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第28話 だから、何でもないんだもん
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初めて、出来た学園のお友達の家にお泊り。
それも何となく、押し切られて一緒の部屋で寝ることになった。
寝るまでの間、他愛のないお喋りをしているだけでも楽しい。
でも、状況が状況だった。
エヴァを助けることが出来たし、家を離れられたのはいいけど何も解決してないのだ。
あたしが小さかった頃はみんな、もっと明るく笑っていて、優しかった。
ユナだって……。
だから、サーラとのお喋りも心から楽しめない。
そうは言っても屈託なく、からからと笑うサーラの底抜けの明るさにどこか、救われてる気がするのは嘘じゃない。
ただ、一つ気になるのはユリアンの言葉だった。
どういう意味なんだろう。
安らかな寝息を立てて、幸せそうな寝顔を浮かべてるサーラを見ると悩んでる自分があほらしくも感じる。
そもそも悩んだり、考えるのは苦手だし、あたしの性に合ってないのだ。
夜、ちょっと深く考えようとしただけで『めぇめぇ』と踊り狂う羊さんの群れが出てきて、あっという間にすやすやと眠れた。
状況が状況だからとか、考えてた昨日のあたしは悲劇のヒロインを気取りたかっただけなのかもしれない。
そう考えたら、少しは気が楽になってくる。
むしろ、あたしは今の状況に頭痛で頭が痛い。
今日から、アカデミーは長い冬期休暇に入る。
ビカン先生は学園に住んでる。
だから、休暇でも変わりなく、いつでも訪ねてくるといい。
先生はそう言ったはず。
ちょっと内容が違うかもしれないけど、ほぼ合ってると思う。
間違っていても呆れた顔をしながら、「お前というヤツは」と言って受け入れてくれる気がするのだ。
だから、てっきりポボルスキー家の馬車に乗せてもらうだけと思っていたのに……。
「どうしたんだい、エミー」
「別に何でも」
「朝は苦手だったよね」
「そうですけど。そういう訳じゃなくって。うん。何でもないんです」
隣の馭者席には朝から、元気な王子様でいらっしゃるロビーがいる。
ロビーは朝食の席が終わるか、終わらないかのタイミングでやって来た。
あたしがロビーのカブリオレに乗るのは確定事項だったらしい。
昔から、朝は苦手だった。
苦手なのを無理して、食卓を盛り上げようとしてたのだから、いつか限界が来るのは分かってた。
ロビーはそんなあたしと真逆の存在と言ってもいい。
いつでも王子様でいられる彼はキラキラと輝いて見える太陽みたいなのだ。
今もキラキラと輝いていて、眩しすぎる。
カブリオレに乗るのにしたって、おかしいと思う。
本物の王子様みたいにエスコートをしてくれるなんて、ありえないってば。
朝が苦手なあたしの目が一気に冷めちゃったくらいにおかしい。
だから、何でもないんだもん。
「いつでも来ていいとは言ったが、休暇初日から来るとは思っていなかったぞ。ネドヴェト嬢」
先生は腕を組み、不敵な笑みを浮かべて、出迎えてくれた。
着てるローブと先生の纏う雰囲気のせいか、「ふはははは。よく来たな」という台詞が似合いそうな美形の悪役にしか、見えない。
小説にこんなキャラいると浮かれると怒られそうなのでやめておこう。
先生があたしのことをわざと他人行儀な呼び方をしてるから、機嫌がよくないんだと思う。
『ペップ』と『エミー』と呼び合える関係だったんだから、先生もきっと朝が苦手だったんだろう。
これは失敗したかも……。
でも、何だろう。
ロビー、ユリアン、先生。
三人の間に見えない火花が散ってるような……。
気のせいかしら?
それも何となく、押し切られて一緒の部屋で寝ることになった。
寝るまでの間、他愛のないお喋りをしているだけでも楽しい。
でも、状況が状況だった。
エヴァを助けることが出来たし、家を離れられたのはいいけど何も解決してないのだ。
あたしが小さかった頃はみんな、もっと明るく笑っていて、優しかった。
ユナだって……。
だから、サーラとのお喋りも心から楽しめない。
そうは言っても屈託なく、からからと笑うサーラの底抜けの明るさにどこか、救われてる気がするのは嘘じゃない。
ただ、一つ気になるのはユリアンの言葉だった。
どういう意味なんだろう。
安らかな寝息を立てて、幸せそうな寝顔を浮かべてるサーラを見ると悩んでる自分があほらしくも感じる。
そもそも悩んだり、考えるのは苦手だし、あたしの性に合ってないのだ。
夜、ちょっと深く考えようとしただけで『めぇめぇ』と踊り狂う羊さんの群れが出てきて、あっという間にすやすやと眠れた。
状況が状況だからとか、考えてた昨日のあたしは悲劇のヒロインを気取りたかっただけなのかもしれない。
そう考えたら、少しは気が楽になってくる。
むしろ、あたしは今の状況に頭痛で頭が痛い。
今日から、アカデミーは長い冬期休暇に入る。
ビカン先生は学園に住んでる。
だから、休暇でも変わりなく、いつでも訪ねてくるといい。
先生はそう言ったはず。
ちょっと内容が違うかもしれないけど、ほぼ合ってると思う。
間違っていても呆れた顔をしながら、「お前というヤツは」と言って受け入れてくれる気がするのだ。
だから、てっきりポボルスキー家の馬車に乗せてもらうだけと思っていたのに……。
「どうしたんだい、エミー」
「別に何でも」
「朝は苦手だったよね」
「そうですけど。そういう訳じゃなくって。うん。何でもないんです」
隣の馭者席には朝から、元気な王子様でいらっしゃるロビーがいる。
ロビーは朝食の席が終わるか、終わらないかのタイミングでやって来た。
あたしがロビーのカブリオレに乗るのは確定事項だったらしい。
昔から、朝は苦手だった。
苦手なのを無理して、食卓を盛り上げようとしてたのだから、いつか限界が来るのは分かってた。
ロビーはそんなあたしと真逆の存在と言ってもいい。
いつでも王子様でいられる彼はキラキラと輝いて見える太陽みたいなのだ。
今もキラキラと輝いていて、眩しすぎる。
カブリオレに乗るのにしたって、おかしいと思う。
本物の王子様みたいにエスコートをしてくれるなんて、ありえないってば。
朝が苦手なあたしの目が一気に冷めちゃったくらいにおかしい。
だから、何でもないんだもん。
「いつでも来ていいとは言ったが、休暇初日から来るとは思っていなかったぞ。ネドヴェト嬢」
先生は腕を組み、不敵な笑みを浮かべて、出迎えてくれた。
着てるローブと先生の纏う雰囲気のせいか、「ふはははは。よく来たな」という台詞が似合いそうな美形の悪役にしか、見えない。
小説にこんなキャラいると浮かれると怒られそうなのでやめておこう。
先生があたしのことをわざと他人行儀な呼び方をしてるから、機嫌がよくないんだと思う。
『ペップ』と『エミー』と呼び合える関係だったんだから、先生もきっと朝が苦手だったんだろう。
これは失敗したかも……。
でも、何だろう。
ロビー、ユリアン、先生。
三人の間に見えない火花が散ってるような……。
気のせいかしら?
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