし以外で確認された『変容』に等しき力を持つ者は二人だけ。
旧インド地域で絶大な人気を誇る”アイドル”サラと旧中国地域を席巻する”ネットアイドル”の美玲《メイリン》。
既に表裏の融合したモノであって、わたし達と同じ存在と考えるべき。
そんな彼女達が裏で動いている可能性は……。
まず、ないと断定できるわ。
これには理由があるの。
サラとは直接の面識はないけど、密約を交わしている関係だから。
協力とまではいかないけど、互いの不利になる行動は取らないのが原則……。
あくまで約束は守る為にあると考えるか、破る為にあると考えるかでこの関係は不安定な綱渡りに見えるかもしれない。
でも、サラの人となりは信用できるものだと思っている。
もう一人のメイリンは所属先が厄介なのに加えて、扱いが面倒な性質なのを把握している。
ただし、面倒ではあるけど、こそこそと動き回るのを何よりも嫌うのも分かっている。
分かりやすい性格の子なのよ。
だから、わざわざ挑発するような行動を迂闊に取ったりしないと言い切れるの。
どうせやり合うのであれば、正々堂々と向かってくるのではないかしら?
そこでゼルに実地調査をさせたって訳……。
ゼルは諜報活動に精通しているから、地道な調査であれば右に出る者がいないわ。
そんな彼女に虎の子のミュルミドンを動かす権利を与えた。
結果を出さない以外の答えはないと考えてはいけないかしら?
それにゼルの使いたいと言った子――キュレネはミュルミドン生え抜きのギルタブリルでもっとも隠密活動に適した子よ。
見る目があると思うわ。
キュレネは次元融合の際、メモリアルで悪魔の蜂と呼ばれたモノとの融合を果たしている。
あの子ほど、向いている者はいないと思うの。
まして指揮するのがゼルである以上、手掛かりになる情報を掴んでくれるに違いないわ。
「なるほど……こんなところにダンジョンを隠していたってことかしら?」
「はい。巧妙に隠蔽していたようです」
ゼルがまとめてくれた報告書は実にきちっとしたもので分かりやすかった。
アンが調べてくれたのはまず闇サイトで自殺を望むプレイヤーを集め、巧みな話術とコミュニケーション能力を駆使して、それらの希望者の心を掴むところまで。
そこからの流れが分かるのがゼルの報告書だったの。
G県S村から、そう遠くない山中に全く、新しい集落――『鈴鳴村』を作った。
これが周囲に悟られないように異界化したダンジョンなのだから、驚きだわ。
近くに自衛隊の駐屯地があるのに何とも大胆よね。
しかも都内から、その村にしか辿り着かない専用のお化け電車まで開通させたっていうのだから、驚きを通り越すわ。
でも、許しがたい事態が発生したの。
キュレネが調査過程で敵方に追撃されて、手傷を負った……。
誤算中の誤算とはいえ、許しがたいわ。
え?
キュレネに怒っているのではないの。
わたしは何よりも身内を傷つけられるのが我慢ならないのだわ。
借りはきっちりと返してあげないといけないわね。
アンとゼルに調査させて、正解だったと思う。
驚くほどに巧妙で陰湿な仕掛けが施されていることが判明したのだから……。
まず、個人で計画したものとはとても思えないわ。
何より規模が大きいから、それなりに力のある者が加担している可能性が高いと思うの。
まさか集落一つをまるまる利用するなんて、思わないじゃない?
敵ながら、侮れない相手だと考えるべきよね。
アンには件の闇サイトを調べてもらったけどまず、この闇サイトも曲者だったの。
サイトで死にたい人間=自殺希望者を募る。
ここまでは割とある手法よね。
でも、無差別に集めている訳ではないの。
狡猾極まりない手法だわ。
まず、標的とする者を選り好みするようにふるいにかけているのだから、驚きでしょう?
覚醒者(アウェイカー)であるだけでは、サイトを見つけることすらできないの。
一定のオドを有した資格者(プレイヤー)足り得る者にしか、見つけられない。
そう仕掛けが施されているのよ。
しかも死にたがっているプレイヤーであれば、苦も無く見つけられるように作られているのが質が悪いわ……。
それどころか、AIを利用したPRバナーを悪用して、意図的に誘導していることまで分かったんだもの。
「よく見つけたわね」
「蛇の道は蛇って言いますからねぇ」
「そ、そう……」
闇サイトの情報をまとめた報告書を持ってきたアンとのやり取りはちょっと腑に落ちないけど!
では、そうやって苦労して、集めたプレイヤーをどうするのか。
これが一番、重要な問題点だわ。
そのまま、処理できないのを知らない愚か者が計画したとは思えない。
用意周到に準備しているのであれば、そこも考えているはず。
わたしと同じ『変容』の力を持っているなら、厄介だけど……。
それはまず、存在しないと考えて問題ないと思うの。
わたし以外で確認された『変容』に等しき力を持つ者は二人だけ。
旧インド地域で絶大な人気を誇る”アイドル”サラと旧中国地域を席巻する”ネットアイドル”の美玲《メイリン》。
既に表裏の融合したモノであって、わたし達と同じ存在と考えるべき。
そんな彼女達が裏で動いている可能性は……。
まず、ないと断定できるわ。
これには理由があるの。
サラとは直接の面識はないけど、密約を交わしている関係だから。
協力とまではいかないけど、互いの不利になる行動は取らないのが原則……。
あくまで約束は守る為にあると考えるか、破る為にあると考えるかでこの関係は不安定な綱渡りに見えるかもしれない。
でも、サラの人となりは信用できるものだと思っている。
もう一人のメイリンは所属先が厄介なのに加えて、扱いが面倒な性質なのを把握している。
ただし、面倒ではあるけど、こそこそと動き回るのを何よりも嫌うのも分かっている。
分かりやすい性格の子なのよ。
だから、わざわざ挑発するような行動を迂闊に取ったりしないと言い切れるの。
どうせやり合うのであれば、正々堂々と向かってくるのではないかしら?
そこでゼルに実地調査をさせたって訳……。
ゼルは諜報活動に精通しているから、地道な調査であれば右に出る者がいないわ。
そんな彼女に虎の子のミュルミドンを動かす権利を与えた。
結果を出さない以外の答えはないと考えてはいけないかしら?
それにゼルの使いたいと言った子――キュレネはミュルミドン生え抜きのギルタブリルでもっとも隠密活動に適した子よ。
見る目があると思うわ。
キュレネは次元融合の際、メモリアルで悪魔の蜂と呼ばれたモノとの融合を果たしている。
あの子ほど、向いている者はいないと思うの。
まして指揮するのがゼルである以上、手掛かりになる情報を掴んでくれるに違いないわ。
「なるほど……こんなところにダンジョンを隠していたってことかしら?」
「はい。巧妙に隠蔽していたようです」
ゼルがまとめてくれた報告書は実にきちっとしたもので分かりやすかった。
アンが調べてくれたのはまず闇サイトで自殺を望むプレイヤーを集め、巧みな話術とコミュニケーション能力を駆使して、それらの希望者の心を掴むところまで。
そこからの流れが分かるのがゼルの報告書だったの。
G県S村から、そう遠くない山中に全く、新しい集落――『鈴鳴村』を作った。
これが周囲に悟られないように異界化したダンジョンなのだから、驚きだわ。
近くに自衛隊の駐屯地があるのに何とも大胆よね。
しかも都内から、その村にしか辿り着かない専用のお化け電車まで開通させたっていうのだから、驚きを通り越すわ。
でも、許しがたい事態が発生したの。
キュレネが調査過程で敵方に追撃されて、手傷を負った……。
誤算中の誤算とはいえ、許しがたいわ。
え?
キュレネに怒っているのではないの。
わたしは何よりも身内を傷つけられるのが我慢ならないのだわ。
借りはきっちりと返してあげないといけないわね。
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